12星座全体の運勢

「雪が花に変わるとき」

11月22日の「小雪」を過ぎれば、もう雪の季節。「一片飛び来れば一片の寒」と言うように舞いくる寒さに本格的に備え始めるこの頃には、こたつを導入したり暖房を入れ始める人も増えてくるはず。 

そして11月30日には、静かに深まってゆく冬の夜に双子座の満月を迎えていきます。今回のテーマは「緊張の中にあるゆるみ」。精神を鋭敏に研ぎ澄ましていくなかで訪れる一瞬の静けさ、そして平穏。それは瞑想の境地が深まったときの感覚にも似ています。初めは雑念ばかりが浮かんで、かえって心が騒がしく感じたり、眠くなってしまったりしていたのが、自然と頭が消えて胴体だけになったように感じてきて、意識は活動しているのに、何かを「志向する」ことなしにいられる「非思考」状態に入っていく。 

禅ではこれを「自分自身の『私』を忘れる」とか「非思量」などと言うそうですが、それはどこか「風花」というこの時期の季語を思わせます。風花とは風に運ばれてちらちらと舞う雪のかけらのことですが、あっけないほどのはかなさで消えていく雪片に、ひとつの花を見出していくのです。それはすべてのものに命があると考えていた日本人が、厳しい冬の訪れにも愛おしむような気持ちを向けていたことの何よりの証しでしょう。 

今回の満月でも、集中力を高めて厳しい現実や人生の課題(雪片)と向かい合っていくことで、そのなかに隠された恵みや喜び(花)を見出していくことができるかどうかが問われていくはず。

蟹座(かに座)

今期のかに座のキーワードは、「後悔しないために」。

蟹座のイラスト
画家のポール・ゴーギャンと言えば、19世紀末のパリで新しい画壇の指導者的存在と見なされていたにも関わらず、ヨーロッパを逃れてオセアニアのタヒチ島に飛び出し、現地で牧歌的生活を送ったイメージが浮かびます。 
 
しかし、実際にはオセアニアでは度重なる妻との別離や、健康状態の悪化、隣人とのいさかい、名誉棄損での有罪判決など、波瀾に満ちた生活を送り、晩年は孤独な日々を過ごし、急死した後もその報は母国に届かず、遺言もなかったため、家財はほとんど売り払われてしまったのだとか。 
 
彼が自分の死期が近いことを悟ってから書いた回顧録風のエッセー集には、実に味わい深い文章が数多く収められているのですが、中でも「人生とは」という野暮ったい表題が付けられた章には、率直にその生きざまのエッセンスが込められているように思います。 
 
冒頭には「人生とは、人がそれを意志的に実践するのでなければ、少なくともその人の意志の程度にしか、意味を持たないものだ、と私は考えている。美徳、善・悪などはことばである。もし人々が、それを挽き砕いて建物をたてるのでなければ、(中略)意味を持たない」とあり、続いてあっちこっち矛盾する述懐をこねくりまわした後に「私はときには善良であった―私はそのことで得意になりはしない。私はしばしば不良であった―私はそれを後悔しない」と爽やかに結んでみせるのです。 
 
それはヨーロッパ文明の人工的・因習的な何もかもから脱出せんとしたゴーギャンがたどりついた、自然で未知に取り囲まれたありのままの生の姿だったのではないでしょうか。 
 
今期のかに座もまた、いったんは破綻し、当たり前のようにあった現実が壊れてしまったその跡地でこそ、ゴーギャンが掴み取ったような自然体な生が立ち現れてくるのだということを実感していけるはず。絵に描いたような「ことば」ではなく、それを噛み砕いた自分なりの実感を大切にしていきたいところです。 
 

参考:ゴーギャン、前川堅市訳『ゴーガン 私記』(美術出版社) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ