アイドルの母はポルノ女優。欲望や葛藤、家族を描いた吉川トリコ著の長編小説『女優の娘』【オススメ☆BOOK】

最近発売された話題の本や永遠に愛される名作などから、キーワードに沿った2冊のイチ押し&3冊のおすすめBOOKをご紹介します。

【今月のキーワード】欲望と消費と幸せを描く物語

アイドルでいるために家族を捨てた主人公・斉藤いとのもとに、かつて世間を騒がせたポルノ女優・赤井霧子の訃報が届く。隠していた母の過去と現在、母という存在。舞台に立ち、光を浴びて、《夢とか希望とか応援とか癒しとか憧れとか愛とか現実逃避とか》さまざまな名前で呼び交わされる《欲望》を受け止める。それを生業に選んだ娘と母は、欲望によって消費されてしまう存在なのか? ときに聖、ときには俗の衣をかぶせられ崇められてしまうのは、女という性の必然なのか? 光に満ちたゆがんだ箱の中で、外で、人は消費されずに生きていけるのか? アイドルならずとも多くの人がぶちあたってきた、現実の肌感覚に根ざしたこの疑問に、作家・吉川トリコがまっすぐに対峙して、丁寧に答えを探していく。欲望されても、欲望しても、たとえ性をさらしたとしても、女の子はそんなことで汚されない。体も日常も人生も、すべては自分のもの。《泣かないで。こんなことぐらいであなたの価値は下がらない。だから、泣かないで》という言葉が、どこまでも真実の色をして光っている。

【イチ押しBOOK1】吉川トリコ『女優の娘』

アイドルの母はポルノ女優。欲望や葛藤、家族を描いた吉川トリコ著の長編小説『女優の娘』【オススメ☆BOOK】_1
現役アイドルの母がポルノ女優だった! というスキャンダラスなニュースによって注目を浴びる主人公。アイドルであり、女であり、娘であることの悔しさと葛藤を真摯に描き、家族のこと、働くことの新しい一面を見せてくれる長編小説。(ポプラ社 ¥1700)

【イチ押しBOOK2】くらもちふさこ『アンコールが3回』①

アイドルと家族を描いた作品といえば『アンコールが3回』ははずせない。1985〜86年、アイドル黄金期とも言われる時代に描かれた、歌手のようこと、敏腕マネージャー不破くんの物語。ふたりは実は極秘結婚をしていて……というスタートから、300ページを経て恋に着地する構造に、居場所を求めて揺れるアイドルの心の描写に、《うぬぼれてる女よりブスって悲観する女の方がキライ!》というセリフに、しびれっぱなしの名作漫画。
アイドルの母はポルノ女優。欲望や葛藤、家族を描いた吉川トリコ著の長編小説『女優の娘』【オススメ☆BOOK】_2
自分をスカウトした不破くんとの結婚を条件にデビューしたようこは、その圧倒的な「声」と存在感で人気を得る。まぶしいほどの冒険と成長を通し、アイドルとして、個人としての幸せを見つけ出す姿を描く。全2巻。(集英社 ¥780)

『川っぺりムコリッタ』『どうせカラダが目当てでしょ』『短編画廊 絵から生まれた17の物語』【オススメBOOKはこの3冊】

アイドルの母はポルノ女優。欲望や葛藤、家族を描いた吉川トリコ著の長編小説『女優の娘』【オススメ☆BOOK】_3
『川っぺりムコリッタ』/荻上直子
映画『かもめ食堂』の監督が目を向けたのは、川べりのアパートや塩辛工場、孤独と貧しさの隣で、日常からすくい上げられる小さな幸せと生きがいの手ざわり。現代日本を生きる人々のリアルが優しくて温かい。(講談社 ¥1500)
アイドルの母はポルノ女優。欲望や葛藤、家族を描いた吉川トリコ著の長編小説『女優の娘』【オススメ☆BOOK】_4
『どうせカラダが目当てでしょ』/王谷 晶
生産性も美醜も関係ない。あなたの肉体はあなたのもの! と、乳にはじまり髪、腹、足と、女のカラダをどんどこ肯定。《勝手に人のゼラチン質から物語を編むな》なんて明るい声が響く繊細なエッセイ集。(河出書房新社 ¥1350)
アイドルの母はポルノ女優。欲望や葛藤、家族を描いた吉川トリコ著の長編小説『女優の娘』【オススメ☆BOOK】_5
『短編画廊 絵から生まれた17の物語』/〈編〉ローレンス・ブロック 〈訳〉田口俊樹 ほか
アメリカの都市や郊外を描いたエドワード・ホッパー。その絵画をテーマに、スティーヴン・キングやマイクル・コナリーなどの作家が生んだ短編を集めた、読むギャラリーのような一冊。(ハーパーコリンズ・ジャパン ¥2200)

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