Story of my life 私の履歴書【連載第7回】

自分らしくキャリアを築いている女性にインタビューするこの連載。今回は、"NO RULES FOR LIFE" をコンセプトにし、自分らしくオシャレを楽しむ女性をターゲットにしたファッションブランド『Ameri』のディレクターを務める黒石奈央子さんにインタビュー。20代後半で起業し、芸能人などにも多くのファンを持つブランドに成長させた彼女の歩みを聞いてきました。

Ameri VINTAGE 代表取締役 兼 ディレクター
黒石奈央子(くろいしなおこ)

1986年7月5日生まれ、大阪府出身。大学卒業後、アパレルメーカーに入社し、新規ブランドで、VMD(ビジュアル マーチャンダイジング)を担当。2014年に退社。オリジナルファッションブランド『Ameri』をスタート。SNSや動画配信で洋服の魅力やブランドの世界観を伝えながら急成長させていく。自社アイテムをYouTubeで自らコーディネートし、着用して紹介する動画も話題。SNSではファッション以外に、オフの日や子どもとの生活などプライベートも紹介し、多くの女性に支持されている。

History

2005年 大学在学中、アパレル販売員のアルバイトを始める。

2008年 自分探しの旅に出るため、上京。

2009年 立命館大学 経営学部を卒業。
     大手アパレル会社に入社。

2014年 アパレル会社を退社。
     『B STONE株式会社』を創業。
     オリジナルブランド『Ameri』・
     セレクトショップ『Ameri VINTAGE』を立ち上げ。

2023年 結婚。

2024年 第一子出産。

物づくりが好き。いろんな経験をしたからこそ自分のしたいことが見つかった。

黒石奈央子さん会社前カット

――今の職業に就いた経緯を教えてください。

就職活動を始めないといけない大学3年の時、進路に迷って「本当にやりたいことって何?」と考えてしまったんですよね。「このままじゃダメだ…」と思い、4年になって大学を休学して自分探しをしようと大阪から上京。東京でアルバイトをして3カ月くらい過ごしていたら、20歳までアルバイトをしていたアパレルショップ時代の先輩に、「新しくブランドを立ち上げるから一緒に働かない?」と声をかけてもらったんです。おもしろそうと思い、その会社に就職しました。大学を辞めることはしたくなかったので、働きながら、大学も通い卒業しました。

配属されたブランドでは、最初は商品管理の仕事をしていたのですが、立ち上げの段階だったので、ポップアップストアの仮囲いやWebのバナーのデザインなど、いろいろなことを兼任。それで認めてもらい、入社して2カ月ほどでVMD(ビジュアル マーチャンダイジング)という職に就いたんです。店舗のディスプレイなど、洋服以外のデザインに携わる職種です。他にも、一般的なVMDの域を超えて、ノベルティやポスターなど、あらゆるデザインのアートディレクションを担当させてもらいました。大学も経営学部で、デザインの勉強をしていなかったので専門的な知識もなく、業務に携わりながら学んで、イラレ(Illustrator)やフォトショップ(Photoshop)などのデザインソフトは独学で使えるようになりました。

ただ、入社した時点で、なんとなく“28歳までに会社を辞めて違うことがしたいな”と考えていたんです。それまで会社では、いろんなお仕事をさせてもらったんですけど、次のステップに進むことを考えた時に、“VMDがやりたいわけじゃない”と気づいて。ディスプレイよりもノベルティを一から制作している時が楽しくて、“やっぱり物作りがしたい!”と確信しました。とはいえ、洋服のデザイン経験もノウハウもないからデザイナーにはなれない…。その時は、ブランドを持ちたいという夢もなかった。

そんな時、友人から「ヴィンテージショップを一緒にやらないか?」と誘われたんです。ヴィンテージはもともと好きだったし、買い付けをする仕事も、自分の世界観を思いどおりに作り上げるのもすごく楽しそうだなと直感的に思いました。その時に初めて自分のブランドをやってみたいという夢を持てたんです。27歳の時に会社を辞めて、『Ameri VINTAGE(2024年に屋号はAMERI VINTAGEに変更)』をスタート。ニューヨークで買い付けたヴィンテージの販売のほかに、せっかくなら今まで経験した物作りのノウハウをいかしてオリジナルも作りたいと思い、数型のオリジナル商品も同時に展開しました。ヴィンテージって1点ものだから、そのために採寸して撮影して…と効率がよくない。逆にオリジナル商品は数を販売できるので、そのほうが圧倒的に利益率もいいし、回転率もよかったので、今は売り上げの9割以上がオリジナルです。でも、ヴィンテージも好きなので、毎年ニューヨークへ買い付けに行っていて販売していますし、”VINTAGE”という言葉をブランド名にも残して、二軸でやっています。


――どんな時にやりがいを感じてますか。また、印象に残っている出来事も教えてください。


自分たちが作った服がヒットして、売れた時が一番やってよかったと実感します。いいものを作れることはうれしいんですけど、やっぱり経営なので数字に残していくことも大事ですし、お金にならないと意味がないので、物が売れて初めてやりがいというか、やったことに対する成果が出たと感じますし、多くの人に良さがわかってもらえたとうれしく感じます。

 印象に残っているのは、ひとつは2015年にバンクーバーファッションウィークに出た時。立ち上げて2年ぐらいかな。初めてファッションショーのようなものをさせていただいて、視野が広がりました。もっとこういうふうにしたほうがいいとか課題もすごく見つかりましたね。あとは、Ameriの5周年のパーティーをやった時。ホテルのスペースをお借りしてイベントをしたんですけど、藤原ヒロシさんなどのすごく尊敬してる方々が来てくださって、本当にうれしかったです。その時に、会社のスタッフたちと、チームとして一丸となってやるということが改めて大事だと再確認できましたし、みんなでひとつになって何かを成し遂げたことにすごく感動がありました。

――そういう中でも、落ち込んだり、仕事を辞めようと思った時期はありましたか。

Ameriは、すごく急成長していけたんですけど、絶対にいつかは成長が止まる時期が来ると思っていて、10年目が壁でした。昨年、ブランドを立ち上げて10周年だったんですけど、成長が緩やかになってきたんです。売り上げなどが上がっている時ってすごくやりがいを感じるんですけど、停滞している時って自分の気持ちもピタッと止まるというか…。働いてるスタッフもそうで、私がガーッと気持ちが高ぶっている時って、スタッフの子たちも“頑張ろう!”みたいな熱い気持ちになってるんですけど、私が止まり始めると、みんなのやりがいとかも止まっちゃうと感じました。その時はけっこう苦しかったですね。同じことをやっていても仕方ないので、5月にAmeriの10周年YEARの記念フェスをやるんですけど、そういう私自身が新しいものを企画したり、違う事業を始めたりなど、スタッフみんなの士気も上がる何かを常に提案することが必要かなと思っています。

迷った時は最悪な状況も考える。それでもやりたいことなら迷わず進んで!

JESSICAさん


――今現在、自分が思い描いてきた人生や働き方ですか?

そうですね。私、販売員をしていた大学の時に、将来なりたい自分をノートに書きまくっていたんですけど、“有名になりたい”って書いてあるんです。当時、『SEX AND THE CITY』が好きで、キャリーのようになりたいなと思ってた(笑)。

それから、“20代をどれだけ頑張ったかで30代が決まる”、“自分の好きなものを自分で買えるようになりたい”というふうに思ってたんです。そういう働き方をしたいなと思ってはいて。でも、“何がしたいかわからない…”みたいな、もがいていることもノートに書き綴っていました。世界的に活躍してこうなりたい、最終的にはこうなりたいみたいなことも書いてあって、その時に思い描いてたことと近いものにはなれてるのかなと思います。

頭の中を具現化してノートにまとめることは、すごくいいことなんじゃないかな。今はやっていないので、またやったほうがいいなと話をしていて思いました(笑)。今までかけ上がってきて、悩み事とかもそんなになかったんですけど、今少し停滞しているなと感じているので、こういう時に、もう一度、自分のやりたいことや40代はどうなりたいかということを自分の中で整理したいですね。


――先ほど、「20代をどれだけ頑張ったかで30代は決まる」とおっしゃっていましたが、MORE読者は、30歳を大きな節目ととらえている人も多いです。黒石さんは、30歳をどうとらえていましたか?

私は、30歳より28歳を転換期にしてたんですよ。自分の中で、なんとなく30歳を転換期にするのは少し遅い気がしてて。その前に次のステップに進みたかった。早い段階で次のステップに進めるかどうかで30代の仕事の仕方や生き方が決まると考えていました。ただ、具体的にしたいことがなくて、そのことに不安や恐怖心があって、ずっとモヤモヤしてた。これというものがない時のほうが、一番しんどいと思うんですよ。自分の得意なこと、できることってなんだろうって、20代前半から中盤は結構悩んでましたね。でも、そういう時こそ、いろんな人に会うようにしていました。遊び歩いて、その時に出会った人とAmeriを立ち上げたので、チャンスはどこにあるかわからない。今悩んでいる人も、もがきながらでもいいからとにかくいろんな人に会って、いろんな仕事をして、その中で見つけれればいいと思います。楽観的かもしれないけど、いつかそういう転換期が来るんじゃないかって信じていればいい。私も悩みながらも動いていたので、本当にいいタイミングでいろんなお誘いをいただきました。

――やりたいことが見つかった時は、迷わず進めましたか?

最初はもちろん悩みました。会社を立ち上げて、私が社長としてやるとなったので、“洋服が売れなくて家賃払えなくなったらどうしよう…”って。でも、“バイトをしてお金を貯めればいいし、誰かの家に住まわせてもらえればいいかな”とも思えて(笑)。最悪の状況になってもその仕事がやりたいのかって自分に問いかけた時にやりたいと思えたことを常に私はしていきたいなって。その結論が出てからは、もう進むのがすごく速かった。

だから、みなさんも悩んだ時はいろんなパターンを考えてみたらいいんじゃないかな。最悪な状況になった時でも自分はそれをやって後悔しないのかと考えて、それでもやりたいっていう気持ちがあれば絶対にやるべき! そこまでしたくないなって思えば、その道に進まなくてもいいと思います。

仕事を任せられることも大事! 輝ける人を育てる会社にしたい

黒石奈央子さん 

――黒石さんは、30代後半で、結婚と出産、人生の大きなイベントを迎えられてますが、それを経験して変わったことや感じたことを教えてください

昨年、Ameriの10周年と私の出産が10月で、まったく同じ時期だったんですね。自分のブランドの周年の時に、出産して、仕事も産休に入って、そのタイミングで考える時間もできたんです。出産後は、出産前と見る景色や見える景色が少し違ってみえるようになりました。今までは見えていなかったような子ども用品や子ども服を見るようになって。自分の世界が変わった時に、新しい気づきや次にやりたいことを、産休中に考えることができたので、いいタイミングで少し休めたかなと思いましたね。

――最後に、人生のモットーと今後の野望も聞きたいです。

以前は、子どもを産んでも仕事をバリバリやるって決めていたんですけど、いざ子どもが生まれてみると、めちゃくちゃ可愛くて、仕事づくしにならなくてもいいなと思いました。子どもの日々の成長も見たいし、バランスよく生きていきたいな、今はそんながむしゃらにやらなくていいなと思ってます。出産を機に一度仕事を休んでみて、その間、スタッフの子たちに今まで任せてなかった部分を、潔く全部任せたんですよね。それがすごくいい方向に行って。私が全部見てたところを、スタッフを信頼して任せたことで、すごく伸びた部分もあって。“任せても大丈夫なんだ”“全部が全部、私が見ないほうがいいかも”と気づきました。子どもと向き合える時間もできたので、私にとってももちろんよかった。人に任せるのは怖いときもあるけど、私の場合、物理的に絶対に任せなきゃいけないタイミングだったし、その決断をできたのも、妊娠・出産があったからこそ。それがなければずっと自分でやっていたと思います。

野望は…Ameri以外の他の事業にもチャレンジしてみたいですし、今働いてくれているスタッフたちが“この会社で今後こんなことをしていきたい”と輝いていけるような会社を作りたいですね。あと、もっと引っ張っていける人間を育てていきたいです。

黒石奈央子さんに「一問一答」聞いてみた!

Q.気分が上がる“アゲめし”は?
A.焼肉(牛タン)、海鮮(つぶ貝) 「コリコリした食べ物が好き」 

Q.最近の癒しは?
A.子ども♡ 「寝てる時は絶対的に可愛いんですけど、一緒に遊んでる時や笑ってくれてる時もすごくキュンキュンします」

Q.これがあれば“ONになる”メイクアイテムは?
A.リップ 「ブラウン系の赤、ベージュ系の赤は常に持ち歩いています。着る洋服によって使い分けてます」

Q.よく観る動画コンテンツは?
A.『さらば青春の光Official Youtube Channel』と『THE ROLAND SHOW』 「さらば青春の光さんのチャンネルは、好きですし、おもしろいので笑ってリフレッシュしてます。ローランドさんは、経営者としての言葉や考え方に共感する部分があったり、ホストたちの裏側をピックアップする動画がおもしろいのでよく観ています」

Q.憧れる生き方をしている人は? 
A.『SEX AND THE CITY』のキャリー 「20代からドラマを何十回と見返していますし、今もたまに見返します。キャリーを見ていると気分が上がります」

Q.経営者として必要なものは?
A.人 「ひとりじゃ何もできないので、一緒に働いてくれるみんながモチベーションを上げられるようなことを考えなきゃいけないし、目標を同じにしなきゃいけないなと思っています。そして、“みんなが働いていて楽しい”と思えるような会社にしていきたいですし、発信していきたいです」

お仕事バッグの中身は?

黒石奈央子さん お仕事バッグの中身

コンパクトでおしゃれ! 黒石奈央子さんのバッグの中身は?

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撮影/齊藤晴香 取材・文/宮平なつき