パラアスリート 谷 真海さんスペシャルインタビュー

パラスポーツ界の「顔」、谷真海さんが競技者として、またひとりの女性として大切にしている信念とは? 最新書籍への思いとともに聞いた。

「新しいチャレンジが、新しい自分の可能性に気づかせてくれる」

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PROFILE

1982年、宮城県生まれ。早稲田大学在学中に骨肉腫の発症によって右足ひざ下を切断。これまで走り幅跳び、トライアスロンでパラリンピック4大会に出場。サントリー所属
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「一度きりの人生を、自分らしく」

東京パラリンピックにトライアスロン競技で出場し、開会式で旗手も務めた谷真海さん。2004年に初の著書『ラッキーガール』(※当時は旧姓の佐藤真海)がモア編集部から出版された縁から、続編にあたる『切り拓くチカラ』が再びモアより刊行された。

「モア世代をずいぶん前に卒業しているので『私で大丈夫!?』とも思いましたけれど、約17年の時を経てまた自分の思いや生き方を知っていただける機会に恵まれて感謝の気持ちでいっぱいです」

谷さんは大学時代に骨肉腫の発症によって右足のひざ下を切断。逆境を力に変えて走り幅跳び選手としてアテネ、北京、ロンドンとパラリンピック3大会に連続出場し、2013年には東京大会の招致スピーチによって一躍日本中に知られる存在に。『切り拓くチカラ』は、その後の谷さんが結婚、出産を経て新たにトライアスロンで東京パラリンピックをめざす過程を追った記録。新型コロナによる大会延期をはじめ、谷さんがさまざまな困難や葛藤を乗り越えてきたストーリーは必読だ。

「『子育てしながらパラリンピックをめざす』、『競技を転向する』というふたつの挑戦を同時進行しながら、常に『限界のふたをはずす』ことを自分に言い聞かせてきました。たくさんの壁があって決して楽ではありませんでしたが、そのすべてを家族と共有し、ともに東京大会のゴールにたどり着くことができたので本当に諦めないでよかったです。また今大会ではパラスポーツ全体がよりよい方向に進んでいることも実感。大会は無観客でしたが、多くの方からインスパイアされたと言っていただきましたのでこの流れを今後の活動につないでいきたいです」

そう、谷さんは競技、子育てと並行しながら『サントリー』の社員としてパラスポーツの普及活動などにも情熱を注ぐ。二足ならぬ三足のわらじをはきながらいつも笑顔で懸命に人生を歩む姿には、きっと私たちがこれからの時代を生きるヒントが詰まっているはず。

「誰もが多かれ少なかれ悩みや不安を抱え、山あり谷ありの人生を歩んでいます。だからこそ『一度きりの人生を悔いなく自分らしく生きる』という気持ちで苦しい時ほど新しい価値観を見つけてほしいですし、この本がそのきっかけになってくれたらうれしいです。そしてダイバーシティ&インクルージョンについても深く考える機会にしていただきたいです!」
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撮影/矢吹健巳(W) ヘア&メイク/塩澤延之(モッズヘア) スタイリスト/金子夏子 取材・原文/徳原 海 構成・企画/福井小夜子(MORE)