
【髙石あかりさん】「映画『夏の砂の上』の撮影は人間としても俳優としても宝物のような時間だった」
7/4(金)公開の映画『夏の砂の上』で、父親の愛を知らずに育った17歳の少女を演じた髙石あかりさん。インタビュー前編では、「人間としても俳優としても宝物のような時間だった」と語る撮影を振り返っていただきました。

役の捉え方は自由でいい。監督から、そう教えてもらいました。

――脚本を読まれた感想を教えてください。
髙石あかりさん(以下、髙石):私が演じた優子という役はオーディションを受けて決まったのですが、最初に脚本を読ませていただいたとき、優子が発するセリフの意味や彼女が考えていることがわからなかったんです。オーディションでも、玉田(真也)監督の「脚本を読まれていかがでしたか?」という質問に対して「優子というキャラクターについて感じたことを書き出してみたけど、わからなかったです」と正直にお伝えしました。そこで、監督から「すごくシンプルで、主人公の治が夏の間に少しだけ成長するお話です」という言葉をいただいて。それまでは意味や正解を探すことを大事にしていたけれど、役の捉え方はいろいろあっていいと教えてもらったことで、脚本の読み方が大きく変わるひとつのきっかけになりました。
――最初に脚本を読んだ時点ではわからなかった優子というキャラクターの輪郭は、クランクインまでに見えてきたのでしょうか?
髙石:輪郭は、ぼやけたままだったかもしれません。本読みのときに自分の中で作り上げた優子をお見せしたら、監督から「ありのままでいいですよ。髙石さんはそのままで優子なので」と言われて、またわからなくなってしまったので(笑)。でも、言われた通りに何も考えず演じてみたら、スクリーンに映っていたのは自分ではなくて完全に優子だったんです。ちょっとした体の動きなどで優子らしさは意識していたものの、撮影していた1カ月間は長崎に住んでいたし長崎で生きていたので、カメラの前にいるときと私生活の境目が曖昧になっていて……。そんな日々が、目の前にあるものに心のままに反応しながら役と向き合おうという覚悟をさせてくれたのかもしれません。
心が震えた「芝居が映画的だった」というオダギリさんの言葉

――長崎に滞在されていた期間を振り返って、楽しかった思い出は?
髙石:撮影が終わると、共演者のみなさんと行きつけのごはん屋さんで食事をしたり、いろんなお店でちゃんぽんを食べて「私はこの店がいい」、「私はあっちの店が好きだった」みたいな話をしたり(笑)。優子の母親役を演じられた満島(ひかり)さんとごはんを食べて、お買い物に行ったこともありました。宿泊していたホテルが山の上にあって、街に出るときは、私は歩くのが好きなので急な階段を何度も休憩しながら昇り降りして……。さすがにもう一生しないって思うほどハードでした(笑)。
――特に印象に残っているシーンを教えてください。
髙石:たくさんあるんですけど、治と優子が水を飲むシーンは何かをつかんだ瞬間がありました。その日の撮影が終わったあと、治役のオダギリ(ジョー)さんとお食事に行ったら「あのシーンの芝居は何よりも映画的だった」と言ってくださって。これまで映画というものをすごく大切にされてきたオダギリさんのその言葉は、鳥肌が立つほどうれしかったです。

映画『夏の砂の上』7/4(金)公開
雨が降らない夏の長崎。幼い息子を亡くした小浦治(オダギリジョー)は、幽霊のように坂の多い街を漂っている。妻の恵子(松たか子)とは別居中だが、せまい街では恵子と元同僚の陣野(森山直太朗)の関係に気づかないふりをすることも難しい。そんなある日、妹の阿佐子(満島ひかり)が、17歳の娘・優子(髙石あかり)を「預かってほしい」と連れてくる。こうして突然、治と姪の優子との同居生活がはじまることに……。
出演:オダギリジョー、髙石あかり、松たか子、森山直太朗 高橋文哉、満島ひかり、光石研
監督・脚本:玉田真也
原作:松田正隆(戯曲『夏の砂の上』)
音楽:原摩利彦
配給:アスミック・エース
(C) 2025映画『夏の砂の上』製作委員会
【髙石あかりさん着用】
ドレス¥137500/seya. イヤリング¥18700(SAFON)・ネックレス¥16500(YArKA)・ブレスレット¥18700(four seven nine)・リング¥39600(O-KI)/すべてロードス その他/スタイリスト私物
【お問い合わせ先】
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撮影/上村透生 ヘア&メイク/住本彩 スタイリスト/金田健志 取材・文/吉川由希子