芳麗

芳麗

NHK山形放送局のキャスター業を経て、ライターとして活動開始。デビュー雑誌がMORE! 以来、10年以上にわたってMOREで執筆。 ロングインタビュー、 女心をつかんだコラムに定評があり、書籍、雑誌、WEBなど数多くの媒体で連載・執筆する。著書『相手も自分も気持ち良く話せる秘訣』『Love リノベーション』(主婦の友社)など。
【公式HP】http://fafa-yoshirei.com/

【ごあいさつ】 MORE読者のみなさん、こんにちは! 芳麗です。 ここでは、恋に効きそうなカルチャーやライフスタイル。わたしが恋したこと、もの、人を紹介していきますね。よろしくお願いします。

わたしの人生、本番はいつ?

わたしの人生、本番はいつ?_1
まんしゅうさんのマンガには不思議な魅力があります。

毒もユーモアもたっぷり含まれているのに読んでいると、何だか優しい気持ちになる。せつなさにゆるゆると浸っているうちに、自然と癒されている。

“哀しいのに可笑しい”――いわゆるトランジスタコメディと呼ばれる類の映画や小説は大好きだし、まんしゅうさんのマンガも大ざっぱに言えば、そこに属するのだと思います。

でも、その先にあるのは、希望でも絶望でも無くて、もっと柔らかくて曖昧なもの。
小さなため息のような諦観や、くすっと笑ってしまう本心だったりします。

 現在、大ヒット中の『アル中ワンダーランド』は、まんしゅうさん自身のアルコール中毒体験を赤裸々につづったエッセイ漫画。
 清く正しい女子たるMORE読者のみなさんは、「“アルコール中毒症”なんて、私には遠い話!」だと思うかもしれません。

いやいや、実は身近なものですから。

 最初は、お付き合いで飲みはじめたつもりのお酒。いつの間にか、習慣になっていませんか? 仕事や恋愛のストレス解消で飲むようになっていませんか? 
お酒に私的な悲喜こもごもを助けてもらううちに、次第に酒量も頻度も増えて行く。
いつのまにか、家で1人でも飲むようになり、休日も飲むようになり……と気がつけば、お酒を愛しすぎている! 飲み過ぎてはいけないと思いつつも、つい飲み過ぎてしまう人。

はい、アルコール中毒症(依存症)の予備軍です。

私自身、立派な予備軍だという自覚がありました。だから、私的な恐怖心と興味が手伝って、アルコール依存症について専門医療機関に取材を重ねてみました。そこで分かったのは、自覚していないだけで、すでに依存症になっている人は、巷にもかなり多いということ。

 アルコール依存症はお酒を飲み続けている人は誰もがなる可能性がある病です。
 花粉症みたいなものでね。酒歴が長くなればなるほど、病にかかる確率はどんどん高くなる。「最近、悪酔いするなぁ」なんて思っているうちに、ある日、依存症のスイッチがオン! 自分では酒量も酔い方もコントロールできなくなるのです。

 まんしゅうさん自身もそう。ごく普通の主婦として穏やかに暮らしていた、ある日、ブログで書いていたマンガが注目されて、仕事の依頼をもらうように。夢だった漫画家への道が拓けたものの、主婦業と漫画の両立に煮詰まってしまう。気分転換にお酒を飲むようになったら、どんどん加速して、あっという間に依存症!
 それまでは、酒豪でもなかったし、日々、お酒を飲んでいたわけでも無かったのに。

 依存症になってからの日々は、壮絶です。幻覚は見るわ、被害妄想するわ、記憶障害になるわ。出演したイベントでは、まさかのポロリも……。
 
 まんしゅうさんの過剰で赤裸々な体験談は、笑えないのに笑えるし、面白いのに胸が痛む。
 飲んでいる時は無敵な気分になれるけれど、上がった分だけ、醒めた時は落ちて行く、お酒。得られる気付きはあるけれど、失うものは数限りない、アルコール依存症という病について、しみじみと感じ考えさせられます。

 お酒に限らず、恋愛、買い物、甘いものなど、依存しがちな人はもちろん、単なる興味本位の人、そして、「私は絶対にだいじょうぶ」と思っている人にこそ読んでほしい一冊。



 もう一冊の『ハルモヤさん』は、まんしゅうさん初めてのオリジナル漫画です。こちらも、MORE読者にはとりわけオススメ。

 主人公の“ハルモヤさん”こと、春靄きの子は、30歳、処女。埼玉県熊谷市の実家に暮らしながら、地元の図書館で働いています。
 ハルモヤさんは変わり映えのない、のんびりとした日常を送りながらも、「私の人生、本番は、まだ始まっていない」と思っている。思ってはいるものの、自分からは動かない。まったく動かないわけじゃないけれど……中学校時代に片思いしていた同級生を図書館で見かけて、そっと後を追いかけてみるくらいが関の山。
 当然、ふくらむのは妄想ばかりで、現実は容易には変わらない。

 人生の本番が始まらないのは、誰のせいでもなくて、自分のせいだと心のどこかで気付いている。「けどね」とハルモヤさんは言い訳します。

「何かを頑張ろうとすると すぐ眠くなっちゃうの!
嫌なことが起こると すぐ眠くなっちゃうの」
 
これ、リアルだなと思いました。少なくとも私にとっては。今はそうでもないけれど、人生の折々に「すぐ眠くなる」ということがありました。あれは何だったんだろう?
 よしもとばななさんの『白河夜船』にも通じる眠りだけに救われる時間。

 一生懸命生きているのに立派な大人にはなれなくて、現実と夢の境目あたりでウロウロしている――ハルモヤさんは、これからどうなっていくのか。2巻も楽しみです。

 ちなみに、『アル中ワンダーランド』に登場するまんしゅうさんの実弟は、本誌『MORE』にて、長年、ニノの連載「It ~一途~』を撮影しているカメラマンのエモくんです。
 マンガの中の弟(エモくん)は、極端で可笑しいけど、厳しくもまっとう。そして、優しいヒーローのような存在です。わりと、普段のエモくんのままだなぁと、長年のトモダチ&仕事仲間としては思います。
ぜひ、読んでみてくださいね!

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