話題のステージの中から、キーワードに沿ったイチ押し舞台、そして2本のおすすめをご紹介します。

【今月のキーワード】“ふたりの田中”が挑む衝撃作

ハリウッドの超大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインへの告発に端を発し、世界中に広がった反セクシャルハラスメント運動『#MeToo』。華やかに見えるエンタメ世界の裏側、それも、女性の地位は日本よりもはるかに向上していると思われていたアメリカでさえ、傲慢な権力者による理不尽な仕打ちと犠牲のもとに成り立っているのだと思い知らされた。『サメと泳ぐ』は、そんなエンタメ界のドロドロした実情が顕在化するのを予期していたかのように、2007年の時点でクリスチャン・スレーター主演によって上演されていた作品。今回日本版で暴君的なプロデューサー、バディ役に扮するは名優・田中哲司。バディの新人アシスタントで脚本家志望のガイ役の田中圭は、主演ドラマ『おっさんずラブ』で男性に求愛される“はるたん”を好演し旋風を巻き起こしたばかり。芸達者で売れっ子な“ふたりの田中”に「この作品に参加したい」と思わせたのが、千葉哲也という存在。名バイプレーヤーにして、深い洞察力のある演出家が、どれだけ人間の欲望をえぐり出すのか期待が高まる。

本作のオリジナルは、1996年に公開された映画『ザ・プロデューサー』。脚本・監督のジョージ・ホワンは、インターン時代から大手映画会社を渡り歩いてきた人物。彼が見聞きした実話から着想を得ているだけあって、ブラックコメディながらリアリティも十分で見応えたっぷり! 主演であるケヴィン・スペイシーが多くの俳優からセクシャルハラスメント被害を告発され、キャリアと名声をふいにしたことは、なんとも皮肉な話だ。
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【今月のイチ押し☆ステージ】『サメと泳ぐ』

人間性は最悪ながら次々にヒット映画を生むバディ、成功を夢見る助手のガイ、その恋人でフリーのプロデューサー・ドーン(野波麻帆)をめぐる権力闘争や男女の駆け引きを、怒濤の台詞劇で見せる。演出の千葉哲也は、役者として出演も。◆ 9/ 1 ~ 9  世田谷パブリックシアター(地方公演あり) ●サンライズプロモーション東京 ☎0570・00・3337
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リアリティも十分で見応えたっぷり! 『ザ・プロデューサー』

大物プロデューサー・バディのもとで働く脚本家志望のガイ。強烈なハラスメントに耐える中、昇進に命を懸けるバディは、恋人であるドーンの企画を利用しようとガイにある提案を持ちかける。Everett Collection/アフロ

【オススメステージは『ゴースト』と『ローリング・ソング』】

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『ローリング・ソング』

日本を代表する劇作家・鴻上尚史が書き下ろしたオリジナル音楽劇。夢に翻弄される3 世代の男を、中山優馬、松岡 充、中村雅俊と個性豊かな3 人が演じる。共演に、森田涼花、久野綾希子ら。作詞・音楽監修は、歌謡曲からロック、アニソンまで手がける多才な森 雪之丞。◆ 8 /11~ 9 / 2  紀伊國屋サザンシアター ●サンライズプロモーション東京 ☎0570・00・3337
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『ゴースト』

大ヒット映画『ゴースト/ニューヨークの幻』をもとに生まれたミュージカル版。美しい愛のナンバーを希代のミュージカルスター浦井健治らが歌い上げる。ヒロインは宝塚歌劇団卒業後初舞台となる咲妃みゆとAKB48時代から数多くの舞台に挑んできた秋元才加、実力派女優によるダブルキャスト! ◆ 8 / 5 ~31 シアタークリエ ●シアタークリエ ☎03・3591・2400


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MORE2018年8月号・さらに詳しい情報は雑誌MOREをチェック! 原文/小泉咲子
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