「淀みや停滞を吹き流せ!」

いよいよ梅雨が明け、本格的な夏の到来に向け日に日に太陽がパワーを増していく二十四節気の「小暑(しょうしょ)」に入るのが7月7日。そして今回はその直前にあたる7月5日にやぎ座で満月を迎えていきます。テーマは「禊ぎと祓い」。

 すなわち、すでに時代遅れで何の支えにもなっていない空っぽの言説や価値観に絡まったままもがき続けるのか、それともまやかしやごまかしを切り捨てたところに今後の活動の土台や、大切にすべき礎(いしずえ)を見出していけるか。いずれかに分かれていくことになりそうです。

 かつて7月は、涼しい風が吹くのを待つことから「風待月」とも言われたそうですが、今回の満月前後にかけては、自分の内部や周囲に漂うよどみや停滞、行き詰まり感をどれだけ爽やかに吹き流していけるかが問われていくでしょう。

水瓶座(みずがめ座)

今期のみずがめ座のキーワードは、「脳味噌の手術」。

水瓶座のイラスト
小林秀雄は自身の集大成であり、批評という形式に潜むあらゆる可能性を提示した『モオツァルト』の中で、若き日の神秘体験について語っています。

ある冬の日、大阪の道頓堀あたりを犬のようにうろついていると、突然頭の中でモーツァルトの交響曲四十番ト短調のテーマが鳴り出しました。その時、音楽のことなどまるで考えていなかったため、自分の働きかけで脳裏に思い浮かべたメロディーとは思えかったものの、誰かが演奏しているかのようにはっきり聴こえたのだと言うのです。

小林はそのときの衝撃について、「脳味噌に手術を受けたように驚く」と書いていますが、無意識的な想像であれ幻聴体験であれ、いずれにせよ人間は耳だけでなく皮膚でも音を聞いていますから、道頓堀の街の喧噪やそこを行き交う人々とのふれあいの中で、もしかしたら何か共感できるものを見出して、それがたまたま知っている曲のメロディーに変換されたのかも知れません。

つまり、本来なら単に触覚的体験で終わるだけのものを聴覚的体験へと変換して体験していくことで、小林はそれ以前と以後とで人生を分けてしまえるような決定的な体験をした訳です。

今のみずがめ座の人にも、そうしたこれまで経験したことのないような感覚の取り合わせや融合(いわゆる「共感覚」体験)を通して"驚き”がもたらされやすいはず。

できるだけ感覚を研ぎ澄まし、そこに集中していける自分だけの時間を確保していきましょう。


出典:小林秀雄『モオツァルト・無常という事』(新潮文庫)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ