恐怖! イム・シワンの“日常の顔をした犯罪者”っぷり

韓国ドラマ大好き!なライターがおすすめしたい作品を紹介する不定期連載コラムです。
今回は、どこにでもいる会社員がスマホを落としたことから始まる、どこにもない恐怖体験を描いたサスペンス・スリラー映画『スマホを落としただけなのに』のあらすじと見どころを紹介します。

スマホを落としただけなのに イムシワンソロカット

終始こんな感じなんですよ、ジュニョン(イム・シワン)って。綺麗なのに怖い。

『スマホを落としただけなのに』

映画
出演:チョン・ウヒ、イム・シワンほか
Netflix映画『スマホを落としただけなのに』独占配信中

あらすじ

帰宅途中に大事なスマホを紛失してしまった、平凡な会社員ナミ(チョン・ウヒ)。スマホを拾ったジュニョン(イム・シワン)は、スパイウェアをインストールしてナミに届ける。その日からジュニョンナミの日常生活を監視し始める。居場所から趣味、好み、仕事、お金、SNSに至るまで、全ての情報を知り得た上でナミに近づいていく。
一方、連続殺人事件を捜査しているジマン(キム・ヒウォン)は、事件現場で、数年前に家出した息子ジュニョンの痕跡を発見。最悪の結末を想定しながら、秘密裏にジュニョンの居場所を探るのだが……。

スマホを落としただけなのに ジュニョン(イム・シワン)ソロカット

拾ったナミのスマホをまるで自分のスマホを見ているかのようにのぞくジュニョン(イム・シワン)。怖い!

ここが見どころ

みなさん、2024年12月26日が何の日か知っていますか? 
そう、世界的ヒットを記録した『イカゲーム』のシーズン2配信の日です!
今回、取り上げる作品の主人公は、『イカゲーム』シーズン2に新規参戦する俳優のイム・シワン。ボーイズグループZE:Aのメンバーとして2010年にデビューし、現在はドラマや映画に活躍の場を広げ、好青年から狂気キャラまで幅広い演技力で存在感を高めている彼。本作では、自らの罪深さを露ほども気にしていないどころか、それを楽しむかのような悪役ぶりを見せつけ、ヒロインと視聴者を翻弄するジュニョン役を怪演し、視聴者をお茶の間から極寒の地獄へと突き落としてくれています! 
そんなわけで、みどころをポイントを紹介しますね。

「スマホを置き忘れる」という些細なミスから始まる白日のナイトメア

キャッシュレスが定番となった現在、スマホを落としたら何にもできないし、万が一、悪意を持った人間に拾われたら、個人情報を抜き取られて詐欺事件へと発展する可能性も否めませんよね。
そんな身近な恐怖を緻密に描いたのが、映画『スマホを落としただけなのに』。元々は日本でヒットした同作品を韓国がリメイク。といっても、「スマホを落とす→危ない人物に拾われて、ヒロインが大変なことに」という大まかな設定は同じですが、それ以外は全く異なるストーリーです。
たとえば、日本版で軸となるのは「被害者カップルの恋愛」や「幼少期のトラウマ」。本作の場合、起こるハプニングすべてがオリジナル。スマホを通じて、何もかもが監視されているヒロインの描写は、巧妙&リアルすぎて不気味としか思えません……。スリリングなかつ容赦のない展開にゾゾッ!

スマホを落としただけなのに ナミのソロカット

スマホを落としてから身に覚えのないトラブル起きに見舞われ、次第に孤立するナミ(チャン・ウヒ)。

スマホを落としただけなのに ジュニョン(イム・シワン)とナミ(チョン・ウヒ)2ショット

身分を偽ってナミに近づくジュニョンと、彼を訝しげに見つめるナミ。

犯人はイム・シワンだと、最初から明かすところが怖い

韓国版では、イム・シワン演じるジュニョンが、正体を隠しながら主人公・ナミに近づき、彼女の人間関係をひとつひとつ壊して、孤独にしたところで牙をむく……のですが、もう最初から犯人が明かされます(笑)。「犯人を明かしちゃったらつまらないじゃない!」とぷんすかモードに入る方もいるかもしれませんが、安心してください。この描写がのちに、ボディーブローのようにジワジワと効いてきます。終盤に埋め込まれた地雷のようなどんでん返しによって、犯人を知っているにも関わらず、背中がゾワ~とすることでしょう。

スマホを落としただけなのに スマホを眺めるジュニョン(イム・シワン)

拘束した被害者の横で、他人のスマホチェックに余念のないジュニョン(イム・シワン)。

イム・シワンがただただ怖い

スマホを落としただけなのに ジュニョンとナミ父スンウ(パク・ホサン)2ショット

ナミの父、スンウ(パク・ホサン)が営業するカフェまで押しかけるジュニョン。怖い!

イム・シワンのイメージを花言葉風に言うと「清廉潔白」「善良な市民」。端正なルックスに謙虚さまで持ち合わせたミスター・パーフェクトなんですけれど、そんな彼からにじみ出る美しさは気高さまで感じるほど。そんなイム・シワンが犯人を演じるのですから、ああ怖い、もう怖い、そら怖い。サイコなキャラクターは、往々にして「ぎゃはは!」「あははは!」といった奇声を上げるイメージがあるのですが、本作のジュニョンは、そんなありきたりのサイコパスではありません。静かに狂っているのです。落ち着き払った様子で、優雅な笑みを浮かべながら、ナミをエスコートでもするかのごとく、やさしく、ジワジワと孤立させ、追い詰めていきます。

スマホを落としただけなのに イム・シワンのソロカット

暗闇でナミのスマホをチェックするジュニョンが無表情すぎて怖い!

キュウソネコカミ系ヒロインが怖い

スマホを落としただけなのに ナミとその親友ウンジュ(キム・イェウォン)2ショット

ナミとその親友ウンジュ(キム・イェウォン)。そして彼女も……。

日本だと、ヒロインは受け身、守られるというパターンが多いですよね。その原則にのっとり、日本版では、監禁されたヒロインが救出されて、一件落着という流れ。しかし、韓国版では警察の捜査に協力したヒロイン父娘が殺されそうになりつつも、最終的には犯人に立ち向かっていくのです。

イム・シワンのサイコパス演技で、前半はすっかり忘れておりましたが、相手の女優はあのチョン・ウヒ。「ガンをつける」演技をさせたら、右に出る者はいない“ガンくれ猛者”ですよ!(彼女の仕事ぶりが気になる方は、映画『哭声/コクソン』『悪の偶像』をチェックしてみてください。とにかく圧がすごい!)
チョン・ウヒVS イム・シワンのサイコパスというか恐怖対決ともいえるラストのシーンは、本当に見ごたえありです!

いかがでしたか? あまりにも身近な「スマホ」からはじまるサスペンスには、「もしかして自分のスマホも……」と思わずにいられない、足元から忍び寄る恐ろしさを感じますよね。個人的には「スマホが怖い」とか「スマホと距離を置こう」という気分より、ナミのスマホを見ながら恍惚とした表情を浮かべるジュニョンが思い出されて、「自分は彼のような表情になってはいないだろうか」と、慌てて表情管理をし始めてしまった自分にゾッとしました……。
『イカゲーム』シーズン2配信まであと少し。刺激不足の夜には、サイコパスなイム・シワンを注入するのはいかがでしょうか。

スマホを落としただけなのに ナミソロカット

信頼している人たちが続々と自分と距離を置いていくという恐怖。

作品概要

スマホを落としただけなのに
出演:チョン・ウヒ、イム・シワンほか
Netflix映画『スマホを落としただけなのに』独占配信中

スマホを落としただけなのに|Netflix(ネットフリックス)独占配信中
ライター
中川薫

Kカルチャー・旅・お酒・漫画・音楽・スポーツ観戦好きのライター。ドハマりしたK沼が旅沼に直結し、年間十数回は海外へ。マイブームは「海外の大衆食堂をめぐること」。2023年は釜山&ソウル(韓国)、バンコク&ブリーラム(タイ)、ホーチミン&ハノイ&ダラット(ベトナム)、コロンボ(スリランカ)、リヤド&ジェッダ(サウジアラビア)で爆食。2024年はソウル、ソウル、台湾、ソウルへ。さらに東アジア最大のレインボーパレードである、台湾LGBTプライドパレード「臺灣同志遊行」にも参加。