

独特な世界を味わいながら、意外な発見ができました!
外国人の夫と別れて故郷へ帰ってきた 30 代女性・さなえがヒロインの表題作から始まり、短い物語が連なっていくこの作品。まるでもやがかかっているような人物描写といい、キャラクターたちの独特な登場のしかたといい、ひと言では説明できないお話がいっぱい。人間模様を描きながら、それ以上の“何か” を読み手に訴えかけてきます。
日頃読み慣れた小説とは違う作風で、ラストへたどり着くまでに体力を使いました(笑)。でも何にも寄りかからず、自分の表現を追求し続ける著者の小野さんは、素晴らしいなと思います。アーティストが生み出す世界を、目いっぱい味わえました。
さらに、ふと気づいたことも。 私は会話が多くて、設定や人物 の関係性がわかりやすい物語が好きなようです。収録作で言うと『お見舞い』という話が、ドラマ性もあって好みでした。芸術性の高い作品に触れてみて、自分の読書傾向がクリアに......。それもひとつの発見でした!
小野正嗣 『九年前の祈り』

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取材・文/石井絵里
撮影/露木聡子
ヘア&メイク/赤松絵利(esper.)
スタイリスト/轟木節子
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