あなたは大丈夫? 今こそ見直したい「免疫」のこと!

ストレスや不摂生でみるみる低下するといわれる免疫。「まだ20代だから大丈夫!」そんな言葉は通用しません! 今そこしっかり「免疫」について学びましょう。今回は、「免疫」についてのあるあるマンガと「免疫の基本」Q&Aをお届け。しっかり読んで、「免疫」についての知識を深めましょ!
【教えてくれたのは】
●児玉華子先生
総合内科専門医。原因不明の発熱や炎症反応、各種関節痛、アレルギーや免疫異常による諸症状についての診断を専門に行う

●小林麻利子さん
生活習慣改善サロン『Flura』主宰。ナイトケアアドバイザー、睡眠改善インストラクターとして活躍。著書に『読む お風呂の魔法』など

●斎藤高雄さん
「大塚製薬 大津栄養製品研究所」研究員。医学博士。「粘膜免疫」の観点から乳酸菌を研究し、たどり着いた「B240」の研究開発を行う

25歳過ぎたら、急低下するってよ! モアOLの「あるある免疫劇場」

ちゃんと理解してる? 知らなきゃソンする「免疫の基本」をおさらいしよう!

Q.そもそも、“免疫”って何者? 
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A.細菌やウイルスを退治する防御システム!

「がん細胞やウイルスなどをやっつけてくれるのが『免疫細胞』。その約6〜7割は腸内に存在します。そこで訓練を受けた免疫細胞が血液にのって全身をめぐり、体にとって有害&不要なものがいないか常時パトロールしながら、死んだ細胞や老廃物を除去することで私たちの体は守られています」(児玉先生)。「免疫は文字どおり“疫”を“免れる”こと。その仕組みは、ウイルスや細菌など異物の侵入を防ぐ目・鼻・口・腸管などの『粘膜免疫』と、侵入した異物を撃退する『全身免疫』の2段階になっています。どちらも重要ですが、さまざまなウイルスや菌に囲まれながら元気に過ごせるのは、粘膜免疫が働いてくれるおかげです」(斎藤さん)

Q.ひょっとして免疫も老化する?
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A.ストレスで老化は加速!!

「全身免疫として働く免疫細胞がつくられるのは骨髄などの臓器。その機能は加齢により低下(老化)するので、つくられる免疫細胞の数も減少し、細胞自体の機能も衰えていきます。左のグラフのように免疫力は20代をピークに徐々に下がります。年齢だけでなく、ストレスによる活性酸素も老化の原因となるので要注意」(児玉先生)。「免疫力が低下すれば感染症のリスクも高まるので、バリア機能を担う粘膜免疫が重要に」(斎藤さん)
Q.免疫細胞の数って、生まれつき決まってるの?

A.後天的に増える細胞もある!

「胎盤や母乳を通じて母親からもらった抗体(侵入した異物を無力化する免疫物質)は生後約6カ月で失われます。その後は、生まれつき備わっていて異物を見つけると真っ先に反応する『自然免疫』と、病原体との接触や予防接種で獲得される『獲得免疫』が力を合わせて体を守ります。細胞の数よりも、機能をいい状態に保つことが大切。とはいえ、除菌・殺菌ブームの現代では、以前よりも獲得の機会が減っているかもしれません」(児玉先生)

Q.免疫力って測れるもの?
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A.血液や唾液で調べることは可能

「健康診断の血液検査では、白血球の数や構成比などを測定しバランスが崩れていないかを観察します。また、粘膜免疫の第一線で活躍している免疫物質の『IgA』も唾液の検査で調べることが可能です」(斎藤さん) 大塚製薬 B240研究所ホームページより

Q.免疫力が下がるとどうなるの?

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A.風邪やアレルギーにかかりやすい&治りにくい

「常に体の中に侵入しようとする細菌やウイルスは、免疫がそれを防いだり撃退することで消滅。でも、免疫力が低下すると細菌やウイルスを退治する力も弱くなるので、風邪やインフルエンザなどにもかかりがちになります。しかも、疲れやすくなって回復が遅くなるうえ、口内炎ができやすくなったり、自律神経の乱れを引き起こして便秘や肌荒れの原因にも。また、免疫力低下により免疫細胞のバランスが乱れて正常に働かなくなると、体にとって本来は異物ではないものにまで過剰に反応して排除しようとします。これがアレルギー反応となって、くしゃみや鼻水、じんましんなどの症状を引き起こすことにつながってしまうのです。毎日5000個が生まれるとされるがん細胞の増殖を抑えられなくなることも」(児玉先生)

Q.免疫力が下がる原因は?
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A.食やストレス、睡眠不足など心身の乱れ

「加齢、激しい運動、ストレス、睡眠不足、不規則な生活、野菜やたんぱく質不足、PMSなどで下がることが報告されています。一般的に、心身ともに疲れを感じる時は免疫力も低下していると考えていいでしょう」(斎藤さん)。「朝食を食べないと体温が上がらないまま一日を過ごすことになり、それが続けば低体温症になって免疫力も代謝力も弱まります。また、ストレスを抱えて自律神経が乱れると体温が下がるだけでなく、血管が収縮するため免疫細胞が血流にのってパトロールしにくくなってしまいます。睡眠不足も免疫力を低下させ、風邪や疲労の原因に。また、免疫細胞のひとつである『NK細胞』は適度な運動で活性化し、運動をやめると活性化しなくなるため、運動不足も免疫低下を招くと考えられます」(児玉先生)

Q.免疫力は高いほどいいの?
A.そういうわけでもないんです

「免疫は両刃の剣であり、高ければ高いほどいいというわけではありません。極端に一部の免疫力が高まりすぎると、本来なら攻撃対象ではない自分自身の細胞を攻撃して自己免疫疾患になったり、今まで反応しなかった花粉やほこりに反応してアレルギーを引き起こすリスクもあります」(斎藤さん)。「むやみやたらに高めることを考えるより、自分が持っている免疫機能がよりよく働くための環境を整えることを意識して」(児玉先生)

Q.免疫力を高めるにはどうしたら?
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A.自律神経を整えるべし!

「自律神経が乱れて交感神経が優位になると、血流や内臓の動きが制限されて免疫力低下につながります。ストレスや緊張によっても交感神経が優位になるので、ストレス発散やリラックスする方法を見つけて副交感神経を優位にし、質のよい睡眠をとることが重要です。また、体温が上がると免疫力も高まるため、体を温める食材を積極的に取り入れながら3食欠かさずに食べましょう。運動するなら、30分程度のウォーキングで十分効果あり! ハードな運動は逆効果なので、リラックスしながらじんわり汗をかく程度でOKです」(児玉先生)。「免疫が活発に働く時間帯は夜中。しっかり眠れなければ免疫の働きも悪くなるので、睡眠の質を高めることが大切です。眠りの質を上げるためには、入浴が重要なポイントに。シャワー派の人は、今日からしっかり湯ぶねにつかる習慣をつけましょう!」(小林さん)

Q.逆に、上がるとどうなるの?
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A.自律神経が整い、不調知らずに

ウイルスや菌に対する防御システムがきちんと働くことで病気にかかりにくくなり、自律神経のバランスが整います。自律神経が整って体温が上がれば血管が広がり、血流もスムーズに。免疫細胞が全身をめぐりやすくなり代謝もアップ」(児玉先生)。「周囲の人が風邪をひいていても自分はひきにくい、疲労度が軽くなるなどが期待できます」(斎藤さん)

Q.副交感神経が優位なら問題ないでしょ?
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A.免疫異常のリスクが高まることも

「副交感神経が優位になると血管が拡張して血流がスムーズになり、胃腸も活発に動いてリラックスモードに。ただ、優位になりすぎたり、優位な状態がずっと続いたりすると、異物に過剰反応しやすくなるため免疫異常につながる可能性もあり、低体温、下痢、頭痛、暴飲暴食、かゆみ、かぶれなどの原因に」(児玉先生)。「まずは、寝る直前までスマホを見る習慣をやめるなど、自律神経を整えることに意識を向けて」(小林さん)

Q.でも、交感神経優位でもダメなんですよね?
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A.活性酸素が増えて不調の原因に

「交感神経が優位になるとアドレナリンが出て、アドレナリンの受容体を持つ顆粒球も増加。この顆粒球は役目を終えると活性酸素を出すので血流が低下し、免疫細胞の働きが悪くなります」(小林さん)。「活性酸素の増加は臓器の老化や不調につながります。血管収縮による冷えやむくみ、消化機能低下による便秘、リンパ球減少による免疫機能低下、不眠や暴飲暴食のほか女性ホルモンの分泌にも影響するため生理痛などのトラブルにも」(児玉先生)

Q.じゃあ、どんなバランスがベスト?
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日中と夜でスイッチするメリハリが理想
「朝から頭と体を動かして交感神経が高まると、その反動で夜には副交感神経優位に切り替わっていくのが本来のリズム。日中と夜とのメリハリをつけることが重要です」(小林さん)。「自律神経は、車でいえばアクセル(交感神経)とブレーキ(副交感神経)の関係。どちらか片方を踏み続ければ事故が起きます。ただ、自分の意思ではバランスを変えられないため、食生活や睡眠、温めなどで、バランスが乱れない環境を整えることが大切に」(児玉先生)


免疫力って、高ければ高いだけいいってものではなんですね。意外と知らなかったなんて人、多いのでは? 次回は下がってしまった免疫力をアップするスゴ技をご紹介予定。お楽しみに!

MORE2018年12月号・さらに詳しい情報は雑誌MOREをチェック!  取材・原文/国分美由紀 イラスト/二階堂ちはる