話題のステージの中から、キーワードに沿ったイチ押し舞台、そして2本のおすすめをご紹介します。

【今月のキーワード】宮崎駿作品、初の舞台化!

アカデミー賞長編アニメ映画賞に輝いた『千と千尋の神隠し』など、国内外で評価の高い宮崎駿監督。世界中で最も新作が待たれる監督のひとりだが、今回、オリジナル作品が国内で初めて舞台化されるといううれしいニュースが! その演目『最貧前線』は、1980〜90年代に模型雑誌でつづっていた『宮崎駿の雑想ノート』中の短編漫画。舞台は、太平洋戦争末期の東北の漁村。ほとんどの軍艦を沈められた日本海軍が苦肉の策として、戦いの最前線に監視艇として送り出した漁船に乗り込む漁師と兵士の交流を描く。主演は、ドラマ『きのう何食べた?』での好演が記憶に新しい内野聖陽。内野は、仲間の漁師たちを無事に帰そうと奮闘する船長を演じる。漁師たちと対立する若きエリート軍人役には、風間俊介や溝端淳平。ドラマや映画で人気を博す俳優たちだが舞台経験も豊富で、内野にいたっては、名門の「文学座」出身。舞台の上で、自らの肉体を通じて平和のメッセージを伝えてくれるだろう。戦争や平和を深く考えるきっかけとなる作品だが、宮崎監督らしいユーモアもちりばめられている。

本作の原作『宮崎駿の雑想ノート』から生まれ、豚の姿をした退役軍人を描いた『紅の豚』をはじめ、宮崎監督作品にとって“戦争と平和”は、いく度となく彼が向きあってきたテーマだ。監督と、監督が対談を熱望した太平洋戦争研究の権威である作家の半藤一利。ふたりが、『風立ちぬ』の公開期に日本の昭和史を語りあった『半藤一利と宮崎駿の腰ぬけ愛国談義』には、戦争を知らない私たち世代が知っておくべき知識やエピソードがあふれている。
宮崎駿の名作が舞台化!内野聖陽、 風間俊の画像_1
【今月のイチ押し☆ステージ】『最貧前線』
小さな漁船、吉祥丸が突然、監視艇として徴用される。決死の覚悟で小さな漁船に乗り込んだ若き軍人たちと、生還してまた魚をとると誓う漁師たち。対立する彼らの間に信頼が芽ばえるも、わずかな武器だけで南方の海に派遣されてしまう。◆10/5~13 世田谷パブリックシアター(8月より地方公演あり) ●水戸芸術館ACM劇場 ☎029・227・8123
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『腰ぬけ愛国談義』半藤一利・宮崎 駿
宮崎駿監督と昭和の語り部、半藤一利による対談を収録。一部では、夏目漱石好きという共通点からたちまち意気投合したふたりが、朝鮮戦争や日露戦争などを語る。二部のテーマは映画『風立ちぬ』と日本の未来。(文春ジブリ文庫 ¥570)

オススメステージは、『タクフェス第7弾 流れ星』と『里見八犬伝』。

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『タクフェス第7弾 流れ星』
結婚40年を迎えた夏子の前に、自称魔法使いのマリーが現れる。夏子は人生をやり直すため、昭和45年にタイムスリップ……そこで知らなかった事実が明らかになる。主演は田中美佐子。マリー役にはわれらがまりえってぃ(飯豊まりえ)、本作が舞台初挑戦となる。◆11/13~24 サンシャイン劇場(地方公演あり) ●サンライズプロモーション東京 ☎0570・00・3337
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『里見八犬伝』
8つの不思議な玉に導かれた犬士たちが、悪霊集団に立ち向かう超人気アクションエンターテインメント。犬士役には、佐野勇斗、松田凌、岐洲匠、神尾楓珠、財木琢磨と、映像作品での活躍がめざましい今をときめく若手俳優たちが勢揃い! 演出は深作健太。◆10/17~21 なかのZERO大ホール(地方公演あり) ●サンライズプロモーション東京 ☎0570・00・3337
原文/小泉咲子