圧倒的な映像美とチャーミングなおじいさんに萌える映画『グランドフィナーレ』

圧倒的な映像美とチャーミングなおじいさんに萌える映画『グランドフィナーレ』_1
先日、70歳を超えたベテランの大女優に取材をした際、「いくら病を患っても、年齢を重ねても、死がどんなものかは想像もつかない。だから死なのよ」と言われ、目の覚める思いをしました。年齢を重ねれば人はおのずと死を受け入れ、生への執着も手放していくものだと(誠に勝手ながら……)思っていたからです。この映画の監督であるパオロ・ソレンティーノもまさに、「80歳を超えて生きる人たちが、明日について何を期待するのか」に興味を持ち、この作品の製作を始めたそう。

主人公は世界的な英国人音楽家のフレッド(マイケル・ケイン)。80歳を超えた今は現役を引退し、ハリウッドスターなどのセレブが宿泊するアルプスの高級ホテルで優雅なバカンスを送っています。同じホテルに宿泊しているのは、長年の親友で映画監督のミック(ハーヴェイ・カイテル)。彼らは食事中に会話のないカップルが言葉を交わすかどうかに賭けたり、ジャグジーで居合わせたミスユニバースの裸体に目をハートにしたり、くだらない会話に終始花を咲かせています。年老いてもなお男性は、精神年齢が中学生レベルだということをシュールに描くセンスは最高にチャーミングです。

そんなかわいいおじいさんふたりですが、対照的なのが芸術に対する情熱。現役にこだわり続け、若いスタッフたちと新作の構想に没頭しているミックに対し、フレッドは英国女王からの名誉ある指揮の依頼も頑に断り続けます。「若い頃は近くに見えるものが、年を取ると全て遠く見える。それが過去だ」という印象的な台詞が表すように、膨大な過去の記憶や後悔を抱え悲観の中で生きるフレッドが、どうやって今を受け入れ、限りある未来に一歩踏み出すことができるのか。生きることの切なさと尊さを描いた人生讃歌は、若い世代こそ見るべき作品です。さらに、フレッドの精神的旅路を表現した幻想的な映像と音楽は、圧巻の美しさ。“21世紀の映像の魔術師”と絶賛されるソレンティーノ監督による贅沢すぎる映像体験を、ぜひスクリーンで堪能してみて!

(文/松山梢)

●4月16日(土)より新宿バルト9、シネスイッチ銀座、Bunkamuraル・シネマ、シネ・リーブル池袋他全国順次ロードショー

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