傷ついた女たちの破天荒すぎる珍道中に涙! 幸せ探しのロードムービー『歓びのトスカーナ』

映画を観る時、私たちは主人公に自分を重ね合わせたり、感情移入しながら楽しんだりしますが、実生活ではあまりお目にかかりたくないなと思う、かなり破天荒な人物も登場します。しかもキャラが濃ければ濃いほど、映画としてはおもしろくなるもの。思えば『17歳のカルテ』だって『ブルージャスミン』だって、強烈なインパクトを放つ女たちの物語を、アンジェリーナ・ジョリーやケイト・ブランシェットが魅力的に演じてきた名作。さらに、スクリーンを通して他人事として見ているつもりでも、自分の中にヒロインと同じ弱さや危うさが潜んでいる可能性を感じさせる物語でもありました。

今回紹介する映画も、そんな名作の仲間入りをするであろう、個性的なふたりの女の物語。舞台はイタリアのトスカーナ州。心に病を抱えた女性たちが暮らす施設を抜け出し、自由を追い求めて行き当たりばったりの珍道中を繰り広げる様子をエネルギッシュに描きます。主人公のベアトリーチェは、世界は自分中心に回っていると思い込み、息を吐くようになめらかに、次々と驚くような虚言と妄想を繰り返す女性。一方、ガリガリのカラダに無数のタトゥー姿がインパクト大のドナテッラは、うつ病や薬物依存症を患い、深い孤独を抱えている設定。そんな性格も年齢も正反対の2人の逃避行は、車を盗んだり、無銭飲食をしたり、元夫を訪ねて貴金属をくすねたり、とにかくやりたい放題! 当然ふたりは意見の違いから何度も衝突しますが、徐々にお互いが抱える過去を理解し、不思議な絆が生まれていきます。

特にドナテッラが抱える傷は強烈。妻子ある男の子供を出産するものの見捨てられ、愛する息子と暮らすこともできず、絶望して心中未遂を図った過去が。耐え難いほどの苦しみから逃げるようにお酒やドラッグに手を出し、いつしか周囲から白い目で見られるアウトサイダーになってしまったのです。繊細で非力なドナテッラの生き方はあまりにも不器用ですが、育った環境や出合った男、付き合う人間によって、女が心を壊す原因はそこら中に転がっていることを痛感。そして、そこから抜け出すためには、一緒にグチを言ったり、涙を流したり、怒ったりしてくれる、友達の存在が何よりの特効薬だということを、映画は教えてくれるようでした。周囲の偏見や不寛容に傷つき、時に立ち止まりながらも、当たり前の幸せを必死でつかみ取ろうと逃げて逃げて逃げまくる彼女達の姿に、いつしか大声でエールを送りたくなる傑作です。

(文/松山梢)

●7/8〜シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

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