12星座全体の運勢

「いっそヒラリと宙返り」 

夏のじめじめとした暑さと梅雨の不安定な天候との合わせ技で、服装選びに悩む衣替えの時期に入った5月30日には、ふたご座9度(数えで10度)で新月を迎えていきます。 

サビアンシンボルは「アクロバット飛行」であり、これは自然のもっとも基本的な働きである"重力”に逆らう力を象徴化した度数です。 

すなわち、年齢を重ねるごとに身体は老化し、体力は落ち、新しいことに挑戦する気概も失せ、心身ともに昔とった杵柄にすがりつき、なるべく現状を維持することに心血を注ごうとする傾向にあり、こうした“重力”はしばしば呪縛ともなってしまう訳ですが、今回の新月ではそうした当たり前のように人生にふりかかってくる呪縛を、いかに解き放っていけるかがテーマになっていくのだと言えます。 

さながら、梅雨の不快な空気感を吹き飛ばす「青嵐(あおあらし、せいらん)」という季語が、青葉を吹きわたる清らかな空気を意味するように、「この年齢ならば」「この立場ならば」こうなって、こうして当然という流れに反するようなアクションやチャレンジを取り入れ、停滞した人生状況に風穴をあけてみるのもアリでしょう。 

いずれにせよ、分かりやすいしがらみから思い切って離れ、地図にない未知の領域へと飛び込んでみることで得られる見晴らしは、あなたの人生をよりエキサイティングなものにしてくれるはず。 

とりわけ、剣の上を渡るとき、氷の上を行くときは。そぞろ歩きを諦めて、いっそヒラリと宙返り。今期はそんなアクロバットを決めていけるかどうかが問われていくでしょう。 
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山羊座(やぎ座)

今期のやぎ座のキーワードは、「うまくいく配置」。

山羊座のイラスト
「もし私たちが、人類の精神史を古代から参照しなおすならば、実に世界を「配置」として捉える思考方法が中心的であった期間は、世界を認識する意識的な「主体」が幅を利かせている期間よりも、ずっと長いことに気付かされる。」 
 
これはキリスト教思想研究者の柳澤田美の「馬に乗るように、ボールに触れ、音を奏でるように、人と関わる」という論文からの引用なのですが、人間は長らくたとえ内的必然性や情熱の高まりに頼る代わりに、「配置」、すなわち伝統的ないし普遍的な「型」や「脚本)」に則って世界への身の置き方を適切に態勢づけていくことで、みずからに必要な変化や成長を遂げてきたのだと言えるのではないでしょうか。 
 
この「世界は配置(disposition)であり、人間は自らを取りまく配置によってたえず態勢づけられている(disposed)」という柳澤の世界の捉え方は、「世界を認識主体の構成物あるいは表象として捉える近代的な世界観」を相対化していくためのアプローチであり、「①身体から独立した自己意識の優位、②心の私秘性、そして③効率化優先の自然科学的な世界観」を批判しつつ、「わたし」や「あなた」や「彼ら」などの特定の人称から離れた、非人称的な「うまくいく(going well)」が成り立つとき、そこで一体何が起こっているのかを明らかにする試みなのだと説明されています。 
 
この関わりの「程度」は完全に数値化できるものではない。そして既存の概念もまた、なかなかこうした「うまくいく」ための関わりを十分には言い表してはくれない。「調和」「統一」といった概念は、美学的でもあり倫理的でもあるが、いずれにしてもこれらは、全体において成し遂げられた構成(composition)に向けられた概念であり、あれとこれが「うまくいっている(going well)」ことを示すには不十分である。こうした事実を前に、「うまくいく」を言語化不可能なものとして認識の外部に置くのは、あまりにも口惜しいように思われる。確かにうまくいかない事態、しかもうまくいく可能性すら見出せない事態は枚挙に暇がない。しかし、このたくさんのうまくいかない状況にも拘らず、私たちは、あるいはサッカー選手たちや演奏家たちや(砂場で一緒に遊んでいる)子どもたちは、(…)確かに「うまくやってきた」のである。あたかも、蘭と自らの使命を知らずに蘭の受粉を手伝うスズメガのように。」 
 
このように、柳澤は「配置」というアプローチこそ、これまでの強い概念体系では捉えられなかった「幸福な倫理の可能性」に光が当てていくことができるのではないかと考えた訳ですが、自己自身の固有性を心のうちにばかり求めるのではなく、むしろ微妙な配置の仕方やその調整においてこそ求めていくという方針は、今期のやぎ座にもまさにうってつけと言えるのではないでしょうか。 
 
5月30日にやぎ座から数えて「セルフメンテナンス」を意味する6番目のふたご座で新月を迎えていく今期のあなたもまた、「うまくいく」ことに意識の焦点を起きつつ、身の振り方を調整していくことがテーマとなっていくでしょう。 
 
 
参考:柳澤田美『ディスポジション 配置としての世界』(現代企画室)
12星座占い<5/29~6/11>まとめはこちら
<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ