話題のステージの中から、キーワードに沿ったイチ押し舞台、そして2本のおすすめをご紹介します。

【今月のキーワード】伝説の舞台が帰ってくる!

人気劇団「大人計画」を主宰する松尾スズキが、亡き蜷川幸雄に次いでBunkamuraシアターコクーンの芸術監督に就任することになった。シアターコクーンといえば、今年30周年を迎える渋谷の名劇場。「アングラな感覚を商業演劇に持ち込んだ」蜷川に対し、「不真面目な色気のある劇場にしていきたい」と松尾らしい抱負を発信し、演劇ファンの期待を大いに高めている。就任第1作目は、2000年に初演したミュージカル『キレイ-神様と待ち合わせした女-』。松尾らしいシュールな笑いを存分にちりばめながらも、戦争や民族紛争、少女監禁といったシリアスなテーマに踏み込み、演劇界に大きな衝撃を与えた伝説の作品で、今回が4度目の上演となる。主人公・少女ケガレに乃木坂46の生田絵梨花、大人になったケガレの伴侶となる青年ハリコナ役に小池徹平を据えるなど、近年ミュージカル作品で頭角を現している実力者を揃えた、松尾の本気度を感じるキャスティングに。さらに本作で舞台デビューを飾る神木隆之介が、おバカな少年時代のハリコナを演じるのも期待大!

物語の舞台となるのは、3つの国に分かれ100年間民族紛争が続く“もうひとつの日本”。10年ぶりに監禁生活から脱出したケガレが“ソト”の世界で出会うのは、大豆でできた兵士“ダイズ兵”の死体回収業で生計を立てているハリコナたち。そして、彼らを見守るのが、ミソギと名乗る成人した女性ケガレ。過去と現在、未来が交錯する不思議な物語が繰り広げられるため、まずは過去作を観て予習しておくと、キャストや演出の変化も楽しめるはず。
生田絵梨花や神木隆之介ら出演、ミュージカの画像_1
【今月のイチ押し☆ステージ】『キレイ-神様と待ち合わせした女-』
これまで出演もしてきた松尾スズキは今回、演出に専念。初参戦となる麻生久美子はミソギを、鈴木杏は生田演じるケガレの親友カスミに扮し、橋本じゅんが2005年ぶりに出演することも決定。阿部サダヲや皆川猿時、村杉蝉之助、荒川良々など、おなじみの大人計画の面々も登場する。◆12/4〜29(地方公演あり) Bunkamuraシアターコクーン ●Bunkamura ☎03・3477・3244
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『キレイ-神様と待ち合わせした女-』
ケガレ役を鈴木蘭々、ミソギ役を高岡早紀が演じた2005年版。今作では別の役を担当する、ハリコナ役の阿部サダヲの熱演にも注目! DVD¥6800(発売元:TBS 販売元:ポニーキャニオン)

オススメステージは、『月刊「根本宗子」第17号「今、出来る、精一杯。」』と『日本文学シアターvol.6 【坂口安吾】風博士』。

生田絵梨花や神木隆之介ら出演、ミュージカの画像_3
『月刊「根本宗子」第17号「今、出来る、精一杯。」』
女子の面倒くささや愛おしさ、男のどうしようもなさや可愛げを見事にすくい上げてきた根本宗子の代表作を音楽劇としてリメイク。劇団旗揚げ10周年イヤーのフィナーレにふさわしく、清竜人が音楽を担当するだけでなく、坂井真紀と共に主演を務める豪華な布陣に。◆12/13〜19 新国立劇場 中劇場 ●ヴィレッヂ ☎03・5361・3027
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『日本文学シアターvol.6 【坂口安吾】風博士』
日本文学へのリスペクトをこめた「日本文学シアター」シリーズの第6弾となるのは坂口安吾の作品から着想を得た北村想による新作戯曲。中井貴一、段田安則、渡辺えり、吉田羊らベテランに加え、趣里、林遣都ら若手実力派が花を添える。◆11/30〜12/28(2020年1月に大阪公演あり) 世田谷パブリックシアター ●シス・カンパニー ☎03・5423・5906
原文/松山 梢