なんでもない日常を淡々と描くことに、おもしろさを感じた。

【バカリズムさんインタビュー】映画『架空の画像_1
バカリズムさんが約3年間、銀行で働くOLになりすまして書きつづり話題となったブログが2017年の連続ドラマ化を経て、スクリーンへ。その名も映画『架空OL日記』で、バカリズムさんは主人公の〝私〟を、特殊メイクをするわけでもカツラをかぶるわけでもなく、そのままの姿で演じている。

「ブログを書き始めたのは10年以上前。発端は……おもしろそうだからとしか言いようがないんですけど(笑)。当時、世の中では芸能人のブログがブームで。それを見て『この人、和食を食べたって書いてるけど、それが実際は中華でもなんの影響もないな』って思ったんです。だったら、僕がまったく別世界の人になりすまして日常を淡々とつづってもいいんじゃないかって。そのうち、周りの人がこのブログのあまりに何も起こらないところを、おもしろがってくれるようになっていったんですよね。映像化されることになった時も、本来のおもしろさから離れてしまわないように、物語性は一切排除して脚本を書きました」

たしかに、劇中では特にドラマティックな出来事が起こるわけではない。けれど、淡々と描かれる日常には、心にグサッと刺さるワードがたびたび登場する。たとえば、〝私〟が同僚の女性陣と上司の悪口で盛り上がるシーン。途中で水を差す(でも正しい)発言をした後輩に向かって、〝私〟は「今の時代、必要なのは真実よりも矛先だから」と言い放つ。なんだかOLが女性の世界を生き抜いていくコツを熟知していそうなバカリズムさんにアドバイスを求めると、「え〜、僕も仕事場でみんなとうまくやってるかと聞かれたら、そうでもないからなぁ」とポツリ。

「もっと芸人の輪に入れたらっていう気持ちもあるけど、向き不向きがありますからね。それができない時は、自分の性格に一因があるのかもしれないし。えらそうなことは言えないけど、職場に溶け込めなくて悩んでいる人は、環境とか他人のせいにする前に、自分自身を一回見つめ直すことも大事だと思います」

そして、「『架空OL日記』の世界は、僕が思う理想的な女性の職場の空気」と言葉を続ける。

「仕事で大変なこともあったりするけど、なんとなくみんなが仲よくやっている。読者のみなさんには、OLたちの会話に参加しているつもりで映画を観ていただけたらうれしいです。それで、その中心にいる“私”を男の僕が演じているという狂気を定期的に思い出して、ゾッとしてもらえればと思います(笑)」


ばかりずむ●1975年11月28日生まれ、福岡県出身。『家事ヤロウ!!!』、『バズリズム02』、『有吉反省会』など多数のレギュラー番組で活躍するほか、ナレーターや俳優、脚本家などの顔も持つ。定期的に開催される単独ライブは発売と同時にチケットが即完売となるほどの人気を誇る

『架空OL日記』

【バカリズムさんインタビュー】映画『架空の画像_2
憂うつな月曜日の朝、銀行員OLの“私”(バカリズム)の1週間が始まった。眠い目をこすりながらもきちんとメイクをし満員電車に揺られて会社に着くと、今日も更衣室で同期のマキ(夏帆)や先輩後輩とのおしゃべりに花が咲く。●公開中
©2020「架空OL日記」製作委員会
取材・原文/吉川由希子 撮影/北浦敦子 ヘア&メイク/有馬妙美 スタイリスト/高橋めぐみ