山崎育三郎さん&尾上松也さん&城田優さんという、演劇、ミュージカル、ドラマ、映画、バラエティ、歌舞伎と様々なジャンルで活躍する3人によるプロジェクト「IMY(あいまい)」。2015年の舞台の共演をきっかけに結成されたIMYにとって念願の初舞台『あいまい劇場 其の壱「あくと」』が、2021年11月~12月に公演することが決定しました。

“枠にとらわれずに新しいエンターテインメントをつくる”というIMYのヴィジョンを注ぎ込んだという本舞台の公演に向けて、お三方の鼎談をお届けします。IMYの成り立ちや、演劇には興味があるけれどなかなか踏み出せないMORE読者に向けて、舞台やミュージカルの魅力を訊きました!
  • 山崎育三郎さん、尾上松也さん、城田優さん
    (左から)山崎育三郎さん、尾上松也さん、城田優さん 『あいまい劇場 其の壱「あくと」』上演が決まるまで
    ──2015年に上演されたミュージカル『エリザベート』での共演をきっかけに結成されたというIMYですが、念願の初オリジナル作品『あいまい劇場 其の壱「あくと」』上演が決まるまで、どんな話し合いを重ねてきたのでしょうか。

    山崎育三郎(以下、山崎)「共演をきっかけに距離が縮まって、しょっちゅう3人でご飯に行くようなプライベートの友達みたいなところからスタートしてる関係性なので、3人でいるといつも話が脱線しちゃうんですけど(笑)。でもはじめから、エンターテインメントの舞台を作るにあたって『お互い何がしたいか』ということを話し合いのテーブルに乗せ、“何がベスト”かというのを話し合ってきましたね」
    ──「あくと」では俳優の成河(ソンハ)さんが初めて演出を手掛けられます。成河さんにはどんなことを伝えてオファーされたのですか?

    山崎「僕と成河くんと『エリザベート』というミュージカルでご一緒したんですけど、役へのアプローチや作品の捉え方が素晴らしくて。もちろん役者としても尊敬しているのですが、演出にも向いてるんじゃないかと思ったんです。それで僕が『一緒にやってみませんか』とお声がけをしました。僕らの想いとしては、まず第一に今までの概念にとらわれない新しいことをやっていきたいということ。だから今回、成河くんが演出を手掛けることも、(城田)優が脚本を手掛けることも、新人の清水美依紗が舞台に上がることも初めてで。あとチケット代金でも新しいチャレンジをしています。とにかく今までのものに捉われず、僕らが良いと思うもの、かっこいいと思うものを自由に突き詰めていきたいというところからスタートしてるんです」
  • 山崎育三郎さん
    山崎育三郎さん 1500円の“IMYシート”というチケット
    ──18歳以下を対象にした、1500円の“IMYシート”というチケットもあるんですよね。舞台に対して、敷居の高さを感じている層が、劇場へ足を運ぶ大きなきっかけになるのではないかと思いますが。

    城田優(以下、城田)「僕ら自身、若い頃はミュージカルのチケット代は高いと感じていました。男性や若い人が来づらいという感じもあるかもしれませんが、海外では老若男女問わずいろんな世代が劇場に足を運んでエンターテインメントを楽しんでいます。それを目指すために、ちょっとでも舞台に興味を持ってくださっている人たちや、学生でこれからエンターテインメントを勉強していきたいなと思ってる人が、実際に観に行く決意をしてくれる応援ができれば。そういう思いで低い価格帯のチケットをご用意しました」

    尾上松也(以下、松也)「この3人で5、6年かけてずっとこの舞台の話をしてきたので、とにかく今こうやって開催のために準備を進められてるのがすごく嬉しいです。僕らがやることが、今優が言ったようなことのきっかけづくりになったらいいなと思いますし。先輩方が作ってきてくださったいろいろなシステムは尊重しながらも、この第一回公演を機に、自分たちの世代の自分たちの世界をどんどん作っていきたいと思っています」
  • 城田優さん
    城田優さん 城田さんが初めて手掛けた脚本
    ──「あくと」は4話からなるオムニバスということですが、そのうちの1話分の脚本を、城田さんが初めて手掛けられていますよね。

    城田「僕らは演じる側でもあり、普段から、芝居やミュージカルを観に行ってあーだこーだ好き勝手言っている側の人間でもあります。それで、“今までの固定概念を壊そう”という思いがある中で、サスペンスの要素がある演劇ってあまりないなと考えたんです。それで、一緒に推理をしていくようなもので、物語の深さやキャラクターを僕なりに書いていったら面白いんじゃいないかという話になって、実際に書いてみることに」
    ──脚本の内容を、山崎さんと松也さんに相談したことで変更した部分はありました?

    城田「一回全部書いてふたりに見せたら、『ちょっとダークすぎる』って言われました(笑)。あと、エンディングはもう少しこうした方がいいんじゃないか、とアドバイスをもらったり。その後、一番の大ボスである成河くんに見せたわけなんですけど。成河くんはたくさん演劇を観てきて知識も豊富で、オーディションみたいな感じでめちゃくちゃ怖かったんです(笑)。そうしたら、『面白いよ。すごくいい』って言ってくれたので、ホッと胸をなで下ろすことができました。作品を具現化する一番の立場は演出家なので、演出家が面白いと思ってくれるかどうかが脚本家にとって一番大事ですからね」
  • 尾上松也さん
    尾上松也さん 山崎さん尾上さん城田さんが考える“舞台の魅力”
    ――さまざまなジャンルでご活躍されているお三方だからこその、“舞台の魅力”を教えてください。

    城田「僕は演出もやるんですけど、映画やドラマは、演出家が決めたカット割りに従って観客の皆さんは物語を追っていく。登場人物の表情や状況はあれど、例えば監督が『ここはアップで』と判断したら、その人のその角度の表情しか映らない。監督が『ここはツーショットで』と判断したら、それ以外のものは映らないですよね。一方、生の舞台は、ミュージカル、演劇、歌舞伎も含めて、もちろん演出家が演出をつけますが、最終的にどこを見るかはお客さんに委ねられているんです。アップの表情が見たければオペラグラスで見ることができるし、舞台全体を見たければそうしますよね。必ずしもセリフを喋っている人間を見なくてもよくて、自分でディレクションができるので、『今日はこの人を追ってみよう』とか、違う画角で何度でも楽しめるんです。日によって温度感も全く異なるので、その時そこでしか観られないものというのが、確実にある。そこが魅力だと思います」

    山崎「僕も優の話しと似ているのですが、ドラマや映画は最終的に監督がどこをどう使うかという意図が反映されて作品になるんですよね。舞台の場合は、何ヵ月も演出家といろんなことをすり合わせて稽古してきても、最終的に本番で何を発するかは自分の責任なんです。役者としてそこは燃えますよね。それに、相手役によって自分の感じ方も変わってくるし、昼公演と夜公演ではお客様のテンションが変わっていたり、あと雨が降っていると音が響かないとか、逆にカラッとしてると声がスコーンと抜けたり、劇場によって空気が違ったり。本当にちょっとしたことですべてが変わっていくんです。そういうことを全部敏感に感じながら芝居をしていくので毎回新鮮ですし、そこに居た人にしか味わえない瞬間があるのが、舞台というライブの一番の魅力だと思います」

    松也「ドラマや映像は、自分が発するエネルギーをカメラが収めてくれるので、感情の交錯さえあれば、あとは監督やカメラマンさんといったスタッフの方が仕上げてくださる。ですが舞台は、前方にも後方にもエネルギーを飛ばしていないと伝わらなかったりするんです。僕は舞台でずっと育ってきたところもあって、それができた時の達成感はすごくありますね。それから、育も優も今言っていましたけど、感情の1つ1つをお客さんと共有できるんですよね。もちろん映画もドラマも人に感動を与えるけれど、お客さまが作品に対してどう反応をしているかは、それこそ映画だったら上映している劇場へ行かなくては分からないですし、ドラマでしたらモニタリングしながら観ないと分からなかったりする。でも舞台は違う。自分たちが、『この場面ではこういう風に笑いや感動が起きるかな』と予想していたところとは全然違うところで反応が起きるのも面白いんです。それによって僕らの芝居も自然と変わったりしますし。その、“お客さまとのキャッチボール”は、生の舞台でないと感じられない面白さです。コロナ禍において、配信で舞台が観られるシステムがどんどん生まれていますが、生で観ることの魅力を僕らも伝えていくべきですし、そのうえでのシステムづくりを考えないといけないと思っています」
    熱く真剣に舞台への想いを話してくれたIMY。でも、ひとりが話してる横ではほかのふたりが冗談を飛ばしていたりと、厚い信頼関係があるからこその仲の良さが終始溢れていました。そんな3人の仲にぐっと迫る後編の配信は9月の予定です。お楽しみに!
  • 山崎育三郎さん
    山崎育三郎(やまざき いくさぶろう) 1986年1月18日生まれ 東京都出身 2007年にミュージカル『レ・ミゼラブル』のマリウス役に抜擢されて以降、その甘く気品のある歌声、 確かな演技力で多くの観客を魅了。 主な出演作品として『エリザベート』、『ミス・サイゴン』、『プリシラ』などがある。 2017年には、実写映画『美女と野獣』(2017年)日本語プレミアム吹替版では野獣役を担当。近年は 映像の世界でも活躍の幅を広げ、2018年にNHKで放送された『昭和元禄落語心中』の有楽亭助六 役で、第14回「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」助演男優賞を受賞。昨年放送された連続テレビ小 説『エール』では歌手佐藤久志役を熱演し、同年「第71回 NHK 紅白歌合戦」ではドラマ共演者ととも にスペシャルパフォーマンスを披露。2021年は、ドラマスペシャル『殴り愛、炎』主演・明田光男役、『 イチケイのカラス』井出伊織役、NHK大河ドラマ『青天を衝け』伊藤博文役で出演。 今年舞台では『モーツァルト!』で4度目となる主演を務めた。また6月からは、初となるフルオーケ ストラコンサートツアーが開幕。
  • 尾上松也さん
    尾上松也(おのえ まつや) 1985年1月30日生まれ 東京都出身 父は六代目尾上松助。屋号は音羽屋。 1990年5月『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』鶴千代で、二代目として尾上松也を名乗り初舞 台。 2009年より歌舞伎自主公演「挑む」主宰。若手歌舞伎俳優の登竜門「新春浅草歌舞伎」では年長者としてリーダー的な立場を務めるなど次代を担う花形歌舞伎俳優のひとり。さらにドラマ・情報バラエティなど のテレビやミュージカルなど歌舞伎以外の多方面の仕事にも意欲的に取り組み、活動の幅を広げ ている。最近の主な出演作に舞台『エリザベート』(2015年)、『メタルマクベスdisc2』(2018年)、ドラマ 『半沢直樹』(2020年)、映画『すくってごらん』(2021年)など。また、2021年4月には歌舞伎座「四月大 歌舞伎」の『勧進帳』で富樫左衛門を務めた。
  • 城田優さん
    城田 優(しろた ゆう) 1985年12月26日生まれ 東京都出身。2003年に俳優デビュー以降、ドラマ、映画、舞台、音楽など幅広いジャンルで活躍。代表作に、ドラマ「ROOKIES」「交渉人〜THE NEGOTIATOR〜」大河ドラマ「天地人」、映画「亜人』等がある。舞台では2010年にミュージカル「エリザベート」で第65回文化庁芸術祭「演劇部門」新人賞を受賞、2018年ミュージカル『ブロードウェイと銃弾』で第43回菊田一夫演劇賞を受賞、2021年ミュージカル「NINE」で第28回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞するなど数々の賞を受賞。2016 年には「アップル・ツリー」で演出家デビュー。2019年版「ファントム」では演出・主演を努めた。ブロードウェイ・ロンドンのウエストエンドで活躍する世界のミュージカルスターが出演する公演「4Stars」への出演、ディズニー作品の実写版「シンデレラ」や「2分の1の魔法」の日本語吹き替え出演、カバーアルバム「Mariage」をリリースする等多方面で活動中。また、米倉涼子との初舞台共演&共同プロデュースで贈るエンターテインメントショー「SHOW TIME」が話題に。現在、TBS系日曜劇場「TOKYO MER~走る緊急救命室~」に出演中。
  • 「あくと」ポスタービジュアル
    あいまい劇場 其の壱「あくと」作品情報 作品概要 ミュージカル?ストレートプレイ? ショー? ジャンル不問のエンターテイメント要素がたっぷりつまったIMY オリジナル4 話のオムニバス!! 山崎育三郎・尾上松也・城田優の3人が、2015年ミュージカルでの競演を機に自分たちの感性で、オリジナル作品を製作したいという思いを共有し、3人の名前の頭文字から「IMY」と名付け、2019年より始動したプロジェクト。その舞台公演・第1弾『あいまい劇場 其の壱「あくと」』 演出は、ミュージカル、ストレートプレイ、1人芝居など様々な舞台で大活躍中の成河が、本舞台で初演出を手掛けます。脚本は、「あたらしいエクスプロージョン」で第62回岸田國士戯曲賞を受賞し、テレビドラマ「あなたの番です」では全話脚本を手掛け、今年は作・演出を務める「衛生」で初ミュージカルに挑戦するなど各方面から注目の福原充則。新しい挑戦をしたいというIMYからのオーダーにこたえ、福原が3話を書き下ろしました。そして、もう1話を城田が初めて脚本にチャレンジし、全4話のオムニバスで構成されます。音楽監督は、様々なミュージカルや舞台で演奏はもちろん、自身で作曲し楽曲提供も手掛ける桑原まこ。バンドメンバーと共に生演奏で舞台を彩ります。出演は、IMYの熱烈オファーにより出演が実現したキムラ緑子、皆本麻帆。そして、山崎が自身のドキュメント番組でNYに行き、現地のミュージカル校で出会った清水美依紗。清水はディズニープリンセスにスポットを当てた世界的なプロジェクト「アルティメット・プリンセス・セレブレーション」の日本版テーマソングの歌手に起用されるなど、大注目のシンデレラガール。IMYの大抜擢により、今作が初舞台となります。IMYの思いに共感してくれたクリエイターやキャストが集結し、創り出すオリジナル作品にご期待ください。 ●公式サイト https://imytheater.com/
撮影/花村克彦(ロケ分) 取材・文/小松香里 スタイリスト/百瀬 豪 ヘア&メイク/松原美穂(Nestation/山崎さん分) 岡田泰宜(PATIONN/尾上さん分) 本岡明浩、宮崎恵子(城田さん分)