12星座全体の運勢

「何かが“やってくる”まで」 

二十四節気でみると10月23日の「霜降」と11月7日の「立冬」のちょうど中間にあたる10月31日の深夜におうし座満月を迎えていきます。 

 霜降とは、これまでと明らかに空気が変わって、露が凍って霜になり始める頃合いで、「立冬」はいよいよ冬の到来ですが、今回の満月もまさに時代の移り変わりを体感していくような特別なタイミングとなっていきそうです。 

 というのも、今回の満月は牡牛座の天王星と正確に重なっているから。天王星は「既存の構造からの逸脱と変革」の星ですが、これは今年から来年へ向けて既に起きつつある大きな流れを象徴する雰囲気の根底にあるもの。そして、今回のテーマは「予測不可能なものの到来」。 

 将来に備え、ただ現実的なコストを算出したり、リスク回避に励んだり、身を固めていくだけでは、何かが決定的に足りない。ただし、その「何か」というのは、日常という固いアスファルトがめくれるように、これまで疑われることなく固定化されてきた文脈にずれが生じなければ、けっして到来することはありません。 

 その際、鍵となってくるのは、ちょっとした違和感をスルーせずに育てていくこと。月がまんまるに膨らみきっていくまでは、分かりやすい解答を求めたり、そこに安住するのではなく、「あえて」「今さら」「あらためて」というひと手間や余計なプロセスを大切にしてみるといいでしょう。

蟹座(かに座)

今期のかに座のキーワードは、「ヒトの存在理由」。

蟹座のイラスト
1917年ロシア革命で「賦役(チェコ語でrobota)を負うもの=無給労働者」が解放された3年後の1920年に発表されたのがチェコの作家カレル・チャペックによる戯曲『ロボット』でした。 
 
その序幕、大富豪の娘ヘレナがアメリカのロボット製造会社を見学する。人間を労苦から解放するという理想の実現のために、「感情」のような不要な機能を除去し、人間に代わる労働者として大量生産されたロボットは、金属性ではなく有機物の化学処理によってコーティングされているという説明があり、唐突に工場の運営会社の社長がヘレナに求婚するところで幕を閉じる。 
 
しかしその10年後、人間の労働力が不要になったために全世界的に人間の不妊が広がり、ロボットの「人類絶滅」をめざす反乱が始まり、ついにロボットが「人類の時代は終わった」と宣言するに至るのです。 
 
今後ロボット化が禁止されていく可能性が高い領域を、チャペックの戯曲からあえて推測すれば、それは「家族愛」に関与する領域なのではないでしょうか。 
 
妊娠・出産もまた特殊なリスクが想定される営みですが、それが育児・教育にまでなだらかに広がっていく過程で総体的に成立していく家族的コミュニティの形成までロボット化の可能性を考えてみると、そこには「業務」や「機械的命令と実行の反復」によっては決して成立しえない“何か”が含まれているように思えるからです。 
 
現代では人間は「自分にしかできない仕事や役割」を自分の社会的アイデンティティとしていますが、将来的には「人間にしかできない営みや役割」を自身の存在理由として追求するようになる時代がそう遠くない未来に訪れるのかもしれません。 
 
今期のかに座もまた、そうした中長期的視点から今後自分が追求していくべき仕事や役割、あるいは営みについて考えてみるといいでしょう。 
 

参考:カレル・チャペック、千野栄一訳『ロボット』(岩波文庫) 
12星座占い<10/18~10/31>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ