男をものにする女の禁じ手にゾクリ。映画『の画像_1

男と女はお互いにリスペクトしあい、支えあう関係性が理想的ではあるけれど、実際は立場や状況、時間の流れに応じて力関係はどんどん変化していくもの。この映画は、堅物で偏屈で完璧主義者である仕立て屋の夫と、彼に見初められミューズとなった若き妻の究極の愛の物語。スペインのデザイナー、クリストバル・バレンシアガの人生と仕事の仕方に魅了されたポール・トーマス・アンダーソン監督が、オートクチュールの世界を舞台に美しくもクセのある男女のロマンスを描き出し、アカデミー賞では作品賞、監督賞、衣装デザイン賞など6部門にノミネートされました。 1950年代のロンドン。仕立て屋のレイノルズ(ダニエル・デイ=ルイス)は、大富豪やベルギーの王女などを顧客に持つ高級婦人ファッション界の中心人物。ある日、ウェイトレスのアルマ(ヴィッキー・クリープス)と出会い、新たなミューズとして迎えることに。胸が小さく絶世の美女でもないアルマの心は不安でいっぱいだったが、洗練を極めたオートクチュールの世界に足を踏み入れ、レイノルズの手によって美しいドレスを次々仕立てられるうちに、いつしか自信と情熱を取り戻していく。ただし、ミューズとしてのアルマをリスペクトしつも、レイノルズは食事の席で物音を立てることにも腹を立て、小言を繰り返すエゴイスト。自分の領域に他人が立ち入ることを許さない彼に不満を募らせたアルマは、レイノルズの愛を勝ち取るため、そして自分の存在の大きさを知らしめるため、ある禁断の行動に出る……。 アルマの行動は正直アウトではあるけれど、とにかく「それ」を描いたシーンはホラーのように恐ろしく、うっとりするほどエロティックで、つい息をすることも忘れてしまうほど。そして、男の人は背筋が凍るほど恐ろしいかもしれないけれど、不謹慎にもスカッと爽快な気分になる女性は多いはず。愛の表現はカップルによって様々だし、他人が理解できない秘密が隠れているもの。エレガントな映像や音楽、衣装の数々にうっとりしながら、スリリングで甘美な世界を堪能あれ。ちなみにレイノルズを演じ、本作で引退を発表したダニエル・デイ=ルイスは、役作りで洋裁を学び、バレンシアガのスーツを複製できるまでの腕前になったそう。天才俳優の変態的な役への没入ぶりにも、ゾクゾクさせられます。 (文/松山梢) ●5/ 26〜シネスイッチ銀座ほか全国公開 © 2017 Phantom Thread, LLC All Rights Reserved

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