2023年「モア・リポート」と並行して、性別を問わずジェンダーレスに20・30代の体験談を取材し、彼らの恋愛やセックスの本音に迫る「モア・ボイス」の連載。今回のテーマは、元セラピストの男性が語る、女性用風俗のリアルについて。

元人気セラピストが語る女性用風俗のリアル

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ーDATAー

竹内さん(仮名)30代 /未婚/男性

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女性用風俗(以下、女風)のセラピストとして5年間働いていた竹内さん(仮名)。女風には、20代から60代まで幅広い年齢の女性がさまざまな悩みや目的を持って訪れるという。竹内さんがセラピストになった経緯や、女性がどのような目的で女風を利用するのかについて伺った。

【まず前編を読む】元セラピストに聞く女性用風俗のリアル。利用者が求めるのは性欲よりも心の解放

女風は、非日常をお金で買うところ

元セラピストに聞く女性用風俗のリアル。利の画像_1

――女風を利用した女性は、利用目的を達成したり悩みを解消したりできているのでしょうか?

利用して目的を達成できたり悩みを解消できたり、「女性性の解放」ができて満足を得られたという声も多々ありました。でも、当初の利用目的から大きく外れて、セラピストに恋をして、女風に大金を使って借金をしてしまったり、昼間の仕事を辞めて高収入の夜の仕事をはじめられたりする方がいるのも事実です。


――女風は、心を解放できる場所であるがゆえ、セラピストに恋愛感情を抱く人もいるということでしょうか?

長い期間セックスレスであったり、久しぶりに男性と肌を重ねたり、自分好みの男性とお金を払えば簡単に触れ合える女風での経験は強い刺激になってしまって、セラピストに心と感情が持っていかれるケースがあります。 あくまでセラピストはお仕事で、女風はお金で「非日常体験」を買う場所です。「なんのために利用するのか」という目的を自分の中で明確に持ったうえで利用してほしいと思います。





――非日常であることを忘れずに利用することが大切ということですね。

はい。とはいえ、セラピストがLINEで甘々な彼氏のような文面で営業をかけることもありますから難しい部分はあるかもしれません。
本来、非日常であるはずのセラピストが日常に入ってきてしまうわけですから。やり取りの中でお客さんが「好きかも」「もっと会いたい」となってしまうことはよくあることです。



――セラピストを好きになってしまったら、どうしたらいいのでしょうか?

もちろん好きになることは悪いことではありませんし、ある種好きでないとお金を払って会いたいと思いません。ただ、もし気持ちや行動をコントロールや制御ができなかったり、大金を使い込んで悩んでいるならその状況を解決した方がいいと思います。現在、僕が元セラピストとして、女風利用者の女性から悩み相談を受ける際、セラピストを好きになってしまったという声はすごく多いです。




――そういう方にはどうアドバイスしますか?

あくまで女風は「自分のために利用するもの」です。主語が「セラピストが~」になってしまったら、何のために女風を利用しているのか? という最初の目的に立ち戻ってくださいとお話しています。


「会うのが義務になっていないか」「利用した後、苦しくないか」「セラピストに好かれるために、予約していないか」等、「女風利用する目的は自分の〇〇のため」ではなく、セラピストのために通うようになったなら、それは健全な状態とはいえません。


ただし、セラピストに恋をしている人全員が不幸せ、とも言えないケースも見てきました。

女風を利用した女性は幸せになれるのか

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――セラピストに叶わぬ恋をしたり、大金をつぎこむ行動は”不幸せ”な状態ではないのでしょうか?

もしかしたら周囲からは、“不幸”に見えるかもしれません。

だけど「こんなに誰かを好きになったのは初めてで、セラピストを好きになってから、人生が楽しいし、私は幸せです」とおっしゃっている方もいます。大袈裟かもしれませんが、この方にとってはセラピストとの出会いが生きる意味になったり、仕事を頑張るモチベーションになったり、日々の生活に彩りが添えられたかもしれません。


じゃあ、そのセラピストが辞めたらどうするの?とか、未来はわからないことが多いけれど、今の現状は“幸せな状態だ、と考えているそうです。





――幸せは個人の捉え方次第ということですね。

これは結婚が幸せかどうかの議論に近いものがあると思っていて。結婚は幸せになるための一つの手段や選択肢であって、結婚して結果的に幸せになった人、不幸せになった人もいます。

他人から見て、仮に不幸せそうな結婚をした人だって、本人が幸せだと思っていたらそれは幸せであるように、女風も最終的にはその人の捉え方次第で、幸せの基準が決まるような気がしています。

女風は選択肢のひとつ

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――竹内さんは現在セラピストを辞められていますよね。辞めた理由は?

辞めた理由はいくつかありますが、冒頭でお話しした性を通してでしか埋められない“何か”が満たされたからだと思います。


こんな自分に対してお金を払って会いに来てくれるお客様がたくさんいらっしゃったことも大きかったですが、お客さんからのたくさんの愛に触れて、愛を知れたことが一番大きかったと思います。





――セラピストを辞める時、お客さんと揉めることはありませんでしたか?

引退する一年前から「辞めます」と事前に伝えていましたし、僕もお客さんも心の準備期間を十分置くことで、揉めたりすることはありませんでした。




――現在竹内さんはSNSを通じて、女風の利用者の女性に対しての情報発信や質問を受け付けていますよね。その思いは?

現役の時からも行っていましたが、セラピストを引退したからこそ伝えられる女風の良い側面を知ってもらいたいという気持ちが強いです。だけど、今回お話ししたように、女風は密室で男女が2人っきりになるサービスです。安心安全が“絶対”ではなく、残念ながら女風を利用して辛い思いをしてしまう方もいます。





――竹内さんの元には、女風を利用した女性からの悩みも多く寄せられているそうですね。

最近特に女風が有名になってきて、良いところばかりフォーカスされがちですが、元セラピストとしては、女風の良いことだけを伝える、見せるのが優しさでも、正義でもないと思っていますし、今日お話ししたような辛い事実も知ってほしいと思います。


だけど、女風を利用し、異性への苦手意識やトラウマを克服したり、生きるのが楽になったり、女性として自信を持てたり、女性であっても男性のように性を謳歌することは悪いことではないんだと気付けたり……そういう方がいるのもまた事実なんです。

取材・文/毒島サチコ

女性も風俗に行くのが当たり前になる? 女性用風俗のリアルな裏側を描いた『真・女性に風俗って必要ですか?』著者が思うこと【モア・リポート79】
ライター・インタビュアー
毒島サチコ

MORE世代の体験談を取材した「モア・リポート」担当のライター・インタビュアー。

現代を生きる女性のリアルな恋愛観やその背景にひそむ社会的な問題など、多角的な視点から“恋愛”を考察する。