【高知】日本有数の「白拍子」として舞台に立つ女性に迫る。“幻”とされた伝統芸能の魅力とは【前編】
MORE編集部
日本全国「It girlの履歴書」- 高知県土佐郡土佐町
東京大学卒業後、大手ネット広告代理店に就職。しかし28歳の時に一念発起し、縁もゆかりもない高知県土佐郡土佐町に移住を決める。地域おこし協力隊として生活しながら、「『白拍子カッコいい!』と言ってもらえるようにがんばります」と語る彼女の生き方に迫る。【前編】をお届けします。
白拍子として歌舞を奉納する荒木映里奈さん
⚫︎ History ⚫︎
1995
三重県四日市市生まれ
2014
東京大学に入学
ストリートダンスに出合う
2017
上海留学
2019
大手ネット広告代理店に就職
桜井真樹子師に白拍子舞を師事
2023
高知県土佐郡土佐町に移住
各地の神社仏閣にて奉納活動を開始
#Lifework
幻とも言われる芸能「白拍子」。その前衛的なスピリットに共感し、白拍子舞を追求している。
雅楽と白拍子舞をコラボした土佐神社での奉納舞踊。※写真は荒木さん提供
平安時代の男性の装束・水干(すいかん)に、朱色のはかま、立烏帽子(たてえぼし)と太刀を身につけ、凜とした姿で舞台に立つのが、白拍子の荒木映里奈さんだ。白拍子は平安時代末期から鎌倉時代にかけて流行した歌舞の一種で、男装をして歌い舞う。荒木さんも、神社仏閣などからの依頼を受け、舞踊を奉納している。
「白拍子にまつわる文献はあまり残っていません。私が師事した桜井真樹子先生は、その復元に尽力している方のひとりです。わずかな歌譜や資料をもとに、“当時はこうだったんじゃないか”という解釈をして再現しているものが、現代の白拍子です」
白拍子という選択をなぜ?
「小学生の時にNHK大河ドラマ『義経』で石原さとみさん演じる白拍子の静(しずか)にとても憧れました。ストリートダンスに夢中だった大学時代を経て、桜井先生に弟子入りをしました」
自分の体の声に耳を傾けると自然と美しい動きになるんです
「『心で舞う』が私の白拍子スピリット」。土佐町の有形民族文化財「南川 大谷寺舞堂」で舞を披露。※写真は荒木さん提供
現在活動をしている白拍子は10人ほどだという。
「京都や東京、宮崎にも。高知県在住の白拍子は私だけですね」
ストリートダンスから白拍子へと舵を切った理由は何だろうか。
「当時の白拍子は決まった型ではなく、その場の空気に合わせて即興で舞い踊る、“舞そのものを楽しむスタイル”だったそうです。ストリートダンスにも通じるその白拍子スピリットに強く惹かれました。いつか、“伝統芸能”というフィルターがなくても感動してもらえる、人の心に訴えかけられる、そんな舞ができるようになったらうれしいですね」
雅楽と白拍子舞をコラボした土佐神社での奉納舞踊。※写真は荒木さん提供
「周囲の方々のクチコミからご縁が広がり、最近は神社仏閣での奉納舞踊の依頼が増えてきました。訪日外国人向けのツアーに白拍子舞を組み込んでいただくことも。“今様(いまよう)”と呼ばれる当時の流行歌などを、男装した女性や稚児が歌いながら舞っていたようで、その時代にはかなり斬新なものだったようです」
Photo : Atsuko Kitaura Text : Kaoru Nakagawa ※MORE2025年春号掲載