戦後70年の今、観たい。映画『この国の空』

今年は戦後70年という節目とあって、戦争について考えさせられる映画がいくつか公開されます。そのひとつが芥川賞作家・高井有一による同名小説を映画化した『この国の空』。二階堂ふみ・長谷川博己主演、戦争に翻弄される男女の恋を描いています。

この作品が他の戦争映画と少し異なるのは、終戦間近の東京・杉並に暮らす19歳の里子(二階堂)、その母(工藤夕貴)、叔母(富田靖子)の3人と、隣に住む38歳の既婚男性・市毛(長谷川)、2つの家を中心としたホームドラマであること。空襲に怯えながら健気に暮らす様子が映し出されるなかで、里子の恋が描かれます。想いを寄せる相手は、妻子が疎開してひとりで暮らす市毛。お隣という理由で彼の世話をやくうちに恋が芽生え、やがて抑えきれなくなっていく。明日はどうなるか分からない、未来の見えない時代のなかで里子は思います、私は恋もせず結婚もせず子供も産まずに死んでしまうかもしれない、と。そんな焦燥感と恋の高揚感が混じり合う描写はとても生々しく、美しく、複雑。でも、痛いほどわかる気がするんです。

そして、ラストシーンで彼女が朗読する茨木のり子さんの詩「わたしが一番きれいだったとき」は、里子と同じ19歳で終戦を迎えた茨木さんの戦争に対する怒りと哀しみとやるせなさが込められた詩。これが、映画の余韻をさらに深いものにしています。

(文/新谷里映)

●8/8〜テアトル新宿ほか

ⓒ2015「この国の空」製作委員会

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