本格的な共演は約7年ぶり。映画『アジアの天使』で兄弟役を演じたふたり。ロケ地はオール韓国、スタッフや共演者もほとんどが韓国の人たち。国境を超えて“映画制作”という旅に出たふたりが、出会い見つけたもの。

2021年MORE8月号掲載企画から、インタビュー記事をお届けします。
  • オダギリジョーさん、池松壮亮さん
    【池松壮亮×オダギリジョー】言語は通じなくても、心は通じる。「言葉を超えるもの」 アジアの天使 池松●日本と韓国、国籍の違うふたつの家族が旅をすることに。最初は“違う国の人”だったお互いがしだいにひとつになっていく……。価値観や常識の行き止まりを迎えている今、今作は絶対にやるべき作品だと思いました。 オダギリ●ソウルから江原道カンウォンドへ、僕らも撮影しながら旅をするような感覚で。異国の地で飲み語り、共に作品をつくり上げる時間はとても有意義でした。 池松●歴史的、政治的には日韓関係の難しい面もある中、神経を使う部分もありましたけど。ヒューマニティの面ではその分、みんなで手をつなぎ同じ方向を向き、いつの間にか
  • オダギリジョーさん、池松壮亮さん
    池松くんとオダギリさん オダギリ●時代の変化も含め、今の若い世代は作品との向きあい方も変わってきていて。なかには現場でゲームをしてるヤツまでいるんですよ(笑)。池松くんはスマホすら持ち込まない。“役者として”現場に居続けることができる人なんです。作品に対する挑み方や姿勢がまったく違う。今じゃ絶滅危惧種ですよ。そりゃあ、大切にしちゃいますよね(笑)。 池松●はははは!! ギリギリ若者の立場として言わせていただくと、この国にはカッコいい大人が少なくなったと思うんです。その中で、圧倒的に人としてカッコよくあり続けているのがオダギリさん。人として、クリエイターとしてのこだわりと品性がずば抜けている。そんな稀有な方がいる、それは年下の僕にとっても日本映画界にとっても財産だと思っていて。そこ、ちゃんと気づいてほしいです(笑)。
  • オダギリジョーさん、池松壮亮さん
    メクチュとサランヘヨ オダギリ●僕が演じる透の台詞に「メクチュジュセヨ(ビールください)とサランヘヨ(愛しています)さえ覚えていれば大丈夫」という言葉があるんですけど。ビールは僕らと韓国チームの距離をグッと縮めてくれました。なかでもとりわけ飲みたがる人がいて。それが韓国家族の兄役を演じたキム・ミンジェさん。 池松●で、毎回、酔って奥さんにテレビ電話をかけるんです。そのたび、僕たちまで画面越しに挨拶させられるっていう、不思議な日課ができていましたね(笑)。 オダギリ●現地では僕たちもいくつか韓国語を覚えました。その中のひとつが「モニャ」。日本語でいう「あの〜」みたいな、曖昧であまり意味を持たない言葉なんですけど。その語感が面白くて、作中の台詞に取り入れたり、気に入って使っていたら逆輸入方式で韓国チームの間でも流行しちゃって。現場でみんな「モニャモニャ」言ってました(笑)。 池松●大流行していましたね(笑)。僕の息子役を演じた佐藤凌くんがヒロインを演じているチェ・ヒソさんに恋をしたということもありました。役では繊細で寡黙な少年を演じているのですが、普段の彼はおしゃべりで。「この気持ちはどうすればいいんだ」と悩む彼に「絶対に伝えたほうがいい」、「まずは花を買うべきだ」なんて、日々、僕たちは行き帰りの車の中で恋愛相談に乗っていたんですけど(笑)。今振り返ると、あの時間がオダギリさんと僕を〝兄弟〟にしてくれたのかなって。凌に感謝です。 オダギリ●たしかに、それはあるかも。 池松●僕も照れ屋なところがあるので。凌がいなかったら、ここまでオダギリさんと話せていなかったかもしれない。 オダギリ●ちなみに、凌は今もチェ・ヒソさんに連絡してるらしいですよ。 池松●18歳になったら迎えにいくって言ってましたからね(笑)。
  • 映画『アジアの天使』
    ©2021 The Asian Angel Film Partners 『アジアの天使』 ひょんなことから共に旅をすることになった国籍の違うふたつの家族。旅をする中で心に傷を抱えた彼らはしだいに変化しひとつになっていく……。石井裕也監督がメガホンを取り描き出す、優しさとユーモアに満ちた新しい家族の物語。●7/2〜全国公開 [池松さん]服/すべて本人私物 [オダギリさん]コート¥54000・シャツ¥32000・パンツ¥39000/ETHOSENS of white sauce 靴¥62000/LAD MUSICIAN HARAJUKU(LAD MUSICIAN)