後味の悪さに要注意! 妻夫木聡、満島ひかの画像_1

自分のことを直接知っている、知らないに関わらず、第三者から意外なイメージを持たれて驚いたことはありませんか? それは他人に対して抱くイメージも同じ。特に著名人だと、出演している媒体や発表した作品、演じたことのある役柄やネットで囁かれている信憑性に欠ける情報もひっくるめて、会ったことも話したこともないのに勝手なイメージを作り上げていることがあります。今回紹介する作品は、人が人に対して抱く印象の違いを見事に描いたミステリー。嫌な後味のミステリー“イヤミス”という言葉の誕生に先駆けて発表された、貫井徳郎による同名小説の映画化です。 舞台は世間を震撼させた一家惨殺事件から一年後。週刊誌記者の田中が、未だ犯人が捕まらない事件の真相に迫ろうと、改めて関係者たちに取材をしていく物語です。一見理想の一家のように思えた夫婦ですが、夫の元同僚、大学時代の恋人、妻の同級生や元恋人など、様々な人たちの口から飛び出す証言から、理想とはかけ離れた実像が明らかになっていきます。同じ人物のことを語っているのに、接した時期や関係性によって180度その評価が変わっていく様子は、どんな人間も決して一面的ではなく、様々な顔を持っていることを浮き彫りに。インタビューの聞き手として物語の中心にいる田中も例外ではなく、彼の知られざる秘密が徐々に明らかになっていく展開は背筋が凍るほどゾクゾクさせられます。 事件を追う週刊誌記者の田中には、『悪人』や『怒り』で知られる妻夫木聡。そして育児放棄の疑いで逮捕された彼の妹、光子は満島ひかりがイノセントな雰囲気で熱演。また、殺された夫役には小出恵介が、過去と現在をつなぐ証言者には臼田あさ美、市川由衣、中村倫也ら若手実力派たちが扮し、嫉妬や駆け引きなど、人間が無意識に積み重ねる愚行の数々を突きつけます。メガホンを取ったのは、これが長編デビューとなる石川慶監督で、ポーランド国立映画大学で演出を学んだ経歴の持ち主。さらに撮影監督にも同じ大学出身のポーランド人、ピオトル・ニエミイスキを起用するというこだわりようです。そのため、日本映画っぽい湿度を感じさせない映像に仕上がっているのもポイント。不穏な雰囲気の物語と美しい映像のギャップにも、ぜひ注目してみてください。 (文/松山梢) ●2/18〜全国ロードショー ©2017『愚行録』製作委員会

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