世界的なバレーダンサーにも、私たちと同じ悩みがある!?

キャリア? 母になる幸せ? アラサー必見の画像_1
ぼんやりしていた30歳の輪郭がハッキリしてくる20代後半はもちろん、すでに30代に突入した人にとっても、子供を持つことを真剣に考えるタイミングは何度も訪れるもの。時間に限りがあることだとわかってはいるけれど、ようやくやりがいや楽しさを実感できるようになってきたキャリアだって、そう簡単に手放すわけにはいきません。このドキュメンタリ―映画のヒロイン・西野麻衣子も同じ。何十人ものライバルがポジションを狙っている、厳しいバレエの世界に身を置くプリンシパルだからなおさらです。 15歳で親元を離れ、名門英国ロイヤルバレエスクールに留学。19歳でノルウェー国立バレエ団に入団し、25歳で同バレエ団東洋人初のプリンシパルに抜擢された麻衣子は、30代になり、子供が欲しい気持ちとキャリアの間で心が揺れ動きます。 そんな中、期せずして妊娠が発覚。映画では出産を経て、再びプリンシパルとして復帰を目指す様子を追いかけていきます。しかも彼女が復帰作として選んだのは、プリマデビューを飾った「白鳥の湖」。「母親だからという配慮は無用よ」と言い切り、周囲の不安視する声を跳ね返しながらも、精神的に追い込まれ、肉体的に追い込みながら以前のレベルを取り戻そうとする姿はスリリングです。 特に注目してほしいのは、母親との大阪弁バリバリのやりとり。言葉が通じない異国で強烈なホームシックにかかった15歳の頃、「すぐに諦めて投げ出すな!」と厳しく励ましてくれた言葉は彼女の宝物です。ただし、ダンサーとしてトップに上り詰めた今、「そろそろ自分の人生も考えて。何もトップじゃなくても……」と、いちばん傷つける言葉をポロッとつぶやいてしまうのも、また母親。 実はそこには、かつてキャリアウーマンとして忙しくしていた頃、「そんなかわいい子を置いて仕事に行くの?」と言われ傷ついた母の苦い思い出も隠されていました。ただし結婚、妊娠、出産、子育て、そしてキャリアの築き方は、親子だとしてもそれぞれ別。何事にも100%でぶつかっていく麻衣子のタフなチャレンジ精神は紛れもなく母親譲りだけれど、自分の人生を夫と共に勇敢に切り開いていく姿は、もうホームシックでメソメソ泣いていた少女とは別人です。 本当の意味で親から巣立ち、子供を守る覚悟を決めた母親の強さと美しさに圧倒される本作。モア世代こそ必見ですよ! (文/松山梢) ●2月20日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー
映画『Maiko ふたたびの白鳥』オフィシャルサイト