初の小説『むき出し』が話題! お笑い芸人・兼近大樹が語る“今の社会について感じていること”

2021年10月に初の小説『むき出し』を生み出したEXIT・兼近大樹さん。作品の中で表現したかったことや、今の社会について感じていることとは? 兼近さんの本への愛や、執筆中のエピソードをお届け。さらに、女性の悩みに対して優しさにあふれる回答もいただきました! 彼の魅力がたくさん詰まったインタビュー特集です。
インタビューに応じる笑顔のEXIT兼近大樹
EXIT 兼近大樹
かねちか・だいき●1991年5月11日、北海道生まれ。人気お笑いコンビ「EXIT」として活動中の漫才師。ニュース番組のMC、音楽活動など、型にはまらぬ表現はいつも話題の的。
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[目次]
  1. 【EXIT兼近大樹インタビュー】初の小説が発売!彼の“本への愛”とは?
  2. 【EXIT兼近大樹インタビュー】執筆中に苦労したことは?
  3. 【EXIT兼近大樹インタビュー】『むき出し』に込めた想いは?
  4. 【EXIT兼近大樹インタビュー】女性の悩みに真剣回答!

【EXIT兼近大樹インタビュー】初の小説が発売!彼の“本への愛”とは?

初の小説『むき出し』 兼近大樹 著

EXIT兼近大樹著「むき出し」
主人公「石山」に大きな影響をもたらした人々との出会い、そして成長してから自らの過去をどう 受け入れるか、その過程が鮮烈な言葉で描かれている。(文藝春秋 ¥1760) 
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本と出合い、「嫌いな自分を変えたい」と思った

横から見た兼近大樹
兼近「読書に関してはわりと雑食でいろんな本を読むんですけど、基本的には人からすすめられた作品を読むことが多いし、周りにオススメを聞くのも好きなんですよ。よく“本棚を見れば、その人がわかる”と言うけれど、すすめてくれる本からもその人の価値観や人生観みたいなものが見えてくる。だからこそ、選ぶ時はいろんなことを考えると思うんですよ。作品自体を楽しむのはもちろん、“この人は何を考え思いオレにこの本をすすめたのか?”と想像をふくらませながら読むのも意外と楽しかったりして(笑)」

ーーその派手な外見やチャラい芸風とは裏腹に、実は“読書家”としても知られる兼近さん。

兼近「本を読み始めたのは20歳くらい。僕、読書デビューは遅いんですよ。本を読み始めたのは、たまたま知り合いからもらった又吉直樹さんの本『第2図書係補佐』がきっかけで。その一冊から本の読み方や楽しみ方を教えてもらって。そこからいろんな作品を読むようになったんです」

ーー兼近さんが感じている本の魅力を知りたくて「本に出合い、人生は変わりましたか?」と尋ねると、返ってきたのは「変わったというか、変えようと思うようになりました」という言葉だった。

兼近「まず、本に出合って世界がすごく広がったんですよ。それまでは“自分ルール”みたいなものをつくり、守りながら生きていたんですけど、本を通じて沢山の人の言葉や価値観に触れて、世の中にはいろんなルールがあるのを知ることができたので。自分だけの凝り固まった考え方じゃなくて、いろんな視点で考えることができるようになったし、考えようと思うようになった。こっちもある、あっちもあるって、自分の中に引き出しをいっぱいつくることができたんですよね」
見上げて笑う兼近大樹
ーー世の中の流れに対して「こっちもあるよ」「あっちもあるよ」と様々な角度で言葉を投げ掛ける、最近は兼近さんの発言がニュースになりネットに流れてくることも。

兼近「まあ、あれは現場で感じた“この意見、誰も言ってなくない?”を僕が言っているだけなんですけどね(笑)。やっぱり、一つの意見だけに集中すると偏ってしまうというか。何かを伝えるための番組で、偏った意見だけを発信し続けるのは違うんじゃないかなって。たとえ、それが大多数の意見であっても“こういう見方もありますよね”って誰かが逆の意見を言わないと、少数派の意見が潰れてしまう。それは決して公平ではないと思うので」

ーーそんな発言ができるのも「本を通じていろんな世界を見ることができたからなんだと思う」と兼近さんは言葉を続ける。

兼近「本はいろんな角度からの物の見方を届けてくれるんですよね。ただ、僕が自分で選ぶのは”興味があるもの”だけ。だから、掛け算はまともにできないくせに、やたら世界情勢のことは知っていたり、僕は僕で知識の偏りがエグかったりもするんですけどね(笑)」

ーーその“興味のあるもの”について尋ねると、こんな答えが。

兼近「世界や社会の仕組みだったり、あとはやっぱり“人”なのかな。僕、エッセイをよく読むんですけど、他人が何を考えているのか、その価値観や思いに触れるのが好きなんですよね。人に興味があるのは……自分を知りたいから、自分を好きになりたいからなのかもしれない。僕は本当に自分のことが嫌いだったので。自分の人生も、考え方も、外見も、なにもかもがずっと。周りによく見られたいし、自分のこともよく見たい、だから人が何を考え思っているのかに興味があるのかもしれないですね」

【EXIT兼近大樹インタビュー】執筆中に苦労したことは?

いやー、執筆は本当に大変でしたね(笑)

椅子に座って正面を見る兼近大樹
――兼近さんが初めて書いた小説『むき出し』は発売と同時に大きな話題に。MORE本誌(1月号・11月27日発売)では今作を書こうと思ったきっかけから物語に込めた想い、そして、執筆の苦労までたっぷり語っていただきました。

兼近「いやー、執筆は本当に大変でしたね(笑)。この本は7〜8年前から構想をスタートさせて、約2年前から本格的に書き始めたんですけど。最初はすごい量になっちゃって。それをどんどん減らしながら書き上げていったんですよ。やっぱり、分厚い本を読むときって“だりーな”と思っちゃうじゃないですか。僕自身がずっとそういう人間だったんで。そんな自分みたいな人にも読んでもらいたい思いがあったからこそ、手に取りやすい厚さにしたくて」

ーー芸人として忙しい毎日を送っているだけに、いつ小説を書いていたのかも気になるところ。

兼近「そこは会社にお願いして空き時間をつくってもらったんですよ。夜、書ける時間を空けてもらったり、5日間くらいホテルにこもってウワッと書いたり。俗に言う“カンヅメ”ってやつですね。あの時間はちょっと気持ちよかったです。オレ、作家みたいじゃんって(笑)。思うぞんぶん原稿用紙に向き合える幸せな時間でしたね」

ーー実はちゃんと文章を書いたのは小学生の作文以来。「学びながら書いた」約2年間だったとか。

兼近「『むき出し』は主人公の石山の成長物語でもあるんですけど、それを書きながら僕自身も成長しました(笑)。だから、作品が一度完成した時も序盤を書き替えたんですよ。最初と最後では僕自身の文章力も変わっていたので。書くのは大変だったけど楽しかった。今作は石山の成長と共に、読んでくれている人の思考も広がる小説にしたくて、幼少期の文章は子供っぽく、思春期では厨二病っぽい文章をイメージしたり……実は文体もちょっと変えていたりして。これはもう自己満足でしかないんですけど、そんなこだわりも結構詰まっているんですよ」

周りが求めてくれるのならば“二冊目”もあるかもしれない

振り向く兼近大樹
兼近「タイトルを『むき出し』にした理由は、まず目に留まるものにしたかったっていうのと、主人公の、すべてを曝け出して生きている姿を描いているのと、そこにはやっぱり自分の想いや考えも出ていると思うのでいろんな意味で『むき出し』がベストだと思ったんです。なかには、僕のことが嫌いで“嫌いなところを見つけてやる!”って、この本を手に取る人もいるかもしれない。でも、それでいいと僕は思っているんです。読んでもらえたら、何かを感じてもらえたら、考えるきっかけになったら……それだけでうれしいと僕は思っているので」

ーー「こっちもあるよ」「あっちもあるよ」と自分以外の視点を届け、兼近さんの世界を広げてくれた本。「誰かにとって、今作がそんな一冊になれたらうれしい」と兼近さんは微笑む。

兼近「MOREの本誌インタビューでもお話したんですけど、目の前にいる誰かのことを、目の前にある世界のことを、考えるのってすごく大事なことだと思うんですよ。僕ひとりの力では世界を変えることはできないけれど、変える力をもった人たちの手助けをすることはできる、何かを考えるきっかけを届けることはできるかもしれない……。主人公の石山は自分なりのヒーロー観を持っている男なんですけど、僕にもやっぱりそれはあって。子供の頃は石山みたいに“オレだ!”“ついて来い!”という“オレがオレが”な感じだったんだけど、大人になった今はそれが“誰かを助けることができる人になりたい”に変わった。”オレ”ではなく”誰か”、”ついて来い”ではなく、”ついて来れない人にもちゃんと目を向けることができる”人間でありたい。それが今の僕のヒーロー像なんです」

ーー大きな話題を呼んでいる初作品。最後に「この先も、兼近さんは小説を書き続けるのか」と質問してみると、こんな答えが返ってきた。

兼近「僕の中で芸人の仕事と書く仕事はまったく違うものなんです。正直、芸人をやっているほうがめちゃくちゃ自分らしくて。やっぱり客前に立っている時が一番“自分やってるな”って感じるんです。それに比べると小説は第二人格というか、違う自分をおろして書いている感じで……疲れるんですよね(笑)。だからこそ、”あの疲れと苦しみをもう一度味わうのか”と考えると、“味わいたくない”と思う自分と“味わいたい”と切望している自分がいて。最近は、その違うふたりの自分の入れ替わりが激しい日々なんですよ(笑)。二冊目に関しては、もしも本がめちゃくちゃ売れて、周りから求められたら……。でも、期待されるのも苦手なんですよね、オレ(笑)。もし、書くとしたら、今度は全然違う話を書きたいなと思っていて。地下アイドルの話なんですけど……」

ーー消極的なのかと思いきや、次から次へとあふれ出してくる“二冊目”の構想。作家・兼近大樹が次作を書き始める日は意外と近いのかもしれない。

【EXIT兼近大樹インタビュー】『むき出し』に込めた想いは?

芸人になり小説を書く。それが僕の夢だった

遠くを見つめる兼近大樹
兼近「子供の頃はとにかく活字が嫌いで。読むのは絵で楽しめるマンガだけ。僕、大人になるまで本をまともに読んだことがなかったんですよ」

そう語る兼近さんが本を読み始めたのは二十歳を超えてから。読書の魅力を教えてくれたのが、又吉直樹さんの『第2図書係補佐』だった。

兼近「作品を通して又吉さん自身のこともつづる、エッセイであり書評本のような一冊なんですけど。僕はこの作品に“本の読み方”や“本の楽しみ方”を教えてもらったんですよ。目の前でキャラクターが動くマンガは読み方が固定されているけれど、小説は自分の想像力で世界が広がる、自由に読み方を決めることができる。その面白さに夢中になって、そこからいろんな本を読みました。それこそ、ミステリー小説から自己啓発本まで。周りから“なんだそれ?”って言われるようなものまで手当たり次第に読みましたからね(笑)」

生まれ育った北海道を飛び出して上京したのは、本と出合ってから間もない頃。当時の夢は「お笑い芸人になって小説を書くこと」だった。

兼近「僕の読書の歴史が又吉さんの作品からスタートしているっていうのが大きいと思うんですけど。あの頃は面白い人が本を書くのが当たり前だと思っていたんですよ。でも、それは決して当たり前でなく、それどころか、芸人がお笑い以外のことをしようとすると世間の風当たりは強くなるっていう。そんな現実を知ったのは東京に出てきてからなんです」

それでも「いつか小説を書きたい」という思いが消えることはなかった。その夢を叶えるべく執筆した小説『むき出し』。大きな話題を呼んでいる今作の構想も7〜8年前からすでに練っていたそうだ。

兼近「吉本の養成所に入った時には“いつか世に出ることができたら、これを書きたい”とずっと思っていました。ただ、頭の中に構想はあっても、それを文章にする技術がなくて。本格的に書き始めたのは2年前、又吉さん経由で『文藝春秋』の編集さんを紹介してもらってからなんです」

自分の中からあふれ出る言葉をスマホに打ち込んだ、記念すべき初稿は原稿用紙500枚分もあったとか。

兼近「って言うと、スゲー大作みたいに聞こえると思うんですけど、内容はメチャクチャで(笑)。それこそ、文章をまともに書いたのは小学生以来、卒業作文みたいなのを書いたのが最後。そこから、いきなり小説を書き始めたので。編集さんに句読点の打ち方から教えてもらう、みたいな(笑)。そんな“ほぼ家庭教師生活”を送りながら、今まで読んだ小説を“書く”視点で読み返して研究したり、執筆だけでなく勉強込みの約2年間。それはもう、気が遠くなるような作業でしたからね(笑)」

幼い頃から感じていた目に見えない“階層”

作中には兼近さんの遊びが詰まったギミックやこだわりが。それについて語りだすと、次から次へと止まることなく言葉が飛び出す。その姿からは「大変だった」と言いつつも楽しんで書いたことが伝わってくる。

兼近「小説『むき出し』は主人公・石山の成長を描いた物語なんですけど。執筆作業の過程でリアルに僕自身も成長させていただきました(笑)」

そう笑う兼近さんに今作のテーマを尋ねるとこんな言葉が返ってきた。

兼近「本に出合う前の僕は“線引き”をしていたと思うんです。たとえば、この人は真面目に生きている人、この人はお金持ちの家に生まれた人とか。それこそ、漢字もまともに読めないオレが小説を書いている人とつながるわけがないって思っていたしね。でも、本を読むと、生まれ育った環境や年齢や国籍が違っても“同じことを考えているんだ”という共感に出合ったりするんですよね」

兼近さんが書きたかったのもそんな線引きされた世界について。

兼近「僕がイメージしたのは“階層”なんです。自分が生きている世界が3階だとしたら、その上には何十も何百もの階があって、見下ろす人もいれば見上げる人もいる。上から“元気?”と手を振ってもそこには確実に段差があって、誰かがハシゴをかけない限り別の階に行くことはできない。僕たちはいくつもの階層で隔たれた巨大なビルの中で生きている、それは子供の頃からずっと感じていたこと。そう感じたのはきっと、僕自身が裕福じゃない家庭で育ったのも大きいんだと思う。なんとなく、周りの友達に合わせることはできるけど、育てられ方や身につけている武器、話す内容が違う……。巨大なビル全体のルールはあるものの、その階層ごとにまたルールや正義が変わってくる。それを伝えたくて、階層と階層をつなげるハシゴになりたくて、自分が今いる場所が世界のすべてでないことを知ってほしくて、僕はこの小説を書いたんだと思う」

考え想像することが世界を変える一歩になる

笑顔の兼近大樹
兼近さん自身“本”というハシゴを通じていろんな階層をのぞき見て、さまざまな価値観や考えに触れながら自分の世界を広げてきた。今作も「誰かのそんな一冊になれたら」と語る。

兼近「この作品の受け止め方は人それぞれだと思うんです。あくまでも小説という創作物ではあるものの、主人公の石山に僕を重ねて読む人もいると思う。そこで“最低だな”とか“クソだな”とか思ってもらっても全然いいんです。何かを考えるきっかけになったら、読んだ人の中に思考のカケラを残すことができたら、僕は大成功だと思っているので」

大事なのは考えること。「それが世界を変える小さな一歩になると思う」と兼近さんは言葉を続ける。

兼近「学校に通っているとひとりはいたと思うんですよ。“なんだコイツ”っていう友達が。それを“嫌い”“苦手”“知らねーよ”で終わらせることもできるけど、そうじゃなくて、“この子はなんでこうなんだろう”と想像する力を子供の頃から学ぶことができたら……。オレ、めちゃくちゃ世界が優しくなると思うんです」

その優しさもまた、今作を通して兼近さんが届けたかったもの。

兼近「たとえば、世の中で悲しい事件が起きたとする。すると、事実だけを伝える報道を見た人たちは“こんな人間にならなくてよかった”とか“こいつの友達もヤバいんだろうな”とか、加害者やその周りにいる人たちまで攻撃してしまうことがある。そこに至るまでのストーリーを知ったら、その背景に触れたら、今口にしている言葉は変わってくるかもしれないのに。特に今はSNSという匿名でできるツールがあるから。同じように、遠くにいる人から近くにいる人に対してまで、心ない言葉を投げかけてしまうこともある。まだ起きてもいない未来に不安を抱いたり、見えない人の心を勝手に決めつけて悩んだり、考えてもしかたのないことを妄想する力はやたら豊かなのに。目の前にいる人のこと、目の前にある世界のこと、ちゃんと向きあうべき今を想像する大切な力がすごく足りない気がするんですよ」

気づかれない優しさで世の中はできている

インタビュー中、兼近さんが何度も口にした“優しさ”という言葉。

兼近「優しさっていろんなカタチがあると思うんですけど。僕個人が大切にしているのは“気づかれない優しさ”なんです。たとえば、電車で席に座らずに立っている。すると、それを見つけた人はラッキーとあいてる席に座ることができる。誰もそれを僕が意図してやっているとは気づかないけれど誰かを幸せにすることができる、そんな距離感の優しさが僕は好きで。意外と社会の仕組みも同じだと思うんですよ。子供が無邪気に日々過ごせるのは、大人たちが子供が幸せに生きるための基盤をつくってくれているから。当たり前だと思っているものは誰かの努力や優しさでできていたりする。思春期には“こんな世の中はクソだ”とか言いがちだけど、その世の中だって先人や大人のひとりひとりが歯車になってつくり上げてくれたものですからね」

優しさが足りない現代。でも「優しくなくてイヤだなとか、優しくなれとか、そういうことは思わないようにしている」と兼近さんは言う。

兼近「それはオレ個人のエゴでしかないから。自分の定規で世の中を測るのは想像力が足りないし優しくないですよね。だから、この本も考えるきっかけになったらいいなとは思っているけど“優しくなれ”とは言いたくないんですよ。本を読んで“優しくなりたい”と思った人に何かアドバイスするなら? それはもう、そう考えた時点で優しくなれていますよね。道、たどっていますよね。アドバイスではなくオレは“おめでとう”と言いたい。あなたはもうなりたい自分になれていますよって!!」

【EXIT兼近大樹インタビュー】女性の悩みに真剣回答!

息苦しい世の中に、兼近大樹が今伝えたいこと

手を伸ばす兼近大樹
生きづらいこんな世の中だからこそ、悩める20代女子たちに兼近さんが届ける、優しさにあふれた前向きなメッセージ集。

【女性の悩みに兼近大樹が回答】——他人と比べてしまう

「他人のキラキラした姿や生活を目にして『いいなぁ』と思うことは僕もあります。でも『その人になりたいか?』と考えたら答えは『NO』。キラキラ人生を生き続けるのも、それはそれでキツいと思うから。SNSの一枚の写真、テレビの数分の映像、友達のプチ自慢……。その人の表側だけを見てすべてわかった気になってはいけない。裏側ではどえらい苦労を積み重ねているかもしれませんよ」(兼近さん、以下同)

【女性の悩みに兼近大樹が回答】——自分のことが好きになれない

「『誰かのために何かをする』に幸せを感じる人、『誰かに何かしてもらうこと』に幸せを感じる人、人間には2種類のタイプが存在すると思うんですよ。自分が前者だと気づけば“誰かのため”が苦痛じゃなくなる。『したいことをしている』喜びをちゃんと感じることができる。大事なのは自分と対話して自分を知ること。そうやって自分を満たすことが“好き”につながるんじゃないかな」

【女性の悩みに兼近大樹が回答】——人を許せない

猫飼ったらいいんじゃないですか? 人を許せないのはきっと自分のルールや常識を相手に押しつけているから。それって、泣き続ければ欲しいおもちゃが手に入ると思い込んでいる子供と同じだと思うんですよ。まずは思いどおりにならない物ごとがあることを知る。そのためにはまず、猫かなって(笑)

【女性の悩みに兼近大樹が回答】——将来が漠然と不安

横を見る兼近大樹
「僕は『明日死んでもいい』という感覚で生きているんですよ。5年後、10年後のことを考えると『お金貯めなきゃ』とか、『この人と仲よくしとかなきゃ』とか不安やムダな忖度が生まれる。でも『明日で終わり』と考えればそんなよけいなものがなくなる。この先、何が起こるかなんて誰にもわからないんだから。『ちゃんと楽しんで生きているか』、『やりたいことができているのか』。未来を怖がるよりも、今を怖がったほうがいいと僕は思うんです」

【女性の悩みに兼近大樹が回答】——仕事、お金、恋人……今、持っているものを失うのが怖い

時間は流れていくから『ずっと同じ』はありえない。なのに、失うのが怖いからと必死に手にしているものを守り続ける。僕はそっちのほうが『怖い』と思ってしまいます。恋人を失った時にひとりの楽しみに出合えるかもしれない。仕事を失った時に自分に合う天職に出合えるかもしれない。守り続けることで失っているもの、あるかもしれませんよ?

【女性の悩みに兼近大樹が回答】——嫌われてしまいそうで本音を言えない。「私には本当の友達はいないんじゃないか」とたまに孤独を感じてしまいます

友達とわかりあえているかどうか確認する方法なんてないんだから。『私たち、わかりあえているよね♡』でいいんですよ(笑)。『嫌われたくない』気持ちは僕もよくわかるけど、相手が歩み寄っているのに自分が後退したら距離は縮まらない。大事なのは『相手を理解しよう』と歩み寄る気持ち。相手が一歩下がったら『なんで下がったんだろう?』と理解するためにもう一歩進んでみる。そうやって、人との距離は縮まっていくんじゃないかな」
撮影/吉田 崇 ヘア&メイク/KOKI NOGUCHI(TRON) スタイリスト/庄 将司 取材・原文/石井美輪 構成・企画/芹澤美希(MORE)