悩める少女時代に出会いたかった! 音楽の力で再生する女性たちを描いた『天使にショパンの歌声を』

悩める少女時代に出会いたかった! 音楽の力で再生する女性たちを描いた『天使にショパンの歌声を』_1
生徒が教師との出会いによって成長していく作品はよくありますが、この映画は寄宿学校に通う少女たちと教師であるシスターたちが、音楽の力によって共に成長していく様子を描いた作品です。舞台は1960年代のカナダ・ケベック州。カトリックの修道院が経営し、音楽教育に力を入れる名門女子校が閉鎖の危機に直面するところから映画はスタート。校長のオーギュスティーヌは音楽の力で世論を見方につけようと、音楽イベントの開催を計画します。

ケベック州は1930年代からカトリック中心の社会構造ができあがっていましたが、1960年の選挙で革新的な自由党が勝利し「静かなる革命」と呼ばれる大改革が行われました。これによって政治や経済が大きく変化しましたが、最も大きな影響を受けたのが教育。政教分離が断行され、教会が運営してきた学校の多くが公立化されたのです。映画の中でも、校長やシスターは音楽教育を武器に議員やマスコミに訴え、必死に生き残りをはかります。女性の権利や自由がまだまだ認められていなかった時代に、権力に押しつぶされそうになりながらも立ち向かうシスターたちの生き様は、大きな共感を呼ぶはずです。

さらに注目なのが、親との関係に悩み、初めての恋にときめき、寄宿学校という閉ざされた世界でエネルギーを持て余す思春期の少女たち。特に両親に見放されたと思い心を閉ざした少女アリスが、伯母である校長のオーギュスティーヌと激しくぶつかりながらも、同じ女性の先輩・後輩として、また音楽を愛する同士として心を通わせていくシーンは感動的。一方的に道徳を押しつけるのではなく、かつて同じような過ちを経験した過去を打ち明けて寄り添うオーギュスティーヌは、「悩める少女時代に出会いたかった!」と思わずにはいられない理想の教師像。ショパンの「別れの曲」やリストの「愛の夢」などクラシックの名曲と共に、自らの足で人生を切り開く女性たちのドラマを描いた良作です。

(文/松山梢)

●1/14〜より角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー

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