“言葉”について考える。多和田葉子さん『地球にちりばめられて』に注目! 【オススメ☆BOOK】 

最近発売された話題の本や永遠に愛される名作などから、キーワードに沿った2冊のイチ押し&3冊のおすすめBOOKをご紹介します。

【今月のキーワード】世界は愛と言葉でできている

世にも美しい題名を持つ長編小説『地球にちりばめられて』の作者・多和田葉子は、日本で生まれ、ロシア文学を学び、ドイツへ移り住み、旅を重ねながら日本語とドイツ語で小説と詩を発表している。外国語とも母語とも、いく度となく出合い直してきた作家の言葉は、立体感と存在感に満ちた世界文学だ。最新小説『地球にちりばめられて』でも、登場人物たちはやっぱり言葉について考えている。北欧で言語研究をするクヌート。故郷を失い移民となったヒルコ。女性として生きようと「性の引っ越し」中のアカッシュ。ドイツで出会うノラとテンゾ。古い名を持つスサノオ。彼らが順に語り手を務める10章の中で、言葉は踊り、浮かび、キスするように絡みあい、離れては結びつき、絶え間なく動き続ける。白いページに、失われた国でかつて話されていた言葉、デンマーク語、ドイツ語、そして変容しながらも“伝える”ために話される「手作りの言語」パンスカ、それらを記述する日本語があふれ、言葉の糸が人と人をつないで、ヒルコの母語を訪ねる旅がつづられていく。

クヌートという名は、同じ著者の代表作のひとつ『雪の練習生』にも登場する。ホッキョクグマのクヌートを3 章に、記憶を生み育て、運命を動かすために自伝を書く祖母、サーカスで曲芸をしながら自伝を書かれる母の物語が1 、2 章に置かれる連作小説だ。言葉と音に記憶と歴史が混じりながら不可思議に進み、戻り、かつてベルリン動物園に世界中の視線を引き寄せた、空前絶後のアイドルとなった実在のクヌートへとつながる。

【イチ押しBOOK1】多和田葉子さんの『地球にちりばめられて』 

移民となってしまった女性、彼女の言葉に興味を持つ研究者など、生まれも年齢もバラバラな10人がもの語る。ヨーロッパを横断し、国と人の境目や、言葉について考える長編小説。(講談社 ¥1700)

【イチ押しBOOK2】多和田葉子さんの『雪の練習生』

サーカスのスターから作家へ転身した祖母、曲芸で世界をめぐる娘、動物園で生まれ、人間に育てられたクヌート。白く幻想的な世界から見知った現実へ。生きることを言葉にしながら、3 代に受け継がれていく美しい物語。(新潮社 ¥550)

【おすすめBOOKはこの3冊!】

山尾悠子さん 『飛ぶ孔雀』

幻想文学の名手による、8 年ぶりの連作長編小説。緻密で繊細な描写をたどりながら、描かれた物体や登場人物と見つめあうようなゾワリとした感触に驚きおののき、異世界へ連れ去られる感触がたまらない。(文藝春秋 ¥2000)
神里雄大さん 『バルパライソの長い坂をくだる話』

ペルー生まれの著者が、パラグアイ、アルゼンチン、ぺルー、沖縄などをめぐって生まれた戯曲3 部作とエッセイ。ときに近く、ときに遠く、独特な言葉が豊かにふくらむ。表題作は岸田國士戯曲賞を受賞した。(白水社 ¥2000)
久世番子さん 『宮廷画家のうるさい余白(ブランカ)』①

スペイン王室に招かれ宮廷画家となったベラスケス。17世紀に活躍し、“画家の中の画家”とも呼ばれた実在の画家や王家の面々をモデルに、漫画ならではのコミカルさと華やかさをまぶして展開する宮廷物語。(白泉社 ¥640)


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MORE2018年8月号・さらに詳しい情報は雑誌MOREをチェック! 原文/鳥澤 光
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