12星座全体の運勢

「‟想定外”への一歩を踏み出す」

二十四節気で「穀物の種をまく時」という意味の「芒種」を迎えるのが6月5日。実際には麦の刈り取りの時期であり、どんよりとした天気の下で鮮やかな紫陽花やカラフルな傘たちが街をいろどる季節。そして6月6日に起きる射手座の満月は、いつも以上にエモの膨張に拍車がかかる月食でもあります。そんな今の時期のキーワードは「モヤモヤのあとのひらめき」。それは息苦しい勉強に退屈していた子供が、庭に迷い込んだ野良猫の存在に驚き、その後を追い路地を抜けた先で、今まで見たことのなかった光景を目にした時のよう。これから満月前後にかけては、現在の行き詰まりを打開するような‟想定外”体験に、存分に驚き開かれていきたいところです。

天秤座(てんびん座)

今週のてんびん座のキーワードは、「頭を真っ白に」。

天秤座のイラスト
村上春樹は1984年に発表した短編小説『タクシーに乗った男』の中で、「頭の中が真っ白になり、それが少しずつもとに戻るのにずいぶん時間がかかった」と書きました。

詳しいあらすじは省略しますが、これは作中である女性が、長年自宅に飾り眺めてきた"絵”の中の男にそっくりの人物と、旅先のタクシーでたまたま乗り合わせた時の描写です。

「強い光線が当たる部分が白くぼやける現象」のことをカメラ用語でハレーションと呼びますが、それが精神的なレベルで起きたものとイメージすればいいのかも知れません。

真っ白になっているあいだ、頭は何も考えていないという訳でなく、むしろ唸りを立てるほどのすごいスピードで懸命に情報を整理していて、「現実をきちんとした現実の枠の中に入れ、イマジネーションをきちんとしたイマジネーションの枠の中に入れ」ようとしている。

それは、今までの常識や現実感覚(普通は〇〇なら△△)をいったん捨てて、新しいそれを目の前のなまなましい情報から吸い上げ、再構築するまでの立ち上げ期間でもあったのではないでしょうか。

今季のてんびん座もまた、そうして過去の古びた常識や物の見方をできるだけあっさりと入れ替えられるよう、頭の中が真っ白になるような瞬間を心待ちにしていくといいでしょう。


出典:村上春樹『回転木馬のデッド・ヒート』(講談社文庫)
12星座占い<5/31〜6/13>まとめはこちら
<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ