「金か、魂かー。」上戸彩が銀行を舞台にした大暴露エンタテインメントでカムバック!

映画『シャイロックの子供たち』上戸彩さん

俳優・上戸彩さんが、スクリーンへ6年ぶりにカムバック! 池井戸潤さん原作・阿部サダヲさん主演の映画『シャイロックの子供たち』に出演します。池井戸さん原作で大ヒットしたドラマ「半沢直樹」シリーズでは銀行員の妻役だった上戸さんが、本作では銀行員に。阿部さんや玉森裕太さんをはじめとする豪華共演陣とのエピソード、女性の働き方やお金に対する考え方など、上戸さんの現在地をみっちり語っていただきました。

『シャイロックの子供たち』ってどんな映画?

阿部サダヲ・上戸彩・玉森裕太らが出演する映画『シャイロックの子供たち』銀行シーン

©️2023 映画『シャイロックの子供たち』製作委員会

累計発行部数60万部を超える池井戸潤さんの小説『シャイロックの子供たち』(文春文庫)を原作に映画化。

東京第一銀行の小さな支店のベテランお客様係の西木雅博役を阿部サダヲさん、同じ支店で働く北川愛理役を上戸さん、同僚の田端洋司役を玉森裕太さんがそれぞれ演じます。

3人が支店内で起こった現金紛失事件の裏側を探るうちに、次々に明らかになる銀行全体の大問題や、人の心が抱える闇。支店長役の柳葉敏郎さん、パワハラ副支店長役の杉本哲太さん、支店の若手エース役の佐藤隆太さんとその弱みにつけ込む不動産会社社長役の橋爪功さん映画オリジナルキャラクターに柄本明さん、そして支店の調査に訪れる本部検査部員役に佐々木蔵之介さんと、キャスト陣の豪華なラインナップにも驚かされます。お金に対する向きあい方について心の底から考えさせられる、いい意味での超問題作です。

阿部・上戸・玉森、3人の見事なチームワークが物語をぐいぐい牽引

映画『シャイロックの子供たち』で共演する阿部サダヲ・上戸彩・玉森裕太

©️2023 映画『シャイロックの子供たち』製作委員会

ーー「半沢直樹」に次ぐ池井戸原作作品への参加、しかも今回は銀行員の妻ではなく、銀行員として働く上戸さんを観られるのが本当に楽しみです! 阿部サダヲさんとの共演も実現できてよかったですね。

上戸さん
上戸さん

ありがとうございます。サダヲさんとはいつかご一緒したいと思っていたので、念願が叶って本当にうれしかったです。自分も楽しみながら、家族にも現場にも迷惑をかけずにできそうだと思ってオファーを受けたら、結果として(本木克英)監督をはじめ、そうそうたる豪華キャストのみなさんとご一緒させていただく貴重な機会となりました。橋爪さんにも久しぶりにお会いできましたし、柄本さんともプライベートな会話ができて、「やってよかったな」と実感できる瞬間がたくさんありましたね。ロケ地が遠かったので、子育てからちょっと離れて、久しぶりにひとりの時間を満喫できたのもよかったです。休憩中に飲むコーヒーが心身に染みました。おいしかった!

ーー池井戸さん原作の作品に出演できるというのは、上戸さんにとってもやはり特別なことなのでしょうか?

上戸さん
上戸さん

池井戸さんの作品には大勢のファンがいらっしゃいますし、ストーリーの力強さや、演者さんのギラギラ感など、現場の空気感がほかの作品とはやはり違いますね。「半沢直樹」シリーズの時も、福澤(克雄)監督の期待に応えたくて自分も必死にくらいついていくような熱量や、みんなの集中力で空間が満たされて現場に神が降りてくるような瞬間が重なって、不思議な魅力がありました。本作も、ベテランの役者さんがそろいそれぞれの味を出していて、セリフの言い回しも間合いも「すごいなあ」と感心させられるようなことばかりでした。ストーリーはもちろん、みなさんの演技のクオリティの高さに刺激を受けた現場でした。

ーー念願叶った阿部サダヲさんとの共演はいかがでしたか?

上戸さん
上戸さん

想像したとおりの方でしたね。時折ボソボソと漏らす言葉がいい感じにブラックで、ひと言ひと言がツボに入りました。サダヲさんと玉ちゃん(玉森さん)3人のシーンが多かったのでずっと一緒にいたのですが、ずっとフワフワしておちゃらけているようなところがあるサダヲさんと私を、いつも生真面目な玉ちゃんがグッと引き締めてくれて、それが3人のバランスを整えてくれていました。あと、美容に詳しい玉ちゃんと情報交換がしたい私のビューティトークに全然ついてこられない阿部さん、という構図になるのも面白かったし、楽しかったです。

映画『シャイロックの子供たち』玉森裕太さん

©️2023 映画『シャイロックの子供たち』製作委員会

ーーMOREの撮影でも真面目な玉森さんは、映画の撮影現場でも真面目なんですね!

上戸さん
上戸さん

準備稿の段階から、玉ちゃんが演じる田端って、私の中で少しチャラい印象があったんです。メガバンクの小さな支店に勤めている自分にクサクサしていて、転職を狙っていることを隠さないし、いつも「なんとかなるっしょ」みたいに思っているチャラい若者風なキャラクターだと思っていた。でも、玉ちゃん自身がとても真面目な方なので、監督が違うパターンのキャラクターも見てみたいようで何回かトライしても、すべての演技が玉ちゃんらしくなる、みたいな……わかります? でも、そこが玉ちゃんのよさで。そんな玉ちゃんの生真面目さが、私たち3人のチームワークをいい感じに保ってくれました。玉ちゃんがキーマンです。

ーーすごく伝わってきます! 俳優の先輩である上戸さんから見て、ほかに玉森さんのいいところはありましたか?

上戸さん
上戸さん

ピュアさというか、実直なところに本当に心を打たれましたね。サダヲさんのオンリー録り(※)とかにもちゃんといっしょに取り組んでいて。サダヲさん、ただでさえセリフを噛みがちなのに、玉ちゃんの真面目な顔を目の前にして余計に噛んじゃうんですけどね。私の場合は逆にオンリー録りの時は「あんまり見ないほうがいいんだろうな……」と思って、ふーーーって力抜いちゃったりするので、玉ちゃんの「カメラに映っていなくても、きちんと向きあわなくては!」と思って何回も芝居につきあう姿を見て、胸がきゅんきゅんしてしまいました。 ※セリフや効果音など、音声のみを録音するプロセス

個性や味を加えず、銀行で働く“真面目に仕事に向き合う女性”に徹する

映画『シャイロックの子供たち』で銀行員を演じる上戸彩

©️2023 映画『シャイロックの子供たち』製作委員会

ーーそんな阿部さんと玉森さんの間で、上戸さんは愛理役をどのように演じましたか?

上戸さん
上戸さん

銀行の中にいる人ですから、キャラクターとして目立たないことを意識しました。シンプルな女性像を目指したんです。個性を加えたり、味を出そうという気持ちはまったくなくて、普通でいたかった。

また、男性が主導権を握っている職場ではありますが、“女性に対して男性が優しい、女性だから優しくされている”というふうにも見られたくなかった。なので、女性らしさをあまり前面に出さず、ただただ真面目に、自分の仕事に向きあうキャラクターに徹しました。

ーーそんな愛理が、現金紛失の犯人ではないか疑われ、絶体絶命に陥るシーンにはハラハラします。

上戸さん
上戸さん

支店長たちに責められるシーンは、実はとても演技が難しかったんです。愛理がずっと画面に出ている存在ではなく、ちょこちょこ登場するキャラなこと。私自身が人前で泣くことがないので、泣くところまで自分の感情を持っていき、それを観ている人にきちんと伝えなければならないこと。さらに「私はやっていない」と、NOであることはNOだと、きちんと言える強さも感じさせる必要もありました。なので、緊張して撮影に臨みました。でも、私にも “言いたくても言えないもどかしさが悔しくて、楽屋で泣いてしまうような時代”も確かにあったので、それを思い出して懐かしく感じたりもしました。

ーー阿部さん演じるベテランお客様係・西木のおかげで見事に濡れ衣を晴らし、真実の解明に向けて突き進む愛理の姿にスカッとします。

上戸さん
上戸さん

愛理は、西木さん(阿部さん)と田端くん(玉森さん)という尊敬すべき同僚から信頼され愛されている人。愛理のような真面目な女性は、きっとあらゆる会社や組織にたくさんいらっしゃるんだと思います。頑張って働いて稼いだお給料で家族を養っている。私も俳優というお仕事でいただいたお金は自分だけではなくて家族に使ってもらいたいと考えていますし、私自身10代の頃から“苦労してきた母親に「大きなお家を買ってあげたい」”という夢を持って突っ走ってきたので……。あ、この点では、愛理と私は共通しているかもしれませんね。

ーー日本社会はまだまだ男性優位。男性と対等に頑張るか、しなやかさを武器にうまく立ち回るのか。女性が働くスタンスにはいろいろありますが、上戸さんはどちら?

上戸さん
上戸さん

私自身はどちらでもないのですが、どちらのタイプの女性も見てきました。いろんな方がいますよね。いちばん気になったのは若手で中間管理職の女性たち。男性よりもはるかに成果を出して頑張っているのに、年齢がついてこないせいなのか、評価してもらえない女性が本当に多いと思います。でも、時代は確実に変わっていますよね! 長年“男社会”といわれてきた映画やドラマの撮影現場でも、カメラマンさんも音声さんも照明さんも女性が増えてきて、昔みたいなスパルタ現場も減りましたし。

他人の評価が絶対軸じゃなくなったからこそ、自分で自らをプロデュースしてみせる世の中になってきているので、今まで媚びを売ってきたような人も「そんな暇があったら自分でやっちゃえ!」みたいな空気感がありますよね。私が10代・20代の頃と時代が変わっているなと実感しています。

ーー上戸さんも、SNSなどでご自身のクリエイティブを発信するタイミングがきているのでは!?(期待)

上戸さん
上戸さん

いやいや、私はそういうセルフプロデュース精神がまったくなくて、絶対できっこないって思っちゃう。「誰が私のプライベートを見たいのかなぁ」ってはなはだ疑問なので、Instagramもやっていません。おしゃれな写真をアップする自信もないし、だからといって素のくたびれた姿ばかり見せても「どうなの!?」って。本当に普通なんですよ、私。「私生活を見せたい」とか、そういうのがまったくないんです。かえって仕事に支障が出そうな気がしちゃう。

上戸さんの生きざまに学ぶ、家庭と仕事のバランス、そしてお金に対する考え方

映画『シャイロックの子供たち』で再び池井戸 潤原作作品に出演する上戸彩さんインタビュー

ーー子育てと俳優業の両立は本当に大変だと思います。独身の頃と現在とでは、仕事に対するスタンスは変わりましたか?

上戸さん
上戸さん

自分が「100%やりたい、できる!」と思えたお仕事、さらに、家族に迷惑をかけすぎず、家族が応援してくれるような役と作品を選んでいますね。自分の中にある“母”と“仕事”、2つのスイッチをうまく切り替えられるバランスを重視します。妻役やお母さん役は比較的等身大でいけるので引き受けやすいかも。逆に、若い男性との恋愛要素が濃い役のオファーは躊躇してしまうな……つい、観る人の気持ちを考えてしまいます。

ーー「迷惑をかけたくない」というワードがたびたび出ますね。

上戸さん
上戸さん

私は子どもたちをちゃんと見送ってから、自分の仕事に入りたいんです。するとどうしても、朝見送ってからしか働けない。映画ともなると早朝5時とか6時から現場入りするのが当たり前の世界で育ったので、どうしても「申し訳ない」と思っちゃうんですよね。「私は母親なんだから仕方ないでしょ」というスタンスで現場に入れれば本人はラクかもしれないですが、そう振る舞う人がいることで困る立場の人が見えてしまう。なるべくみんなが平和に受け入れてくださるような環境にもって行きたいんです。「何時までにこの人出さなきゃいけないから」といってあたふたする現場をたくさん経験してきたので、自分の都合に周囲を巻き込みたくないっていう思いが強いのかも。確かに、無理を重ねたからこそ「やってよかったな」と思う作品も多いのですが。やっぱり “迷惑をかけずに自分も周囲も楽しんで働ける”というのが、今の仕事選びでいちばん大切な要素かな。

ーー自分も相手も心地よい環境であれば、お互いに安定したメンタルで仕事に臨めますから、いい結果に結びつくことも多いですよね。

上戸さん
上戸さん

昔の苦労があったからこそ、この歳になってようやく、そういう環境を自分で作れるようになってきたのかもしれません。芸能界というのは決して、最初から自分の希望や意見が通せる世界ではありませんから。自分の好きなスタッフと過ごせるように、自分で工夫して振る舞ってきたところはあります。あとは感謝の気持ちも大事。今の自分の最優先事項である育児と家庭があり、そのうえで仕事にも集中させてもらえる環境と、そんな私の立場を分かったうえでオファーをくださるみなさんには本当に感謝しています。

ーー上戸さんが築いてきた絶大な信頼がなせるわざですね。

上戸さん
上戸さん

何をもって“信頼”というかですよね。私にとっては、嘘がない関係が信頼関係なのかも。私は、“自分は商品なんだ”と自覚して、がむしゃらに働きまくった時期を経て、今やっと人間らしくなれている感じがするんですよ。日常生活には嘘やごまかしがいっぱいありますけれど、年齢や経験を重ねるごとに、そうしたものを遠ざけたり、上手にスルーできるようになってきた。今は穏やかというか、すごく自分らしくいられる環境に生きている感じがします。昔があったからこそ、今があるんだとつくづく思います。

お金は恐ろしいもの。振り回されないよう、上手にコントロールしたい

上戸彩 独占インタビュー! 映画『シャイの画像_7

ーー上戸さんご自身は、お金とどのように向きあっていますか?

上戸さん
上戸さん

昔も今も、お金と数字にまったく興味がないんです。もう37歳なので、いいかげん自分で管理しないといけないのですが、母に任せっきりなところがあります。むしろ、お金が好きじゃないんでしょうね。「お金はあったほうが幸せ」という人も大勢いらっしゃいますけれど、お金が人を狂わせると実感するような経験もたくさんしていますから。お金がなくても幸せなことって確実にあるし、そう教えてくれた母親には本当に感謝しています。「そんなのきれいごとだよ」と思われるかもしれませんが、私はそういう家庭で育ってきましたし、お金がないからこそ見えるもの、逆にお金があるからこそ見えなくなるものもたくさんあると思います。

ーー本作も、お金が人間を狂わせる恐ろしさについて綿密に描いていますよね。

上戸さん
上戸さん

人間にとっていちばん怖いものはお金だと思っています。扱い方を間違えるとすごく恐ろしい。“お金は人を変える”と思っているからこそ、自分もあまり執着したくないのかもしれません。評価基準のすべてがお金にあると思いたくないので、あえて目をつぶり、常に一定の距離を置いておく、くらいのスタンスがちょうどいいのかもしれませんね。お金の使い方で、人やものごとがいい方向に動くように気をつけたいと思います。

ーーお金も気持ちもご家族最優先の上戸さんですが、ご自分のためにお金を使うならどんなことですか?

上戸さん
上戸さん

マッサージには惜しみなくお金をかけます! 放っておくと施術中も育児や仕事のことで頭がぐるぐるしてしまうので、スマホを手放して、癒されることになるべく集中するように心がけています。あと、最近お掃除ロボットを買ったんです。なんでもっと早く手を出さなかったんだろうって後悔するくらい便利で快適。でも私、基本的に、家族のこと以外であんまりお金を使いたい欲や、ほしいものが本当にないんですよね……。何かポジティブな意味のあることにお金を使いたいですね。

俳優
上戸彩

うえと あや●1985年9月14日生まれ。「第7回全日本国民的美少女コンテスト」をきっかけに芸能界デビュー。ドラマ「絶対零度」や「半沢直樹」シリーズ、映画『あずみ』や『テルマエ・ロマエ』『昼顔』など代表作を多数持つ人気俳優。私生活では2児の母でもある。

2023年2月17日(金)全国公開! 映画『シャイロックの子供たち』

映画『シャイロックの子供たち』本予告【2023.2.17(金)公開】

監督/本木克英

原作/池井戸潤『シャイロックの子供たち』(文春文庫)

出演/阿部サダヲ、上戸彩、玉森裕太、柳葉敏郎、杉本哲太、佐藤隆太、柄本明、橋爪功、佐々木蔵之介 ほか

配給/松竹

© 2023映画「シャイロックの子供たち」製作委員会

映画『シャイロックの子供たち』公式サイト

撮影/齊藤晴香 取材・文/沖島麻美