公開中&近日公開予定の話題作の中から、キーワードに沿った2本のイチ押し映画と、その他のおすすめ映画をご紹介します。

【今月のキーワード】自分らしく生きるって最高に美しい!

伝説のドラァグクイーン8人に迫る。『ディの画像_1
もっと目が大きかったら、もっと胸が大きかったら……。美しくなりたいと願う女性の悩みはつきないもの。でも、70歳を超えたドラァグクイーンたちが冒頭から「女でいることは、すでに女ならとても簡単!」と歌うこの映画を観れば、ないものを必死に数えていたことにドキリとさせられるはずだ。1960年代のブラジルで活躍した、ドラァグクイーンのレジェンドたちの激動の人生に迫る本作。女装して通りを歩くだけで逮捕されることもあったし、家族から精神病院送りにさせられる人もいた時代に唯一の居場所だったのが、女性の姿で堂々とパフォーマンスができる劇場。性的少数者に対する厳しい偏見に直面しながらも、悲しみをメイクの下に隠してダンスを踊りながら生き抜いてきた彼女たちにとっては、年を重ねることも「若さを積み重ねているの」と軽やかに言えちゃうくらい些細なこと。しわしわの目もとに極太のアイラインを引き、仕上げに大粒のラメを大量に顔面に振りかける、誰にも媚びないオリジナルな美しさを追求する気高さは、女である以前に人間として最高に魅力的だ。

【今月のイチ押し★シネマ1】『ディヴァイン・ディーバ』

伝説のドラァグクイーン8人に迫る。『ディの画像_2
軍事独裁政権下の1960年代のブラジルで、異性装のパフォーマー“ドラァグクイーン”として活躍した伝説の8 人に迫ったドキュメンタリー。2014年に開催されたデビュー50周年祝賀イベントの様子を描く。● 9 / 1 〜ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開©UPSIDE DISTRIBUTION, IMP. BLUEMIND, 2017

【今月のイチ押しシネマ2】『プリシラ』

ドラァグクイーンを描いた名作として忘れてはいけないのが、シドニーから田舎町までバスで旅する3 人を追った『プリシラ』。ゲイもドラァグクイーンも見たことがない人たちからバケモノ扱いされたり、親切なアボリジニから助けられたりしながら、持ち前のユーモアと明るさで前を向く姿はパワフル。旅の最後に「何があっても自分らしく生きよう」と決意し、ド派手な衣装で砂漠のド真ん中に佇む姿は、シュールなのに胸を打つ名シーンだ。
伝説のドラァグクイーン8人に迫る。『ディの画像_3
大都会シドニーで活動する3 人のドラァグクイーンが、砂漠の真ん中にある街で開催されるショーに出演するため3000キロの旅に出るロードムービー。Blu-ray発売中。¥1905(20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン)

【まだまだあります、おすすめシネマ!】

伝説のドラァグクイーン8人に迫る。『ディの画像_4
『コーヒーが冷めないうちに』

ある席に座ると望んだとおりの時間に戻ることができる喫茶店『フニクリフニクラ』を舞台に、さまざまな後悔やせつなさを抱えた人たちを描いたベストセラー小説を映画化。有村架純がヒロインを務め、石田ゆり子や吉田羊、波瑠などが脇を固める。● 9 /21〜全国公開 ©2018『コーヒーが冷めないうちに』製作委員会
伝説のドラァグクイーン8人に迫る。『ディの画像_5
『若い女』

10年つきあった恋人から突然フラれた31歳のポーラは、お金も家も仕事もなくパリの街を転々とするはめに。1986年生まれの女性監督レオノール・セライユのデビュー作。平気で嘘をつくガサツで見栄っぱりなヒロインがなぜかだんだん愛おしく見えてくるから不思議。●公開中 ©2017 Blue Monday Productions

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MORE2018年10月号・さらに詳しい情報は雑誌MOREをチェック! 原文/松山 梢
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