IU×パク・ボゴム主演の『おつかれさま』は一貫して愛だった【韓ドラオタクおすすめの1本】
世界中の“エスン”と“グァンシク”に深い敬意と感謝を贈りたくなる感動の人生賛歌
韓国ドラマ大好き! なライターがおすすめしたい作品を紹介する不定期連載コラムです。
意志の強いじゃじゃ馬娘のエスン(IU)と鉄のように忍耐強く一途なグァンシク(パク・ボゴム)の波乱万丈な人生の軌跡を、済州島の鮮やかな四季を通して描く人生ドラマ『おつかれさま』を紹介します。

済州島を脱出中のグァンシク(パク・ボゴム)とエスン(IU)。
『おつかれさま』
全16話
出演:IU、パク・ボゴム、ムン・ソリ、パク・ヘジュン、キム・ヨンリム、ナ・ムニほか
Netflixシリーズ『おつかれさま』独占配信中!
あらすじ
1960年代の済州島、賢くしっかり者のオ・エスン(IU)は輝く未来を夢見ていた。しかし、貧しい海女の娘は非力で、野望はただの夢に。幼なじみのヤン・グァンシク(パク・ボゴム)は、そんなエスンを献身的に支え、愛し続ける。貧しいエスンをよく思わない彼の家族に2人は引き離されるのだが……。
ここが見どころ

女性初の漁協組合会長になったエスン。
本作は、1960年代の済州島(チェジュ)島で生まれた聡明なエスンと、鉄のように意志の固いグァンシクによる山あり谷ありの一代記を四季で表現したヒューマンドラマ。製作費は600億ウォン(!)、主演はIUとパク・ボゴムということで前評判が高かった本作。配信されるやいなや“愛”と“情”という普遍的なテーマとあたたかな物語を通じて、共感と感動を呼び起こし、世界各国で大ヒット。5/5に行われた『第61回百想芸術大賞 with GUCCI』でも作品賞や脚本賞など四冠を達成! まだ5月ですが、早くも“2025年を代表する最高の人生ドラマ”になるであろう本作のみどころをお伝えします。
※本記事はネタバレがありますので、ご注意ください。
国民の妹・IU×国民の彼氏パク・ボゴムの最強タッグが愛しい
IU&パク・ボゴムが主演なので、うっかりラブロマンスと勘違いしちゃうんですが、観るたびに泣き笑い、心が揺さぶられるヒューマンドラマ作品に仕上がっています。
はじまりは、四季折々の自然豊かな済州島を舞台に1960年代~2020年代を生きる気丈な女性エスン(IU)と、朴訥な青年グァンシク(パク・ボゴム)のドラマチックな人生と愛を描いた物語。この2人をベースに、彼らと両親、そして2人の子どもたちという別世代のギャップや生き方、考え方の違いと変化を細やかに描きながら、約70年にわたる家族の波乱万丈なエピソードが綴られます。
IUはエスンと、エスンの娘クムミョンの一人二役、グァンシク役には我らがパク・ボゴムを代表する演技派俳優がズラリ。過去と現在を行き来しながら描かれる人生の軌跡の中でも、特にきらめいているのは、IUとパク・ボゴムのケミ。次々と襲い掛かる逆境にも負けず、「人」という文字のように、思い合い、支え合い、助け合って困難を打ち破って前に踏み出すエスンとグァンシクの姿が愛しくて!
作品を通して、自分の身近にいる大切な人を思い出したり、もう会えない誰かを重ね合わせたりして胸がいっぱいになることでしょう。

エスン(IU)とグァンシク(パク・ボゴム)は、小さなときからの幼なじみ。
“母親たちの魂のブルース”をかみ締める

市場で海産物を売る海女さんたち。
1960年代の済州(チェジュ)島に生まれたエスン。幼い頃に父を亡くしたエスンは父の生家で暮らしているのですが、ヒモ夫(オ・ジョンセ)と再婚して海女となり、ヒモ夫との2人の子と暮らす母グァンネ(ヨム・ヘラン)の家をたびたび訪れます。というのも、家では叔父にいじめられており(エスンだけイシモチを食べさせてもらえないとか、雑用させられるとか、完全に使用人扱い)、大好きな母と暮らしたいというのが願いなわけで。しかし、エスン母は心を鬼にしてエスンを家に帰らせます。そう、自分の家よりも裕福な家の方がエスンにとっては幸せだと思って……。

エスン母役のヨム・ヘラン。娘のために学校へ乗り込む
1960~70年代、エスンが生きる小さな集落では、「女は家族の食事を作り、海女になって家計を助けるのがあたりまえ」「女が公務員になったってどうしようもない」という価値観しかありませんでした。そんな理不尽な社会で搾取され続けてきた母グァンネは、娘の未来を案じ「海女にはなるな」「おまえは自由に生きろ」といい続け、エスン10歳の時、肺を患って急死してしまうのでした。
そして物語は、エスンとグァンシクの高校時代の逃避行から結婚、出産、そして子どもたちを交えながら、挫折と再起を行き来し、2人は愛の旋律を奏でていきます。その旋律は、オーケストラのように壮大でも、優美などでもなく。想像もつかないような貧しさの中で少しずつ前に進む日々。だからこそ、大切な者同士の慈しみ合いが描き出す人生の旋律は、どんなドラマチックな映画の主題歌よりも切実に胸に響くのです。
また、本作の重要なポイントのひとつに、母性とはまた別の“母親”の描き方があります。私たちの世代が今の“自由”を得るまでに、母親たちが何を奪われ、どんな人生を強いられてきたのか。そして、“与えられた人生”の中で、何をよりどころにして生きてきたのか。母親たちによる魂のブルース、しっかりとかみ締めてみてください。

女学生時代のテスン。これはグァンシクが惚れるのもわかりますね!
人生ドラマに込められたいろいろな愛の形

魚屋の息子グァンシクは、隣でエスンの家の畑で採れたキャベツも売る。エスンの代わりに♡

市場で並んで店番をするエスンとグァンシク。

学生時代のグァンシクとエスン。学校行事でもエスンにくっつきたがるグァンシクかわゆす!
「一途な愛」「夫婦の愛」「子を想う親の愛」「隣人愛」など、愛の形は様々ですが、特に印象的だったのがグァンシク(パク・ボゴム/中年以降はパク・ヘジュン)の愛し方です。このグァンシク、10歳で出会って以来、死ぬその瞬間までエスン(IU/中年以降はムン・ソリ)を思い続ける一途な男なんです……!
無口で不器用だけど、とことん優しくて素朴。エスンの小言の嵐を受け止める鉄の精神力を持っているグァンシクに既視感があるなぁと思ったら、パク・ボゴムの出世作『恋のスケッチ 応答せよ1988』で演じたチェ・テクにそっくり! “素朴で純粋無垢。一途にひとりの女性を思い続けながら、ふと瞬間にドキッとさせる男”を演じさせたらパク・ボゴムの右に出るものはいません。ワンコのようなキラキラした瞳と、ワイルドな狼の一面を併せ持ち、一度決めたら迷いなくやり切る行動力のカッコよさは反則。彼を目にした人は皆恋に落ちてしまいますから。
10年間、エスンの代わりにキャベツを売り、魚を贈り届けたグァンシクのエスンへの思いは熱くて硬い鉄のごとし! エスンが「大統領になる」と言えば「じゃあ僕は大統領夫人になる」と答え、陸上部のコーチに「お前の人生の8割はエスンなのか?」と聞かれ、「10割」と即答♡ そして、すったもんだがありながらも初恋を実らせて夫婦となり、人生が終わるその瞬間まで彼女を愛し続ける姿に「こんな人間がいるの!?」と魂が震えました……。

この後、グァンシクがとんでもないことを仕出かすのですが、本編で確認ください
なお、ボゴムグァンシクの登板は物語の序盤なのでご注意ください。
また、ボゴムからバトンタッチするパク・ヘジュン(代表作ドラマ『夫婦の世界』での不倫男イメージを完全払拭した姿は必見)の、妻と家族に尽くす夫としての芯のある演技が素晴らしいので、そちらもご堪能くださいませ。
なんせ、本作の脚本家はイム・サンチュン。一般的に弱者とされる人々の生きざまを愛と笑いと涙にあふれるエンタメ作品に落とし込むのが得意な作家でして、代表作『椿の花咲く頃』『サム、マイウェイ 恋の一発逆転』を観た方ならおわかりかと思いますが、本作でもグァンシクが『サム~』のパク・ソジュンばりに、お金も学もないけど、人としての器がとんでもなく大きな男として描かれますので!

産気づくエスンをリヤカーで搬送するグァンシク。背筋がきれい

ひょっこりグァンシク♡

済州島の美しい海の写真ですが、ある悲しい出来事が2人を苦しめます……
心のやわらかいところに刺さる名言がズラリ
本作が名作と呼ばれるのは、どこかに必ず共感を覚える名言やシーンがあるから。
早速、いくつか挙げてみますね。
「飯炊き女にだけはなるな!」
10代のエスンを取り巻く環境は、女性に教育は必要なく、家事と海女をやっていればいいという古い時代。搾取されて続けてきたエスン母は、自由に生きてほしくて、娘にそう言い聞かせるのでした。

中年以降のエスンを演じているのはムン・ソリ。
「大切な人が毎日家に帰ってくること、それは日々の奇跡だった」
夫を見送ったエスンの書いた詩。日常は当たり前じゃないものなのだとあらためて気づかされるこの一文は、丁寧に毎日を生きよう、大切にしようという気持ちを後押ししてくれる、力強い言葉ですよね。

パク・ヘジュン演じるグァンシクと、テスン(ムン・ソリ)。
「違うと思ったらバックして戻ってこい」
グァンシクが、クムミョンに小さな頃から言い続けていた言葉です。ごはんを食べさせる時も「好きじゃなかったらバック……」、小学校入学の時も「行けなさそうなら……」、運動会の時も「走るのが嫌だったら……」、大学入試の時も「難しかったら……」、結婚式の時も「イヤだったら……」。娘が人生の綱渡りをするたび、こう言って娘を送り出していたのです。「失敗してもいい。自分が受け止めるから」という心の安全ネットを張って見守り続けるなんて……お父さーん!!!(号泣)
そして、各話のエンドロールにも愛に満ちた一文が。
「PRODUCTION BABIES」という文字の次に、ドラマの撮影期間中に妊娠していたスタッフのおなかの中にいる子供の胎児ネームが記され、そこにはこんな言葉が添えられているんです。
「同じ空 同じ星 同じ心に刻まれている」(1~4話)
「私たちの思いが こだまして いつか届きますように」(5~8話)
「お前たちは ただ走ればいい 元気よく」(9〜12話)
「無理ならバックしてこい いつでも待っているから」(13〜16話)
誰かが誰かを大切に思い、助け、生きる世界の優しさに涙が……。
“良い人たち”は思うより多く、案外身近にいるのかもしれません。その存在になかなか気づけないでいるのは、人生には困難と後悔が多く、生きることに精一杯だから。「それでも生きるしかない」と腹をくくってまわりを見渡せば、さり気なく自分を支えてくれる人っているんですよね。今いる場所で助けられて、感謝して。そして、いつの日にか誰かの助けになれば、人生はそれでいいんじゃないかと。
本作の韓国語タイトルは「폭싹 속았수다(読み:ポクサッ ソガッスダ)」。これは、済州島の方言では「本当におつかれさまでした」ですが、標準語では「すっかりだまされた」、という意味なんだそう(笑)。
皆様、『おつかれさま』が描く人生賛歌に、すっかりだまされてください!

左からエスン、長女クムミョン、グァンシク、長男ウンミョン。そしてエスンのおなかの中には“ドンミョン”が。

エスンの娘クムミョンは、母の夢だった大学進学を果たす。こちらもIUが演じています。
キャストたちのその他出演作にも注目!
IUは、主役エスンを演じるだけでなく、ナレーション、さらにはOST『夜の散歩(Midnight Walk)』まで務める多才ぶりを発揮。本業が歌手であることを忘れさせる演技にあらためて度肝を抜かれます……。
また、『おつかれさま』のキャストが出演するほかのドラマもおすすめ。
6月1日に、Prime Video(プライムビデオ)で配信が開始される『グッドボーイ』(原題)では、「敵を叩きのめすまでは、ラウンドは終わらない」と鋭い眼光で睨みをきかせるパク・ボゴム様が拝めます♡ さらにエスンの息子・ウンミョンを演じたカン・ユソクも! 人気シリーズ『賢い医師生活』のスピンオフドラマ『いつかは賢いレジデント生活』で大健闘中なので、本作で気になった方はチェックしてみてください♪
作品概要

満開の菜の花畑でキスするグァンシクとエスン。初ポッポは「鼻の下キス」というおぼこさがよき!
『おつかれさま』
全16話
出演:IU、パク・ボゴム、ムン・ソリ、パク・ヘジュン、キム・ヨンリム、ナ・ムニほか
Netflixシリーズ『おつかれさま』独占配信中!

Kカルチャー・旅・お酒・漫画・音楽・スポーツ観戦好きのライター。ドハマりしたK沼が旅沼に直結し、年間十数回は海外へ。マイブームは「海外の大衆食堂をめぐること」。2023年は釜山&ソウル(韓国)、バンコク&ブリーラム(タイ)、ホーチミン&ハノイ&ダラット(ベトナム)、コロンボ(スリランカ)、リヤド&ジェッダ(サウジアラビア)で爆食。2024年はソウル、ソウル、台湾、ソウルへ。さらに東アジア最大のレインボーパレードである、台湾LGBTプライドパレード「臺灣同志遊行」にも参加。2025年の“海外旅はじめ”はソウル&プサン(韓国)。6月にはシアトル(アメリカ)へ。