自身にとって、今シーズン2戦目でグランプリ(GP)シリーズ初戦となったスケートカナダ。現地時間10月27日午後6時過ぎからの公式練習に臨んだ羽生結弦の表情には落ち着きがあった。 曲かけの順番は6人中最後の6番目。体を慣らすようにスケーティングの練習にじっくり時間をかけてからステップを一度確認するように滑ると、やっとジャンプを跳び始めた。

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スケートカナダSP前日、落ち着いた表情で練習する羽生結弦選手

そして、一度大きな1回転半で確認してからトリプルアクセルを跳び、そこから3連続ジャンプを決める。その後、4回転サルコウを一発で決めてから4回転ループの練習に入ると、3回目と5回目で着氷はやや乱れたものの、しっかりと成功。不安げな表情をすることもなく、6回目でもきれいに決めた。 さらに、そのままの流れで4回転サルコウ+3回転トーループとトリプルアクセルも決め、連続ジャンプを含めてひとつひとつ確認するように5種類のジャンプを跳んだ。

その後、羽生は落ち着いた雰囲気で自分の曲かけ練習の順番を待ち、始まったフリープログラム『ホープ&レガシー』の曲かけでは最初の4回転ループをきれいな流れのある着氷で成功すると、続く4回転サルコウも危なげなく決めた。   それからステップシークエンスを丁寧に滑ると、間をとってから跳んだ4回転サルコウは着氷を乱したが、続く4回転トーループはきれいに決めて次のトリプルアクセル+2回転トーループにつなげた。体にも表情にも力みはなく、自然体での練習だった。 「オータムクラシック以降、曲かけの通し練習をかなりして、ジャンプの精度だったり呼吸であったり、自分の体のリズムであったりを非常に意識して練習してきました。その意味では順調です。今日はひとつひとつの確認をしながらできたと思います。特に今日の練習に関しては、ピークを明日のショートや明後日のフリーに合わせることを意識していますし、気持ちよくできたと思います」   GPシリーズでは珍しく公式練習にも観客を入れるスケートカナダの練習で、「ただひたすら気持ちを抑えることを肝に銘じてジャンプを跳んでいた」と言って羽生は微笑んだ。

今回は、自分にとって有利な環境である

昨年のスケートカナダの反省もあるのだろう。昨年は、オータムクラシックで納得できない演技をしたあと、後半の4回転への過剰な意識を克服するために大会前にきつい練習をして出場した。その成果が出て、ショートプログラム(SP)前日の公式練習ではフリーの曲かけで試みたジャンプをすべてきれいに跳べるほどのいい仕上がりを見せていた。 だが、翌日のSPではその気負いが空回り。後半の4回転トーループがパンクで2回転になり、続く3回転ルッツからの連続ジャンプでも着氷の乱れで混乱したのか、とっさに2回転トーループを付けてしまい、その2要素が0点となって7位発進という予想外の結果だった。 「今回が去年と違うのは、会場がトロントの隣で(練習拠点の)クリケットクラブから非常に近いところで試合ができること。去年のように飛行機移動の疲れもないですから。そういう自分に有利な条件というか環境を、有意義に考えたいと思っています」

こう言う羽生は、気負うことなく日常の流れのまま試合に臨もうとしている。オータムクラシックで宣言した「ノーミスをします。それができないと羽生結弦ではない」という言葉に関しては、「あれはノーミスの演技をするための練習をしてきますという意味でした。もちろんノーミスが目標ですけど、そのくらい練習をしてきました。自分の中では胸を張って『これが羽生結弦です』と言いたいです」と冷静に説明する。 「まずは明日のショートで4回転2本をしっかり跳んで、難しい入りから跳ぶトリプルアクセルもしっかり跳ぶことを意識します。最終的には、音楽自体をまとうような演技をすることが重要だと思っています」 落ち着いた表情でこう話す羽生の顔には、今の自分の滑りに対する自信が滲み出ていた。

取材・文/折山淑美 撮影/能登直

>>記事はSportivaより

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