話題のステージの中から、キーワードに沿ったイチ押し舞台、そして2本のおすすめをご紹介します。

【今月のキーワード】躍動する大竹しのぶを目撃せよ!

日本が誇る名女優、大竹しのぶ。ドラマや映画では、たとえ出演シーンが短くとも印象に残る演技を見せ、バラエティ番組でもチャーミングな魅力を振りまく。エッセイでつづる文章も温かくユーモラスで、どれだけの才能を持っているんだろうと思わされる。でも、彼女が最も輝く場は、やはりステージの上! ときに“憑依型”とも評される抜群の演技力には圧倒されるばかり。今回『LIFE LIFE LIFE〜人生の3つのヴァージョン〜』は、舞台をぐるっと客席が取り囲むセンターステージ仕様。360度全方位的にあの唯一無二の存在感から発せられたエネルギーで満たされた空間は、想像するだけでワクワクしてくる。もちろん、ほかのキャストも魅力的。大竹の夫役には、数々の名舞台を共につくり上げてきた段田安則。もうひと組の夫婦は、舞台での活躍が著しい稲垣吾郎とともさかりえという新鮮な組み合わせ。同じシチュエーションから入口やトーンが少し違うだけで違う方向へ転がっていく“3つのヴァージョン”を演じる4人が、センターステージで繰り広げる演技バトルに、注目が集まる!

本作の上演台本と演出を手がけるのは、ケラリーノ・サンドロヴィッチ。研ぎ澄まされた言語感覚から生まれるシニカルな笑いと疾走感ある舞台づくりで、多くのファンを持つ。主宰する劇団「ナイロン100℃」も、93年の旗揚げ以来、ファンを増やし続けている。結成25周年記念として、昨年出版されたビジュアル本『ナイロン100℃ シリーワークス』は彼の魅力が詰まった読み応えたっぷり! 日本演劇界を代表する鬼才の創作秘話に触れてみて。
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【今月のイチ押し☆ステージ】『LIFE LIFE LIFE~人生の3つのヴァージョン~』

ある夜、天体物理学者のアンリ(稲垣)とキャリアウーマンのソニア(ともさか)の自宅に、翌日のディナーに招待していた上司のユベール(段田)とイネス(大竹)が突然訪れる。出せるのは、食べ残しのスナックくらい……。悲惨な状況から物語は始まる。フランスの劇作家ヤスミナ・レザの代表作。◆4/6〜30 Bunkamuraシアターコクーン ●シス・カンパニー ☎03・5423・5906
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【今月のイチ押し☆ステージ2】『ナイロン100℃ シリーワークス』

総監修をケラリーノ・サンドロヴィッチが務め、劇団の歩みを振り返る。44作目までの全作品の解説や写真、パンフレット、劇評などのほか、劇団員や出演俳優のコメントも多数。(白水社 ¥4700)

オススメステージは、『BLUE/ORANGE』と『春のめざめ』。

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『BLUE/ORANGE』

ロンドンの精神病院を舞台に、患者とふたりの医師が織りなす会話から権力、エゴ、偏見をえぐり出す。小川絵梨子の翻訳を、千葉哲也が演出。出演は初演時に読売演劇大賞優秀男優賞を受賞した成河と演出も務める千葉、成河が「再演はぜひ彼と」と共演を熱望した若手演技派の章平。◆3/29~4/28 DDD青山クロスシアター ●チケットスペース ☎03・3234・9999
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『春のめざめ』

ドラマ『今日から俺は‼』以降、人気急上昇中の伊藤健太郎が、約130年前に書かれたドイツの戯曲で舞台初主演を務める。岡本夏美と栗原類らと共に、社会の軋轢の中で苦悩する若者たちを演じる。演出は白井晃。Dragon Ashの降谷建志による音楽にも期待が高まる。◆4/13〜29(地方公演あり) KAAT神奈川芸術劇場 ●チケットかながわ ☎0570・015・415

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MORE2019年5月号・さらに詳しい情報は雑誌MOREをチェック! 原文/小泉咲子
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