欲望に忠実な“イタい”女が辿り着く究極のの画像_1

『エディット・ピアフ〜愛の讃歌』でアカデミー主演女優賞を受賞したフランス女優、マリオン・コティヤールが、愛を追い求める情熱的な女性に扮し、フランスのアカデミー賞であるセザール賞で8部門にノミネートされた異色のラブストーリーをご紹介。なぜ異色かと言うと、マリオンが演じるヒロインのガブリエルがとにかく強烈だから。1950年代の南仏プロバンスで両親と暮らす美しい女性なのですが、家族も「狂っている。普通の人間じゃない」と変人扱いするほど、とにかく欲望に忠実で衝動的。映画の冒頭から、教師への愛を大胆かつ官能的な手紙で一方的にアピールし、相手を怖じけさせた上にこっぴどくフラれてしまいます。 失恋の痛みに「愛を与えて、ダメなら死なせて」と身悶えるガブリエルはその後、両親の決めた実直なスペイン人男性と渋々結婚するのですが、「あなたを絶対に愛さない」とキッパリ宣言してしまうストレートさに、見ているこちらもハラハラ。ただし物語の本題はここから。腎臓結石の治療のためにアルプス山麓の療養所に入所した際、インドシナ戦争で負傷した美しき帰還兵のアンドレにひとめぼれし、運命の出会いを果たすのです。次第に親密な間柄になっていくふたりですが、ガブリエルの治療が終了したことから離ればなれに。その日から、いつか再会できることを胸にアンドレへ熱烈な愛の手紙を送り続ける日々が始まります。 人からどう見られるか、相手がどう受け取るかをいっさい気にすることなく、どんな状況でも欲望に忠実に生きるガブリエル。大人として多くのことに“ふた”をして社会性を保っている私たちの目には痛々しく映りますが、その迷いのない純粋さをうらやましく感じてしまうのも事実。メガホンを取った女性監督のニコール・ガルシアも「私が惹かれるのは、精神的にぎりぎりのところにいる人よ。私はそういう人々に最も自分を投影できる」と語っています。自分らしくいることを周囲から否定され、愛する人といたいという切実な思いを引き裂かれてしまった苦しみのドラマは、「“ふた”を開けっ放しにしていたら自分もこうなっていたかも?」と思わせるくらい、女性なら誰もがガブリエルの気持ちに寄り添える展開に。果たして彼女は真実の愛を手にすることができるのか……。ラストに明らかになる“ある人”の究極の愛に、度肝を抜かれるはずです。 (文/松山梢) ●10/7〜新宿武蔵野館ほか全国順次公開 © (2016) Les Productions du Trésor - Studiocanal - France 3 Cinéma - Lunanime - Pauline's Angel - My Unity Production

映画『愛を綴る女』公式サイト