芳麗

芳麗

NHK山形放送局のキャスター業を経て、ライターとして活動開始。デビュー雑誌がMORE! 以来、10年以上にわたってMOREで執筆。 ロングインタビュー、 女心をつかんだコラムに定評があり、書籍、雑誌、WEBなど数多くの媒体で連載・執筆する。著書『相手も自分も気持ち良く話せる秘訣』『Love リノベーション』(主婦の友社)など。
【公式HP】http://fafa-yoshirei.com/

【ごあいさつ】 MORE読者のみなさん、こんにちは! 芳麗です。 ここでは、恋に効きそうなカルチャーやライフスタイル。わたしが恋したこと、もの、人を紹介していきますね。よろしくお願いします。

映画「美しい星」の美しさと笑いのエネルギーに覚醒!役者・亀梨和也の人間味と宇宙人的な色気とは?

現在、公開中の「美しい星」がとても面白く、感じるものがあったので、1人でも多くの人と分かち合いたくて。
端的にではありますが、私的な感想を記しておきますね。

本作の原作は、文豪・三島由紀夫。監督は、「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八さんです。観る前から期待値は高まっていましたが、予測も期待も超えました。

原作は一応、読んでいたのですが、正直、精読できたとまでは言えません。
三島由紀夫の読者だった自分にとっても難解で、なかなか読み進められず。
それでも型破りでパワフルで、格好良い小説だなと感じました。

映画を観た時、初めて本作(小説)がしっかりと胸の奥まで刺さり、全身を通過していくような爽快感がありました。
原作の精神が生きている。文学の色気や答えのない面白みを生かしながら、2017年版のエンタテインメント作品として輝いている。

ストーリーの概要はこうです。

 現代の日本に生きている、ある平凡な4人家族。そのうちの3人がある日、ほぼ同時期に「宇宙人」に覚醒します。しかも、それぞれが別な星の星人になってしまう。
 冴えないお天気キャスターの父・重一郎(リリー・フランキー)は、火星人に。
 フリーターの息子・一雄(亀梨和也)は、水星人に。
 美しすぎて周囲から浮いている女子大生の娘・暁子(橋本愛)は、金星人に。
 そして、寂しさと虚無感を抱えてネットワークビジネスにはまってしまう母親・伊余子(中嶋朋子)だけは、なぜか、覚醒せずに地球人のままです。
 家族は、異なる星人に生まれ変わったものの、その願いと使命は、共通……
“美しい地球を救いたい”!!!

 さほど説明もなく、急に宇宙人になってしまう家族たち。
 無法に広がって、熱を増していくストーリー。

文字情報だけだと、「なんだこれ?」ですよね。

実際に、 「よくわからないけど、面白い」というのが本作を観た多数派の意見らしいのですが、確かに、「わかる」か「わからない」かで測るのは意味がないし、もったいないなと。
 私にとっては、不可思議だけど、とても感じる、色んなものが伝わってくる作品でした。
 とても感じた理由の1つは、「日常と非日常(SF)」、「幻と現実」、「異常と正常」など相反するものが物語の中、出てくる人々の中で、境目なく美しく繋がっているから。
 地球温暖化や宇宙といった壮大なテーマが、部下との不倫やネットワークビジネスや大学のミスコンなど、私たちの身近な日常やよく見る風景と入り混じり、ごく普通の人間の経験や視点や語られている。
 観ているうちに、どこまでが真実で、どこからが妄想なのか、誰が真実を言っていて、何が嘘なのか、わからなくなっていきます。
 撹乱されるという楽しさ、理解を超えるという快感。
 
 そんな境目のない世界を生きている、境目のわからない人間たちがまた最高! リリー・フランキーさんや、亀梨和也さん、橋本愛さん、佐々木蔵之介さんなど、役者陣は素晴らしい演技で本作の世界を体現しています。

リリー・フランキーさんは、重一郎の俗っぽくてうだつのあがらない“オヤジ感”を全身に漂わせながらも、一方では、覚醒してからの突然、クレイジーなまでに使命を全うとしようとする純粋なエネルギーも説得力を持って生きていた。(覚醒してからの、お天気キャスターぶりは最高です)

 橋本愛さんは、人間離れした美しさを放ちながらも、若い女子特有の虚無や孤独を纏いながら揺れていて、一挙手一投足に惹きつけられました。
(河原で、UFOを呼ぼうとする時の動作には息を飲みました)

 佐々木蔵之介さんの冷徹な瞳やセリフの言い回しの迷いと淀みなさは空恐ろしく、クライマックスの議論のシーンでは、その迫力に「これが宇宙人か!」と思わされ、引き込まれました。

そして、亀梨和也さん。
亀梨くんには、定期的にインタビューする機会に恵まれていて、折々の彼の作品を観ています。これまでも、素敵だな、はまっているなと思う役柄や作品は多々ありましたが、本作では、これまで観た、どの彼とも異なっていて驚きました。
 彼の最初の登場シーンでは、一瞬誰かとわからないほどだし、自転車を懸命に漕いでいるシーンもこれまで見たことのないような風情を漂わせている。
 ただ一心不乱に漕いでいるだけの姿や表情には、一雄の若く鬱屈としたエネルギーや欲望、(父と同じく)うだつのあがらない感じが滲み出ていた。
 その年頃の男の人が持つ生っぽさを動作や表情に自然に表しながらも、ここぞという時には、一瞬だけ、不可思議な色気を見せる。華はあるけれど、そこに居るのはアイドルでもスターでもなくて、得体の知れない水星人(かもしれない人)でした。
(プラネタリウムのデートシーンの男の子くささと、覚醒シーンの不思議な色気の落差たるや!)

 撮影前、亀梨くん自身から「吉田監督の作品に呼んでいただいた」と聞いた時、「監督はなぜ亀梨くんを選んだのだろう? 監督の作品にどんな風に存在するのだろう?」と強い興味を抱いたのですが、聞かずとも、わかったような気がしました。(その他のキャストも同じこと)

 本作の撮影後、「吉田監督に沢田研二さんに似てるねって言われたよ」とも話していたのですが……「美しい星」を観ていて、「あ、ここにジュリーの面影が?」と感じる場面が、少なくとも二ヶ所はありました。
(ジュリーこと、沢田研二さんは、昭和史に残る中性的な色香溢れるスターです) 
 本作の物語の半ば、あの日、あの時の表情に、その長い睫毛や憂いのある風情にジュリーを感じました。


 私が本作に惹かれた理由は、細部にもたくさんあります。

 アメリカ人みたいにゲラゲラ笑った場面も、ラストシーンも含めて、瞳を凝らしてしまう美しい場面も数多。

「人間は自然を美しいと感じながらも、究極の美しい自然には、人間は存在しない」(概略です)など、何気なくも心に残り、後から考えさせられるセリフもありました。

1つ1つのセリフや表情や動きや場面が、光のように心に届いて、本作の面白さや美しさをじわじわと訴えかけてきます。

 観た瞬間はわかってもわからなくても、感じることの面白みが味わえて、なんだか余韻が残る。
後から後から、色んなことを考えてしまう、考えてみたくなる作品です。

(C)2017「美しい星」製作委員会

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