12星座全体の運勢

「淀みや停滞を吹き流せ!」

いよいよ梅雨が明け、本格的な夏の到来に向け日に日に太陽がパワーを増していく二十四節気の「小暑(しょうしょ)」に入るのが7月7日。そして今回はその直前にあたる7月5日にやぎ座で満月を迎えていきます。テーマは「禊ぎと祓い」。

 すなわち、すでに時代遅れで何の支えにもなっていない空っぽの言説や価値観に絡まったままもがき続けるのか、それともまやかしやごまかしを切り捨てたところに今後の活動の土台や、大切にすべき礎(いしずえ)を見出していけるか。いずれかに分かれていくことになりそうです。

 かつて7月は、涼しい風が吹くのを待つことから「風待月」とも言われたそうですが、今回の満月前後にかけては、自分の内部や周囲に漂うよどみや停滞、行き詰まり感をどれだけ爽やかに吹き流していけるかが問われていくでしょう。

蠍座(さそり座)

今期のさそり座のキーワードは、「弾力性を取り戻す」。

蠍座のイラスト
都会を逃れた田園生活での、自らの病的な心理や心象風景を描いた佐藤春夫の『田園の憂鬱』では、さまざまな川の描写が登場します。

そこでは「浅く走つて行く水」は、「ぎらりぎらりと柄になく閃いた」かと思うと、今度は「縮緬(ちりめん)の皺のやうに」という繊細なイメージに変わり、それらは交互にまじわって「小さなぴくぴくする痙攣の発作のやうに光つたりする」といった思いがけない描写が出てきます。

また、その一方で「流れ出て来た水」は、「うねりうねつて、解きほぐした絹糸の束のやうにつやつやしく、なよやかに揺れながら流れた」という描写も出てきて、こちらは「絹糸の束」というイメージに託してそこに穏やかな精神の流れが感じとられています。

こうした絶えず変転していく比喩の連鎖は、それ自体が佐藤の精神の不安定さを物語ると同時に、まったく自由に解き放たれた精神の伸びやかな可能性を書くことでみずから取り戻していかんとする作家としての意地をも感じさせます。

やはりピチピチとした精神の弾力性を取り戻していくことがテーマとなっている今期のさそり座にとって、こうした佐藤の自己蘇生への試みは大いに参考になっていくのではないでしょうか。


出典:『ちくま日本文学全集 013 佐藤春夫』(ちくま文庫)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ