12星座全体の運勢

「新たな習慣、新たな取り組み」

10月8日を過ぎると二十四節気では「寒露」に入り、晩秋を迎えます。「晩秋」というと、どこか寂しさをそそりますが、旧暦の時代には10月のことをさまざまな言い方で表してきました。

例えば、稲を収穫することから「小田刈月(おだかりづき)」、また菊も咲き始めるので「菊月」、木の葉が染まり出し、梨や柿や金柑など、さまざまな果実も実りのときを迎えていくので「色取月(いろとりづき)」など。

まさに心豊かに過ごせる時期と言えますが、そんな中、10月17日にはてんびん座で新月を迎えていきます。今期のテーマは「蝶の第三の羽」。

蝶は古来より「霊的な復活のプロセスの結末」を表すシンボルであり、二枚の羽の代わりに三枚の羽を持っているなら、霊的生活の観点において特別な発達があったことを示していますし、また「3」という数字は「充足」の象徴でもあります。

すなわち、合理的知性では説明がつかない新たな可能性を秘めた習慣や試み、突然変異的な取り組みを生活の中に取り込んでいく機運が高まっていきやすいタイミングなのだと言えるでしょう。

充実した秋の夜長を過ごすべく、これまでは手が伸びなかったような新しい何かに打ち込んでいくのにもうってつけかも知れません。

獅子座(しし座)

今期のしし座のキーワードは、「我を忘れる瞬間」。

獅子座のイラスト
鎌倉時代に踊り念仏を広めた一遍上人は「捨てることを捨てよ」と説きましたが、ほぼ同時期のドイツに生きた大神学者で「ドイツ神秘主義の源泉」と言われるマイスター・エックハルトもまた<内なる貧しさ>という言い方でそれに相通じる教えを説いていました。

いわく、積極的な意味での<貧しさ>には二種類あり、一つは<外なる貧しさ>、つまり物を所有することなく文字通り貧しく生きようとする生き方。

そして<外なる貧しさ>よりもっと本質的なものが<内なる貧しさ>で、これは所有の真っ只中にあって、しかもその所有関係の囚われから自由であるような人間の在り方のことを言うのだ、と。

エックハルトによれば、どんなに懺悔や祈りや徳の修練を行って「聖者」と呼ばれるようになったところで、まだ本人のなかに神に愛されようという意志がまだ残っているかぎり、<外なる貧しさ>にとどまるのであり、それは「内から見れば愚かなロバでしかない」のだとまで言うのです。

すなわち、いくら物質的な所有物を捨てても、おのれの意志を捨てなければ無にはなりきれない、つまり神と一つにはれないのだということですが、これは仏教における「仏道をならふといふは、自己をならふということなり。自己をならふといふは、自己をわするるなり。自己をわするるといふは、万法に証せらるるなり」という教えとやはり不思議に一致してくることに気が付きます。

今期のしし座もまた、そうした不意の一致のなかで、自意識を忘れ、意志を捨てられる瞬間を一秒でも長く感じられるようにしていくことで、人間としてのより自由な在り方を深めていくことができるかどうかが問われていくでしょう。


参考:田島照久編訳『エックハルト説教集』(岩波文庫)、頼住光子「正法眼蔵入門 」(角川ソフィア文庫)
12星座占い<10/4~10/17>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ