「音楽もお笑いも、自分のやりたいことをじゃまされず表現することを大切にしたい」

日本一の若手漫才師を決める『M-1グランプリ』を最年少で優勝。日本一のピン芸人を決める『R-1グランプリ』でも史上最年少での優勝を果たし、その後もテレビやラジオ、YouTubeなど多方面で大活躍の霜降り明星・粗品さん。芸人として輝かしい経歴と実力を持つ傍ら、絶対音感を持ち2歳からピアノを、13歳からはギターを始め、世界的に有名なピアニスト、ラン・ランさんとも共演を果たすなど音楽のフィールドでも話題に。2021年には『ユニバーサル ミュージック』協力のもと自身のレーベル『soshina』を立ち上げ、音楽活動に力を入れています。

そんな粗品さんが作詞作曲を手がけた「夕さりのカノン feat.『ユイカ』」(4/26リリース)が、テレビアニメ『青のオーケストラ』(NHK Eテレ)のエンディングテーマ(以下、ED曲)に使用されています。MORE WEBでは、アーティスト・粗品さんにインタビューを実施。曲のことや過去の音楽経験などについて、ボリュームたっぷりでお届けします!

粗品さんの撮りおろし写真 座りポーズ

『青のオーケストラ』って?

阿久井真原作、強豪オーケストラ部を舞台とした青春群像劇。とある理由でバイオリンを弾くのをやめた元天才少年の青野一が、中学3年の時に秋音律子と出会い、初心者の彼女にバイオリンを教えることで再び音楽と向き合っていく物語。

  • ●NHK Eテレで毎週日曜 17:00~17:25放送
  • 同チャンネルにて毎週木曜 19:20~19:45に再放送あり
  • https://aooke-anime.com/
夕さりのカノンジャケット画像

「アニメを観てバイオリンをやってみたいと思った人が、簡単に演奏できることを意識して作りました」

粗品さんの撮りおろし写真 ソファー

――“アニメのED曲を担当する”という抜擢を受けて、率直な感想を聞かせてください

粗品さん
粗品さん

めちゃくちゃ嬉しいです。僕は本気で音楽活動に取り組んでいますが、まだまだどうしても“芸人・粗品”のイメージが先行してしまっていると思います。そのイメージのせいで作品に迷惑がかかってしまう可能性もあったなか、僕に任せていただきとてもありがたかったです。音楽面でのキャリアの浅さや経験のなさなども含めて、担当させてくださった各所の方々に本当に感謝しています

――芸人としても非常にお忙しいと思うのですが、制作期間はどのくらいありましたか?

粗品さん
粗品さん

だいたい2~3ヵ月ですね。実は今、音楽の仕事をやりたくてお笑いの仕事を抑えているんです。『お笑いの仕事も忙しいなか、寝る間を惜しんで作りました』って言うほうが格好いいのかもしれませんが、それって『音楽は片手間なんかい!』って思われてしまう気がして。僕、音楽に真剣なんですね。なのでしっかり時間を確保して、集中して制作しました

――「夕さりのカノン feat.『ユイカ』」を作るうえで意識したことは?

粗品さん
粗品さん

先方の意思やリクエストを反映させながら、自分が表現したいものを作るということです。自分のやりたいことだけを通さず、作品に関わるすべての方が納得いく作品に仕上げるのがタイアップだと思っているので

――では、作詞のこだわりを教えてください

粗品さん
粗品さん

登場人物が感じているであろうリアルな気持ちを表現したことです。歌詞はダイレクトに作品と関わる部分なので、神経を張りめぐらせて作ったつもりです。『青のオーケストラ』はもともと原作を読んでいたのですが、作詞のためにもう一度読み直して。僕は部活動の経験はありませんが、オーケストラ部など音楽系の部活に入っていた子は、きっと授業中にこんなことを考えていたんやろうなとか、たくさん考えましたね

――『青のオーケストラ』の登場人物たちにシンパシーを感じるところはありましたか?

粗品さん
粗品さん

主人公が片親のとこやな! “かあちゃんだけ”っていう部分にものすごく共感したな(笑)。そんなことより、音楽メインの作品ではあるんですけど、人間模様がリアルだなと思いました。思春期ならではのキラキラした感じから、胸が痛むことやグロテスクなところまでもが描かれていて、自分の学生時代もこんな感じやったかもと思い出しました

――サビに「この音が好き」という印象的なフレーズがありますが、粗品さんが好きな音は?

粗品さん
粗品さん

パチンコの保留連の音ですね、はい。簡単に言うと、4つの保留のうち、1つはもう当たってるよ~! っておしらせしてくれる音。その音が好きです!

※パチンコ台で、大当たりする前に貯めた保留で連続大当たりをすること。先読み機能のある機種では大当たりラウンド中や終了時の演出で保留連を示唆する演出が発生するものも多い

――作曲のこだわりはどういったところですか?

粗品さん
粗品さん

『青のオーケストラ』を観てバイオリンをやってみようと思った人が、この曲を簡単に弾けるように、AとEとDのコードしか使わなかったことです。コードのAとEとDはバイオリンの開放弦の音色で、ギターで弾く時にもとても簡単なコードです。今回編曲は、シンガーソングライターでボカロPのsyudouさんにお願いしたんですけど、『音楽を始めたいと思った人が演奏しやすい曲にしたい』ということを、たしか真っ先にお伝えをして。僕が作ったデモの状態からは想像していなかったほど、素晴らしい曲に仕上げてくださいました。完成した曲を初めて聞いた時、本当に感動しました

※弦楽器を演奏する際、指で弦を押さえずに音を出すこと。または指で弦を押さえていない状態そのものをいう

音楽とお笑い。過去の経験が活きてきた部分も

粗品さん撮りおろし写真 立ち

――10代の頃、草オーケストラ※ をしていたとのことですが、当時の経験が活きた部分はありましたか?

粗品さん
粗品さん

レコーディングの立ち合いをさせていただいた時に、『こういう音も聞いてみたいです』とわがままにも何度かリクエストをさせていただきました。そうしたリクエストができたのは、ある程度音楽の経験があったからかもしれません

※粗品さんは、草野球のように、楽器ができる人を集めて演奏していたことを“草オーケストラ”と呼んでいる

――絶対音感も、レコーディングの際などに役立ったのでしょうか?

粗品さん
粗品さん

正直僕にとっては、絶対音感は曲を作るうえではあまり関係なかったです。役立つという意味ではお笑いのほうがあって、たとえば『言い方がマクド(マクドナルド)のポテト上がった時の音!』みたいな、“~の音程みたい”っていうツッコミをよくするんですけど、音を聞いてすぐにいろいろ浮かぶのは、僕ならではかもしれません

――以前『千鳥のクセスゴ!』(フジテレビ系)で披露された「ツッコミオーケストラ」のネタは、自身の音楽経験をもとに?

粗品さん
粗品さん

昔から音楽をお笑いに落とし込むのは結構得意だったので、ツッコミオーケストラも作ってみました。テンポ感と音ハメはお笑いとかなり密接に関係していると思いますね。ツッコミオーケストラのネタは、実は僕が8分の7拍子の指揮を振っているっていうおもしろさがあるんです。全然伝わらなかったんですけど(笑)。芸人でこの拍をとれる人ってたぶんほかにいないので、そういう細かい部分もこだわってネタも作っています

――粗品さんといえば、YouTubeでよく替え歌を披露してらっしゃいますよね

粗品さん
粗品さん

いろいろ知っていてくださってありがとうございます。替え歌の動画は定期的に配信していますが、替え歌させてもらう曲はめちゃくちゃ聴きます。音程もですけど、聴けば聴くほど作り込まれているのが分かるので、おもろいんですよ。「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ feat. 花譜, ツミキ」の替え歌を作った時は、曲を聴きすぎて、“え、これアニメ尺バージョンとフルバージョン、音程ちゃうくない?”と思って確認したら、実際に音程を変えてたんですよね。 あと、ダイナマイトキングっていうパチンコ台があるんですけど、打っている時に流れる「ワンナイトサマー」っていう曲があって。それも一時期聴きすぎて、ミックスまで気になっちゃいました

※「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ feat. 花譜, ツミキ」は、テレビアニメ『うる星やつら』のED曲に使用されていた

――ピン芸人としては『R-1』を、漫才師としては『M-1』を最年少で優勝。芸人として大きなタイトルをお持ちですが、“アーティスト・粗品として”の目標を教えてください

粗品さん
粗品さん

まずは、“芸人が片手間に、遊びでやっている音楽”みたいな認識をゼロにすることです。僕は音楽業界にもリスペクトを持って、音楽に本気で取り組んでいます。“芸人がやってる音楽”っていう意識を向けられるのが本当にイヤなので、それをゼロにすることが最初の目標ですね。一日でも早く、芸人・粗品の音楽ではなく、アーティスト・粗品の音楽としてみなさんにご周知いただけるよう、がんばっていきます

粗品さんの撮りおろし写真 ピース

「夕さりのカノン feat.『ユイカ』」を今すぐチェック!

粗品

そしな●1993年1月7日、大阪府生まれ。芸人として数々の受賞歴を誇る傍ら、アーティストとしての活動も広がり、2020年にはボカロ楽曲を発表。「#みどりの唄」は公開と同時にTwitterでトレンド入りを果たした。2021年は音楽活動の本格化に向け、自身のレーベル『soshina』を設立。同年3月にレーベル『soshina』第一弾楽曲「乱数調整のリバースシンデレラ feat. 彩宮すう(CV: 竹達彩奈)」をリリース。配信されるや否や、タイトルとMVの主人公のキャラクター名がTwitterトレンドの7位と8位にそれぞれランクインした。また、2021年11月には太鼓の達人20周年アンバサダーに就任。太鼓の達人20周年記念ソング「大好きな太鼓の音 feat. どんちゃん」を書き下ろし、話題を呼んだ。

撮影/齊藤晴香 取材・文/矢野愛

ライター矢野
矢野愛

元・MORE読者ブロガーのモア世代ライター。スタバの新作レポなどグルメを中心に、ホテルや旅行、おでかけ情報などライフスタイル全般を担当中! 横浜・みなとみらいのフリーマガジンを作っていたほど地元愛が強いハマっ子です♡ 夏と旅行と海を愛するアクティブ女子で、スポーツが大得意。服は空間に合わせてコーディネートするのが好きです:)

この著者の記事を見る >