12星座全体の運勢

「‟想定外”への一歩を踏み出す」

二十四節気で「穀物の種をまく時」という意味の「芒種」を迎えるのが6月5日。実際には麦の刈り取りの時期であり、どんよりとした天気の下で鮮やかな紫陽花やカラフルな傘たちが街をいろどる季節。そして6月6日に起きる射手座の満月は、いつも以上にエモの膨張に拍車がかかる月食でもあります。そんな今の時期のキーワードは「モヤモヤのあとのひらめき」。それは息苦しい勉強に退屈していた子供が、庭に迷い込んだ野良猫の存在に驚き、その後を追い路地を抜けた先で、今まで見たことのなかった光景を目にした時のよう。これから満月前後にかけては、現在の行き詰まりを打開するような‟想定外”体験に、存分に驚き開かれていきたいところです。

牡羊座(おひつじ座)

今週のおひつじ座のキーワードは、「大気を引き裂け」。

牡羊座のイラスト
昭和の時代に映画やテレビドラマにもなった石坂洋次郎の小説『山のかなたに』には、「雷が鳴りだした。大気をまっ二つに引き裂くような烈しい振動があり、赤い火箭(ひや)が竿(さお)を継ぎ足すように、ジグザグと鋭く走った」という表現が出てきます。

ここで読者は「大気を引き裂く」というスケールの大きな時空間の広がりを突きつけられると同時に、火をつけて放たれた矢が次々と連続して対象に突き刺さっていくような鋭いイメージを差し込まれることで、これから起こるであろう出来事がなにか運命的かつ決定的なものであることを予感するのです。

そもそも「雷」とは、「神鳴り」つまり神の「訪れ(音連れ)」であり、神が人間の力ではどうすることもできない運命を半ば強制する天の力の体験のことであり、それは地上の存在を圧倒しこなごなにする出来事でもありました。

生命はときにその不合理で、自然発生的な、カオスな側面を明らかにしますが、今のおひつじ座もまた、どこかで自分が圧倒されるような誰か何かとの関わりや、それによって眠っていたDNAが目覚めてしまうような体験を求めているはず。

みずから大気を引き裂き、雷鳴を促していくこと。それが今季のあなたのテーマと言えるでしょう。


出典:石坂洋次郎『山のかなたに』(新潮文庫)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ