1980年──、いまから40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。
そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。MORE世代=20代の女性の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!

「援助交際」と「宗教」を歌うラッパー

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DATA
山田さん(仮名)25歳 /未婚 /職業:ラッパー
初体験:12歳 /経験人数:40~60人 /セックスとは:気付き
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援助交際が身近にあった学生時代

ーーーラッパーとして「援助交際」や「宗教」にまつわる曲を歌っているんですよね。

はい。想像ではなく、実際に自分の身の回りに起こったことを曲にしています。
援助交際をしている女の子たちって、実は、お嬢様や、名門女子校と呼ばれていた学校の人たちが多いんです。新興宗教もそうで。一見幸せな人生を送っているかに見える人も入信する。

自分とは無縁だと思う人が多いかもしれないけれど「実は誰の中にもあること」なんじゃないかと思うんです。(以下、山田さん)

名門女子校と援助交際

援助交際をしていた高校時代の山田さん
ーーー学生時代、身近に援助交際が?

はい。中高一貫の女子校に通っていたんですが、中3くらいから援助交際をしている友達が現れて。そういう場が変じゃないというか……身近だったんです。

ーーーそれはなぜ?

私は小学校時代に宗教と外見が原因で、壮絶ないじめを受け、中学入学を機に地元を離れました。それで、解放感みたいなものがあったのかも。

私の家はある新興宗教に入信していて、物心ついた頃から、両親と共に毎日教祖へのお祈りをしていました。小学校低学年くらいまでは「お祈りをすれば幸せになれる」と、信じていたし、親の言うことを聞く優等生だったと思います。

でも、小学校高学年になって、宗教が原因で学校でシカトされたり、外見的な悪口を言われたりするようになって。そこから信仰に対する不信感が沸きました。インターネットで教祖の名前を検索してみたら、批判的な声が並んでいるのも目の当たりにして……。

小学校を卒業する前に、両親の反対を押し切って、私だけ宗教団体を脱会しました。

それで地元を離れて女子校へ。そして、私も流れで中3くらいからJKリフレをはじめました。援助交際をはじめる友達も。有名な女子校の制服だと値段を釣り上げることができたりして……。

自身の経験を表現するように

ラップを歌う山田さん
ーーー卒業後、起業家やタレントを経て、ラッパーに?

はい、私自身の経験や、セクシー女優になった学生時代の友人たちとの交流の中で、性や宗教をラップにして、発表するようになりました。

ーーー反応はいかがでしたか?

驚くほど、大きな反響がありました。「私もそうだった」という人もいれば、「自分にはそういう経験はないけれど、共感した」という声も沢山ありました。

でも別に私、性の問題を叫びたいとかじゃなかったんです。

私にとっては、宗教も、援助交際も、日常の延長線上にあった。それを言葉や音楽にしてみたら、多くの人から共感してもらえた。

どこかでみんな、生きることに息苦しさを抱えていて、宗教や援助交際を経験した人間のリアルな世界を見ることで、抑圧から解放されたのかもしれません。

恋愛はめんどくさい。忘れられない3P

体験談を語る山田さん
ーーー忘れられないセックスの経験はありますか?

元カレを忘れるために、その元カレと元カレのことが好きな友達を誘って、3Pをしたことがありました。

目の前で、私の友達とセックスをする元カレの姿を見たら心が痛くて。痛すぎて痛すぎて。心が痛すぎて、キリキリして耐えられなくなると、なぜか脳内麻薬(?)というか快楽成分がジュワーって出てくる感覚になったんです。これが自傷による精神的快楽なんだろうと思いました。

肉体的快楽を楽しむセックスも、精神的快楽を得られるセックスもある。援助交際も、3Pも、信仰でさえ、根っこは同じだと私は思うんです。

ーーー恋愛についてはどう考えますか?

今も昔も恋愛ってよく分からないし、正直疲れるし、だるいと思うことも多いです。相手のことを勘ぐって自分のやりたいことをできなかったりするし。

やりたいことをやって生きる方が、ずっと生きてる実感がある。

だから、恋愛をしなきゃとか、愛されたい欲求とかはそんなに無くて、自分の曲を好きだと言ってくれる人や、私を理解してくれる人を大切にしたい、という気持ちが今は強いです。

セックスは生き方そのもの?

ーーー今までの経験を経て、何を思いますか?

新興宗教や援助交際、3P……。世間の人たちからは理解できないと言われることかもしれないけれど、それって実は、全ての人の中にある心のよりどころだったりすると思うんです。

それに、そのときのセックスや信仰と、自分の人生や仕事って似てくるんですよ。変に頭で考えるよりも、それらを通して、自分を見つめて生きていきたいと思っています。
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文・取材/毒島サチコ