恋に仕事……、女子の悩みは酸いも甘いもかみ分けた男に聞け! 勝村政信さんの2回目は仕事論です。

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【今回のお悩み】周りは意識が高いのに、仕事に前向きじゃない私ってヘンですか?

私の周りには情熱を持って仕事や資格の勉強を頑張ったり前向きな女子が多いんです。でも、私は責任ある仕事や立場は望まないし、今の仕事のように定時で終わり、ほかの時間は自宅(実家)で過ごせば幸せ。こんな私ってヘンなのでしょうか?(25歳・事務)
勝村政信さんがお答え! 「前向きの〈前〉の画像_1
まず〈前向き〉ってなんなのか、ということですよね。〈前〉という言葉が意味するものは、人によって違うと思うんです。みんなはたぶん、ほかの人たちにほめられるようなことをするのが〈前〉だと思っている。〝ポジティブなことこそ正しい、そっちが前だ〟というような風潮です。けど、本当にそうなのかな? そこから疑い始めましょうって、僕は提案したいですね。

みんなが同じ方向を向くのは、恐ろしいこと

フランスの有名な演出家に、ジャック・ルコックという人がいました。ある人が彼のスタッフに演劇の意味を尋ねたら、こういう答えが返ってきた。「演劇は、世界が同じ方向を向かないための重石である」と。 人間がたくさん集まると、どうしても同じ方向を向くのが正しいと思ってしまいがちです。 でもそれは、幻想なんです。歴史的にも、みんなが同じ方向を見て一気に戦争に突入して、それが間違いだったと後から気づくとか、あったでしょう?

みんながみんな、同じ方向を向く必要はない。それぞれの人が自分の〈前〉を向いて、ばらばらであることを許されるほうが文化的し、豊かなんです。 あなたが責任ある立場や仕事を望まないのなら、無理して頑張る必要はありません。定時に帰宅して自宅でのんびり過ごしたいって、素敵じゃないですか。そっちの方向こそがあなたの〈前〉なんです。自信を持って定時に家に戻ってください。

自問自答、妄想、空想があなたを豊かにする

今、世の中は画一的になって、同じ方向を向くように仕向けられている。たとえば、おいしいものなんて自分が決めればいい。僕なら流行のお店の行列に長い時間並んで食べるなら、娘とゆっくり話しながら食べる家のごはんのほうがずっとおいしい。毎週やってるサッカーの後、メンバーみんなといつも同じそば屋に入って、同じものを食べるんだけど、僕はそっちのほうが何よりおいしくて幸せです。

あなたはまだ25歳だから、なかなか難しいよね。若いうちは周りにあおられて、いろいろ考えるものだから。「自分もしっかりしなきゃいけない、でも、しっかりってなんだ?」とか、自問自答の繰り返しでしょう? でもその自問自答こそが、大事なんです。妄想とか空想する時間は、人間を豊かにします。

よく取材で聞かれる「休日は何をしていますか?」って質問に、「ぼうっとしてる」と答えると「ええっ!」って驚かれるんだよね。だけど、ソファに一日いて何が悪いんだ!(笑)。僕ももう50歳を過ぎて、植木とか買い始めて、すると枯れ葉が落ちるから掃除する。ついでに家の前も掃除するようになって。「なんだか俺って“レレレのおじさん”みたいだな」と思ったり。でも、もし福山雅治さんがレレレのおじさんだったら、「お出かけですか?」って挨拶された女性は狂喜乱舞するだろうな、とかね。そういうことを休日のソファの上で妄想するわけです。あ、ちょっと話がそれたかな。

あなただけじゃなく、僕だけでもなく、人間は基本的に、みんなどこかおかしいんです。どこかヘンだし、どこかズレている。でもみんなそうなんだから、安心してそのヘンを貫けばいい。そのヘンがきっといつか、あなたの個性になる。そう思います。

【勝村政信さんの回答】前向きの〈前〉がなんなのかそこから考えてみよう

かつむら・まさのぶ●1963年7 月21日生まれ、埼玉県出身。87年、劇団「第三舞台」に入団し主要メンバーとして活躍。ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』など出演作多数。映画『劇場版 仮面ライダービルド』(公開中)に出演

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取材・文/岡本麻佑 撮影/平岩 亨 ヘア&メイク/
奥山信次(Barrel) スタイリスト/中川原 寛(CaNN)
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