12星座全体の運勢

「大きな物語に取り込まれていく」

6月21日の夏至の日の夕方16~18時にかけて、蟹座1度で部分日食(新月)が起こり、晴れていれば日本全国で欠けていく太陽が観測できます。これは日食と新月、そして一年のうち最も日が長くなる夏至が重なる特別なタイミングであり、時代の移り変わりの上でもひとつの節目となっていきそうです。そのキーワードは、「大きな物語」。これは例えば「むかしむかし、あるところに……」といった語りで始まる昔話のように、歴史ないし共同体のもつ空間的・時間的射程の中に自らを位置づけ直していくことで、個人として好き勝手に振る舞う自由を失う代わりに、手で触れられる夢のような生々しい物語の中へと取りこまれていく。今季はそんな"クラい”感覚の極致をぜひ味わっていきたいところです。

水瓶座(みずがめ座)

今週のみずがめ座のキーワードは、「誠の道」。

水瓶座のイラスト
日本近世においていち早く近代的な考え方を先取りし、それまで神聖視されてきた儒教や仏教の典籍の聖性を剥奪していった人物に、大阪の町人階級が生んだ天才・富永仲基(とみながちゅうき)がいます。

富永は、思想はすべて時代と地域の課題に応じて形成されたものであり、前の人の説に何か新しいものを付け加えたり、それを批判することで、後の人の説が形成されていくという「加上説(かじょうせつ)」を適用し、インドと中国と日本の文化を徹底的に相対化し、比較観察していきました。

著書『翁の文』では、「仏(ぶつ)は天竺の道、儒は漢(から)の道、国ことなれば、日本の道にあらず。神(しん)は日本の道なれども、時ことなれば、今の世の道にあらず」として、どの教えも彼が生きた18世紀当時の日本には適合しないとし、従うとすれば「誠の道」だろうと述べました。

これは上記の中では儒教の実践道徳に近いですが、親あるものには親に仕え、君あるものは君に仕えるという、「あたりまえをつとめ」ることの内に道を見出していたようです。

天賦の学才に恵まれた富永が、あらゆる思想を徹底的に相対化しつくした末にたどり着いたのが、日常生活の具体性であったというのは、現代人の目から見ても非常に新鮮に映るのではないでしょうか。

自分なりの働き方や美学ないしスタイルと呼ぶべきものを見直し、また改めて確立していこうとしている今季のみずがめ座にとっては、尚更のこと興味深いはずです。


参考:永田紀久・有坂隆道/校注『日本思想体系 富永仲基・山片蟠桃』(岩波書店)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ