舟越氏が最期まで力を注いでいた展覧会が、ついに実現

舟越氏が最期まで力を注いでいた展覧会が、ついに実現

《樹の水の音》2019年 楠に彩色、大理石  93×46.5×31cm 
西村画廊蔵  Photo: 今井智己  © Katsura Funakoshi  Courtesy of Nishimura Gallery
※この写真は所蔵者の許可を得て撮影しています。実際の展示風景と異なります。

彫刻の森美術館は、開館55周年を記念して、彫刻家 舟越桂氏(1951~2024年)の展覧会を2024年7月26日(金)~11月4日(月・休)の会期で開催します。

自然の中で人々と芸術家が交流する場として誕生した日本で初めての野外彫刻美術館である『彫刻の森美術館』。作品は芸術家の言葉であると考える当館が、周年を記念した展覧会にと2023年3月に舟越桂氏に依頼したことから本展の企画が始まり準備が進められてきましたが、2024年3月29日 舟越氏桂氏が逝去されました。本展は、最期までこの展覧会の実現を望み、励んでくださった作家本人の意思と、ご遺族の意向を尊重し開催されます。

「舟越桂 森へ行く日」展示構成・見どころ

展示室1 ー 僕が気に入っている ー

《DR1002》2008年 紙にアクリル J. Suzuki蔵 © Katsura Funakoshi Courtesy of Nishimura Gallery

《DR1002》2008年
紙にアクリル
J. Suzuki蔵
© Katsura Funakoshi Courtesy of Nishimura Gallery

舟越氏のまわりは、いつも自身が気に入っているものに囲まれています。そしてそこには必ず舟越氏の手ざわりの跡が残されています。それはアトリエであっても、どこであっても変わることがありませんでした。

代表作のひとつ《妻の肖像》(1979-80年)は、舟越氏のアトリエに大切に置かれています。展示室1の前半部分では、日々の創作活動を垣間見れるデッサンやメモ、舟越氏が実際の制作に使っていた手製の作業台やデッサン用の一本足のイスなどが展示されます。

展示室1の後半部分では、病室の窓から見える雲がきっかけとなって生まれた「立てかけ風景画」を展示します。厚紙の裏に鉛筆で描かれた幻想的な風景画。舟越氏はこれを繰り返し描いては食事で出されるヨーグルトのカップで作った台に立てかけ眺めていました。

展示室2 ー 人間とは何か ー

《「私は街を飛ぶ」のためのドローイング》2022年 紙にオイルパステル Photo: 後藤 渉

《「私は街を飛ぶ」のためのドローイング》2022年
紙にオイルパステル
Photo: 後藤 渉

「日々、世界で起こる戦争や紛争には怒りや憤りを感じます。しかし人にはそれぞれ役割があり、自分は怒りや悲しみをぶちまけるのではなく、人間の存在を肯定していきたいのです。」と語る舟越氏は人々が抱える孤独や矛盾、二面性にも目を向けます。

展示室2は、「人は山ほどに大きな存在なのだ」と感じた体験がもとになって生まれた彫刻《山と水の間に》(1998年)、「相反する自分」という考えから生まれた胴体が後ろ前の人物や、支え合って生きる人間の姿を描いたドローイング《雪の上の影》(2002年)などで構成されています。

展示室3 ー 心象人物 ー

《海にとどく手》2016年 楠に彩色、大理石、雑木 個人蔵 Photo: 齊藤さだむ © Katsura Funakoshi Courtesy of Nishimura Gallery

《海にとどく手》2016年
楠に彩色、大理石、雑木
個人蔵
Photo: 齊藤さだむ
© Katsura Funakoshi Courtesy of Nishimura Gallery

一貫して人間の存在をテーマにしながら様々に変容を遂げる作品を舟越氏は自ら「心象人物」と名付けました。最初のイメージから言葉が見つからないままに制作を始めた《水に映る月蝕》(2004年)について、舟越氏はのちに“浮く“というイメージを見出し「それは現実から少し解き放たれることであり、そうであればそれは“祈り“の思いや行為に姿を与えたのかもしれない。」と語っています。

展示室3では、東日本大震災がきっかけとなって制作された《海にとどく手》(2016年)、人間のすることを丘の上から見続けているスフィンクスをイメージした《戦争を見るスフィンクスⅡ》(2006年)などで構成されます。

「世界を知るとは?」というスフィンクスの問いかけに「自分自身を知ること」と少女が答える場面に感銘を受けた舟越氏は、両性具有の身体と長い耳を持った、人間を見続ける存在としての「スフィンクス」を題材にした作品を多く残しました。

展示室4 ー『おもちゃのいいわけ』のための部屋 ー

1997年に『おもちゃのいいわけ』という一冊の本が生まれました。舟越氏が家族のために作ったたくさんのおもちゃ達が、姉・末盛千枝子氏によって出版されたものです。長く愛され続けてきた一冊が、本展覧会にあわせて27年ぶりに増補新版として刊行されます。展示室4は、刊行を記念して「木っ端の家」や「クラッシックカー」といった往年のおもちゃ達とともに、新たに本に加わるものの中から「立ったまま寝ないの!ピノッキオ!!」(2007年)、「あの頃のボールをうら返した。」(2019年)などで構成されます。

そして、入院中も絶えず描いていた創作のためのイメージデッサン。創作の源ともいえるその貴重な内容を舟越氏が自ら語った映像で紹介します。

「舟越桂 森へ行く日」開催概要

「舟越桂 森へ行く日」開催概要

会期 2024年7月26日(金)〜2024年11月4日(月・振)
会場 彫刻の森美術館
住所 250-0493 神奈川県足柄下郡箱根町ニノ平1121
展示室 彫刻の森美術館 本館ギャラリー
時間 9:00〜17:00(⼊館は閉館の30分前まで)
休館日 年中無休
観覧料
大人 2,000 円、大学・高校生 1,600 円、中学・小学生 800 円、未就学児 無料
※Webチケット割引、団体割引、障害者割引あり ※学生の方は証明書を提示
TEL 0460-82-1161

詳細は「舟越桂 森へ行く日」特設サイトをチェック!