集まった報道陣の数は、なんと430人!

 ブログでの引退発表から2日後の4月12日、浅田真央が東京都内のホテルで記者会見を開き、リンクを去る意向をあらためて表明した。2010年のバンクーバー五輪で銀メダルを獲得するなど、長らく日本の女子フィギュアスケート界をけん引してきた「真央ちゃん」の想いを聞くために、会場には約430人もの報道陣が詰めかけた。

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引退記者会見で自らのスケート人生を振り返った浅田真央さん。涙で言葉に詰まりながら、最後は笑顔で会見を締めくくった (撮影/能登直)

「トリプルアクセルに声をかけるとすれば……『なんでもっと簡単に跳ばせてくれないの』」

 白のジャケットに黒のスカート姿で登壇した浅田に一斉にフラッシュがたかれる中、冒頭の挨拶で「私、浅田真央は選手生活を終える決断をいたしました。たくさん山がありましたが、乗り越えられたのは、支えてくださった方やたくさんのファンの方々の応援があったからです」と感謝の気持ちを伝えた。  5歳で競技を始めてから21年。激動のスケート人生の中で最も印象に残っている演技として、2014年ソチ五輪のフリーを挙げた。SPで16位と大きく出遅れ、「『日本に帰れない』と思うほど、それまでの試合以上に気持ちが落ち込んだ」状態から、計8度の3回転ジャンプを着氷する滑りを披露し、日本だけでなく世界中に感動をもたらした。 「フリー当日の朝もまだ気持ちが切り替えられず、『このままで大丈夫なのかな』と思いながら公式練習を終えました。でも、試合が近づくにつれて、メイクをして、アップをして、リンクのドアを出た瞬間に、ようやく『やるしかない』という気持ちになって、あれだけの挽回の演技ができた。それをオリンピックという舞台でできたのが、一番よかったと思います」

 集大成として臨んだソチ五輪のシーズンを、世界選手権優勝という形で終えた浅田は、そこから1年の休養を取る。現役続行の可能性について「ハーフハーフ」と話すなど、去就について悩みに悩んだ末、「平昌五輪に出場する」という新たな目標を掲げてリンクに戻ってきた。  しかし、心と体は休養前とは違っていた。復帰1シーズン目こそいいスタートを切ることができたものの、徐々に思うような結果が残せない大会が続く。浅田はその時の心境について、「今の女子スケート界はすごい(選手が多い)ので、ついていけるのかなと思うようになりましたし、気持ちや体の面でもつらいことのほうが多くなりました。今シーズンも頑張ろうという気持ちだけでやってきましたが、(昨年12月の)全日本選手権で残念な結果で終わって、『もういいかな』という気持ちになりました」と振り返った。 「全日本の後、しばらくは『平昌五輪に出るという目標をやりとげなくていいのか』という葛藤もありましたが、すべてを出しきれたので悔いはありません。トリプルアクセルに挑戦して終われたことは、自分らしかったかなと思います」  浅田が追い求めてきたのは、「伊藤みどりさんのようなトリプルアクセルを跳ぶこと」だった。そんな憧れの存在を指導した山田満知子コーチに師事し、12歳の時に参加した「野辺山合宿」で初めて成功させると、その後はトリプルアクセルが浅田の代名詞となった。  高難度のジャンプなために失敗も多かったが、2010年のバンクーバー五輪後から指導した佐藤信夫コーチも「アクセルはあなたの生きがい」と理解を示し、勝負技の完成を後押しした。最後の最後までこだわったトリプルアクセルについて、浅田は「自分の強さでもあったと思うんですけど、その半面、やっぱり悩まされることも多かったです。もし、トリプルアクセルに声をかけるとすれば……『なんでもっと簡単に跳ばせてくれないの』って感じですかね」と笑顔で語った。

 今季の競技終了後、しばらく氷から離れていた浅田は、「プロスケーター」として再出発の準備を進めている。今年7月から大阪市と地元の名古屋市で行なわれるアイスショーに向け、今までのスケート人生をすべて詰め込んだようなプログラムを作っていくという。また、「どんな形であってもフィギュアスケートに恩返しできるような活動をしていきたい」と語り、後進の指導についても、「以前もスケート教室をやっていたんですけど、また機会があればやりたいなと思います」と意欲を見せた。  終始、晴れやかな表情で受け答えをしていた浅田だが、会見の最後にはこらえていた涙が溢れ、言葉に詰まりながら「新たな目標を見つけて、笑顔で前に進んでいきたい」と締めくくった。現在の日本のトップスケーターのみならず、そこを目指す若いスケーターたちの憧れの存在である「真央ちゃん」。勝負の世界から身を引いても、世界中の人々を魅了する姿を見せ続けてほしい。

>>記事は「スポルティーバ」より

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