優しくて切ない夫婦の愛の行方。映画『あの日のように抱きしめて』

優しくて切ない夫婦の愛の行方。映画『あの日のように抱きしめて』_1
戦争によって強制収容所に送られ、顔に大きな傷を負ったユダヤ人・ネリー(ニーナ・ホス)。彼女を守りきれず、妻は死んでしまったと思い込んでいる男・ジョニー(ロナルト・ツェアフェルト)。映画『あの日のように抱きしめて』は収容所から生還した妻と、変貌した妻に気づかない夫の再会を描いた物語です。

顔の傷を治すときに医者から「前とは違う顔にした方が安全だ」と助言されつつも、離ればなれになってしまった夫との再会を願い、彼を愛しているがゆえに「もとの顔に近づけてほしい」と言うネリー。でも悲しいことに、ジョニーを見つけ出しても彼はネリーのことを自分の妻だと気づかない。それどころか、亡くなった妻の遺産を手にするために、妻になりすまして欲しいと持ちかけます。彼のことを愛しているネリーは、自分がネリーであることを隠し、別人としてジョニーと一緒にいることを選びますが、それって切なすぎます。そして告げられる、友人からの「ジョニーはあなたを裏切ったのよ」という真実。果たして夫は、本当に妻を裏切っていたのか……?  

ひとつの愛を失い、愛が疑惑に変わり、疑惑を受け止めることで自分を取り戻していく女性の姿に、心乱され、そして心揺さぶられます。ラストシーンでネリーが歌う「スピーク・ロウ」に込められた意味と彼女が下した決断は、観客に委ねる形で終わりを迎えます。あのラストをどう捉えるのか、考えさせられる深い余韻もこの映画のおもしろさです。

(文/新谷里映)

●8/15〜Bunkamuraル・シネマほか

ⓒSCHRAMM FILM / BR / WDR / ARTE 2014

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