12星座全体の運勢

「見通しを立てる」 

春の山笑う季節から徐々に初夏の緑したたる季節へと移り変わりゆく「穀雨(こくう)」を迎えていく直前の4月17日には、てんびん座26度(数えで27度)で満月を形成していきます。 

そんな今回の満月のサビアンシンボルは、「明るく澄んだ空を高く飛ぶ飛行機」。すなわち、この世の向こう側から、この世この生を見つめ直していくこと。 

とくに、「死と再生」を司る冥王星と「伝統と秩序」を司る土星を巻き込む形で形成される今回の満月では、自分の置かれた状況の整理し、合意的現実や幻想から自らの意志で抜け出ていく準備をしていくだけではなく、その全体像やあらましを俯瞰し、今起きている危機や変化がどのようなものか、あらためて対象化し、見極めていくことが目指されます。 

ちょうど今回の満月が起きる頃合いを、日本の七十二候では「虹始見(にじはじめてみる)」といい、まだ淡く、すぐに消えてしまう春の虹が空に大きくかかっているのを見ることができるようになってきます。 

今期はいわば、そうした虹の視点からこの世を振り返るようにして、今自分が演じている「人生というお芝居を客観視していくこと」がテーマとなっていくでしょう。 

その際、自分はどんなプロットやストーリーを生きていて、起承転結のうちどのフェーズにいるのか、そしてそこで過去の世代の取り組みや努力、他の人たちとの協力にいかに支えられているか。また、重要な共演者は誰で、どのような関係性にあるのか、そして劇において重要な役割をはたす舞台装置は何か、といったことをよくよく確かめていくことで、人間の問題に対する新しいパースペクティブを手に入れていくことができるはず。 
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山羊座(やぎ座)

今期のやぎ座のキーワードは、「義の心」。

山羊座のイラスト
自分が背負わなければならない任務や命令を重んじ、それを果たそうとする気持ちのことを、私たちは一般的に「責任感」と呼んでいます。バブル崩壊から「失われた30年」を経たいま、右肩上がりの経済成長など、戦後世代と同じような意味での「輝かしい未来」が不可能になってしまったことが誰の目にも明らかになりつつあるなか、多くの日本の若者が日本社会の未来に責任感を抱こうとしても抱けないとしても、それはごく自然な展開であるはずです。 
(日本財団が2019年に各国の18歳1000人に行った調査によれば、「責任ある社会の一員」と考える日本の若者は約30~40%と他国の3分の1から半数近くにとどまったという) 
 
ただそこには、昨今の自己責任論に見られるように、私たちがいつからか「責任」という言葉を、問題が起きたときの「誰のせいなのか」という声に象徴される帰責性の代わりに使うようになってしまっているという事情も大きく関与しているのではないでしょうか。 
 
ここでいう「責任」とは、強い禁止をその裏に含む英語の「duty」ではなく、「responsibility」のことで、これは「応答」を意味する「response」から来ており、つまり、責任とは応答することと深く関係していることになります。ところが、上で言及した「誰のせいなのか」と問われたときに手をあげるような意味での責任は、決して能動的に、心が自然と動いて取られるようなものではなく、むしろその逆のはず。なぜこうなってしまったのでしょうか。 
 
この点について、まさに画期的な議論を展開しているのが、哲学者の國分功一郎と当事者研究で知られる医師の熊谷晋一郎です。彼らは『<責任>の生成』において、「責任」というものがきわめてネガティブな意味合いで使われるようになってしまった要因は、「意志」という概念との強い結びつきにあると述べた上で、次のように指摘しています。 
 
意志の概念を使ってもたらされる責任というのは、じつは堕落した責任なのです。本当はこの人がこの事態に応答するべきである。ところが、応答するべき本人が応答しない。そこで仕方なく、意志の概念を使って、その当人に責任を圧しつける。そうやって押しつけられた責任だけを、僕らは責任と呼んでいるのです。」 
 
では、別の「責任」があるとすれば、それはどんなものか。國分は「義の心」を挙げています。すなわち、人の道として当然行うべきことと知りながらそれを行わない訳にはいかないと心から“感じた”何かに出逢ったとき、人間は「義」というものを知り、それに応えようとするのではないかと。 
 
その意味で、4月17日にやぎ座から数えて「責任と役割」を意味する10番目のてんびん座で満月を迎えていく今期のあなたもまた、自分がどのような責任を担っているのか、改めて実感していくことになるでしょう。 
 
 
参考:國分浩一郎、熊谷晋一郎『<責任>の生成』(新曜社) 
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ