【森山直太朗さんスペシャルインタビュー】「15周年。紆余曲折あったけど、結局デビュー当時と同じ感覚に戻ってるんです」

「ベストアルバム発売。表現がアップデートされた『夏の終わり』を、より多くの方に聴いてもらいたい」

力強くも繊細な歌声で、幅広い世代を魅了する森山直太朗さん。楽曲にこめられた魂は心にガツンと響き、いつまでも残り続けます。そんな森山さんがデビュー15周年を迎えました! 記念すべきベストアルバム『大傑作撰』(9月21日発売)にこめた想いを独占インタビューさせていただきました。


――『大傑作撰』(初回限定盤)は、代表曲15曲を収めた【花盤】と、森山さんの活動を土台から支えてきた名曲14曲を収めた【土盤】、そして特典DVDで構成されています。アルバムの中心となる【花盤】。その1曲目は、2003年リリースの3枚目のシングル『夏の終わり』。この曲が1曲目になったのはどんな理由からでしょうか。

「今回のアルバムの選曲や曲順は僕ひとりでやったわけではなく、普段から楽曲づくりやコンサートの演出を一緒にやっている御徒町 凧(おかちまち かいと)とともに行いました。『夏の終わり』を1曲目に持ってきたのは、みなさんに認知されている曲だということ。それからこの時期にリリースするという、季節感を重視したのが理由ですね。
 それから、『さくら』に比べると『夏の終わり』は自分の中で当時伝えきれていないところがありました。今回、15周年アルバムの代表曲にすることで、もう一度ゼロからこの曲をやってみたいという気持ちがあったんです」


――それは、”今、最も歌いたい曲”が『夏の終わり』ということですか?

「歌いたいというより、“歌わなければ”という意味合いが強いのかも。アルバムの【花盤】に収録されているのは2003年の音源ですが、表現がアップデートされた2016年の『夏の終わり』をより多くの方に聴いてもらいたくて、ライブパフォーマンスの機会をいろいろなところで設けてもらっています。アルバムの特典DVDのライブセッションでも歌っていますし、今回のアルバムリリースに伴って全国をまわっているスペシャルライブでも、毎回歌っています」


――今お話しに出たように、全国20カ所のショッピングモールでフリーライブを行っているとか。全国規模でフリーライブを行おうと思ったのは何かきっかけがあったのでしょうか。

「前回のアルバム『嗚呼』発売後に東名阪でフリーライブをしたら、みなさんの反応がとてもよかったんです。より多くの人に生の歌を聴いてもらえて、強いインパクトを与えられて、さらには“コンサートにも行かなきゃ”と思ってもらえるなら、自分にとってこんなに有益なことはないなって。

 考えてみると、僕はずっと前からこれをやってたんですよね。デビュー前には駅前で“帰宅途中のみなさま、よろしくお願いします~”って歌ってたし、メジャーデビュー後も、『さくら』を広く聴いてもらうためにギター1本抱えて全国をまわりましたから。フリーライブって、真剣に聴いてくれる人もいれば、斜に構えてる人もいて、さまざまなモチベーションのお客さんがいますし、歌う環境としては決してよくはない。だからキャリアを重ねると、“こんなとこで歌うの?”なんてことも言いがち。でも、僕の場合“こういうとこで歌ってきたじゃん!”って自分にツッこみますよね(笑)」

ベストアルバム 『大傑作撰』
【花盤】は『生きてることが辛いなら』、『若者たち』、『さくら』など多くの人が耳なじみのある曲に『どこもかしこも駐車場』など森山さんの作る音楽を語るうえで外せない楽曲を加えた全15曲を収録。【土盤】は『レスター』、『君は五番目の季節』、『夕暮れの代弁者』など多くのファンから支持を受ける楽曲全14曲が。『夏の終わり』、『どうしてそのシャツ選んだの』など全8曲のスタジオセッションと独占インタビューを収録した特典DVDも。(初回限定盤[CD【花盤】+CD【土盤】+DVD])¥4200/ユニバーサル

「僕の根源にあるのは“楽しいコンサートツアー”をやること」

森山さんFacebookより。千葉県市川市でのスペシャルライブ風景。

――15年のキャリアを経て、再びデビュー間もないころと同じような環境で歌ってみると、自身の成長を実感しませんか?

「実は、『さくら』が広く認知していただけるようになったあと、僕、自分の原点を見失ってしまったところがあって……。その頃は、客観性を失ってしまって、フリーライブみたいな草の根活動もできてなかったんです。

 それからデビュー5、6年くらい経って、“どうしてこうなっちゃんだろう?”と気がついて戻ってきた。その見失っていた時代はいわば僕にとって “断絶された時代”なんですよ。だから、15年の間にお客さんをひきこむ術が身についたかというと、決してそうじゃない。でも、結局お客さんをひきつけるのって、聴かせる技術よりも、楽曲にどれだけ説得力があるかなのかもしれないと考えるようになりました」

――原点を見失っていた状態から、デビュー5、6年めで戻ってこれたのは、何かきっかけがあったんですか?

「このままいったら壊れるって思ったんです。あの時期はあまりにもシリアスで、僕に対してどんなスタッフも何も言えなかったはず。その頃作った楽曲は表現も鬼気迫ってるし、力んでいた感が否めない。『風待ち交差点』というアルバムを作った2006年あたりから“もっと力を抜こう”と思うようになって、ようやくチューニングが合ってきました。それから紆余曲折あって、結局リセットされて、今15年前と同じ感覚に舞い戻ってます(笑)」

――人間って、そうやって原点に戻っていくものなのかもしれませんね。

「そうですよね。僕が音楽を始めたのって、今でも一緒に楽曲制作をしている御徒町との遊びの延長だったんですよ。部活の練習が終わったあとに、ずっとグラウンドでボールぶつけあってるような感覚で今もやってる。その楽しい感覚を追求することが、結果的にまわりで協力してくれる人のためにもなるんだと思います。でも、世に出ていろんな人と関わっていく中で、違う宿命や責任が自分にのしかかってるような錯覚に陥っちゃうときもあるんですよね」

――15年かけて自分自身の原点に戻ってきたということですが、今、未来の景色はどんなふうに見えていますか?

「今のところは何も見えてないですね。でも、いつも考えてはいます。ちょっとしたことでイライラしたときにイライラする理由を考えると、“たくさんの人にCDや楽曲を聴いてもらえる機会を作って、できるだけ多くの人に興味と関心を持ってツアーに来てもらいたい”ってことに行き着くんですよね。つまり、楽しいコンサートツアーをやることが僕の根源にあるんです」

――楽曲を聴いてもらうこと以上にコンサートツアーに足を運んでもらうことが重要なんですね。

「そうです。だから未来のことではっきり言えるのは、この『大傑作撰』リリースにまつわる活動があった後にやるコンサートツアーのことだけ。そのツアーをビジョンと課題を持ちながら、楽しくやれたらいいなって、そのリアルしかない。でも、ツアーをやりきったとき、また新しい課題が出てくるんですよね」

「今はわからなくてもいいから、自分の目標の“その先”を考えておくことが大事」

――モア読者と同世代の26歳でデビューし、第一線を走り続けてきた森山さん。しかし、昨年末から半年ほど「小休止」として休業されていたことも話題になりました。「小休止」で自身に変化はありましたか?

「活動に対して、前向きになったとか、失敗を恐れずに踏み込むことができるようになったところはあると思うんです。けど、もともとそういう人間だったので“変化”ではないのかな? 休業したことで、やっぱり元に戻ってたのかもしれない」(笑)」

――時間や年齢を経て、どんどんシンプルになるのは、女性のメイクやファッションでもよくあります!

「そうですよね。昔の写真を見たときに“私、この眉毛って……こういうの流行ってたんだっけ!?”ってなること(笑)。でも、自分を知るために、背伸びしたり、肩肘はったりするのって、必要な時間なんだと思います。

 そこからいろいろ受け入れて、理想と自分に本当に似合うものっていうのは似て非なるものだと知っていくんでしょうね。一度ものすごい方向に振り切って、またシンプルに戻る過程って“それ必要あった?”って言われるかもしれないけど、生きていくってそういうことだと思うんです。僕が言うと、自分の行動を正当化してるみたいで説得力ないんですけど……(笑)」

――モア世代でデビューして『さくら』が大ヒット。それから紆余曲折、激動の20代後半を過ごした森山さん。だからこそ、今言える「20代のうちにやっておくべきこと」を教えてください!

「デビューした26歳の頃は、まあこういう職業に飛び込んだくらいだから、相当カン違いしてたし、相当自信過剰だったんです。なめてたんですよ、人生を(笑)! 

 ただ、“楽曲をいろんな人に知ってほしい”っていう強い気持ちが、自分にとって必要な状況や環境を呼び込んだと思うので、ビジョンを持つことってすごく大事。でも、一番困るのは、自分が“こうしたい、こうありたい”と思い描いていた通りになったときに、どうするかを考えてないことなんです!」

――今、自分が持っている目標のもうひとつ先を考えておくことが大事なんですね。

「そうそう。“世界を平和にしたい”みたいな壮大な夢でも、“韓国行ってエステしたい”みたいな身近な目標でも、“その後どうするのか?”を考えておかないといけない。そうじゃないと、自分がどんどんハリボテみたいになっちゃったり、人によっては実現した夢を守るだけの人生になっちゃう。

 その先について聞かれたときに“わからない!”という答えはあって当然。ただ“わからないことがある”ということを自覚したうえで考えようとしていれば、いつか答えにたどり着けると思うんです」


もりやまなおたろう●1976年4月23日生まれ。東京都出身。大学時代から楽曲づくりを開始。2001年、インディーズレーベルからアルバムをリリースしたのち、2002年10月、にミニアルバム『乾いた唄は魚の餌にちょうどいい』でメジャーデビュー。2003年に『さくら(独唱)』の大ヒットで注目を集める。2017年1月からは15thアニバーサリーツアー『絶対、大丈夫』がスタートする。
取材・文/古川はる香

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