“やんばるの森 × アート”で、沖縄春旅の新スタイルを楽しもう!
『やんばるアートフェスティバル 2022-2023』
今度の休日は、沖縄で、海と大自然に抱かれたアートをめぐる旅はいかがでしょうか?
2023年4月9日(日)まで、大宜味村を中心とする沖縄本島北部エリアにて開催中の
『やんばるアートフェスティバル 2022-2023』が話題です。実際に現地を訪れたエディター沖島が、おすすめの展示や見どころを徹底ガイドします!
『やんばるアートフェスティバル』って?
“やんばる”という愛称で親しまれている沖縄県北部は、2016年9月に「やんばる国立公園」に指定され、さらに2021年7月「奄美大島、徳之島、沖縄県北部及び西表島」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産に登録されるなど、国内外から注目されているエリアです。
そんなやんばるの豊かな自然や資源といった魅力を世界へ発信する役割を担うのが、アートとの融合プロジェクト『やんばるアートフェスティバル(以下、YAF)』です。大宜味村を中心とする名護市・本部町・国頭村・東村・今帰仁村などの自治体と、地方創生事業に熱心に取り組むエンターテイメントカンパニー・吉本興業がタッグを形成。沖縄本島北部エリアに点在する各会場にて、アート作品の展示やさまざまなイベントを行っています。過去5回にわたって開催し、のべ25万人を動員している人気のアートフェスです。
2022-2023のテーマは“シマを繋ぎ シマに響く”。吉本興業所属のお笑い芸人で、画家としても高い評価を得ているジミー大西さんが手がけたアートラッピングカー「輪」(会場のひとつであるオクマプライベートビーチ&リゾートに展示)をはじめ、絵画・工芸・写真などのエキシビション部門約30組・クラフト部門18組の作品が楽しめます。それでは沖縄やんばるアート旅にレッツゴー!
『やんばるアートフェスティバル 2022-2023』の楽しみ方
那覇空港に到着後、移動手段として断然便利なのはレンタカー。1時間半ほどのシーサイドドライブを楽しみながら、YAFメイン会場の大宜味村立旧塩屋小学校(大宜味ユーティリティセンター)を目指しましょう。
YAFメイン会場の大宜味村立旧塩屋小学校には、エキシビション部門のアート作品群のほか、沖縄の工芸品を集めたクラフト部門「YAF CRAFT MARKET」、さまざまなワークショップ、地元食材を使った軽食が味わえる休憩スペース、グッズ販売コーナーなどが集結しています。
住所/沖縄県国頭郡大宜味村塩屋538
開館日時/金・土・日・祝日の11時~17時
旧塩屋小学校は、島と海が臨める風光明媚な塩屋湾に面しています。赤い屋根の体育館の窓から見える風景は、まるで青い海にプカプカと浮かぶ箱舟のよう! YAF総合ディレクターで、沖縄県石垣島出身の仲程長治さんが「メイン会場を探して県内の廃校を回るなかでひと目ぼれした」と自負する、奇跡のようなロケーションです。
右手にドーーーンと鎮座する真っ黒のバルーンオブジェは、アートコレクティブ・Chim↑Pom from Smappa! Groupの作品「Gold Experience」。廃校になった体育館に突如出現した巨大なゴミ袋(中に入って遊ぶこともできます)の隣で小休憩しながら、YAFツアーの計画を立てましょう。
YAF公式ガイド「Recommended Spots Map」を入手!
体育館で絶対に手に入れたいのが、YAF公式オリジナルマップ「やんばるアートフェスティバル 2022-2023 Recommended Spots Map」。やんばるエリアに点在するYAF各会場のほか、YAFにこれまで参加したアーティストや関係者からヒアリングした思い出の場所・パワースポット・飲食店・お土産屋さんなどが、推薦コメントとともに紹介されています。気になるスポットは丸で囲むなどチェックしてくださいね。
エディターおすすめ! 旧塩屋小学校で必見のアート作品6選‼︎
旧塩屋小学校に展示されているたくさんの展示のうち、エディター沖島の心に深い印象を刻んだアート作品6点をクローズアップします。
沖縄の伝統や歴史をテーマにしたものと、コロナ禍を経て、人との関係や自らの行動姿勢を見直すことをテーマにしたものが特に印象的でした。鑑賞スタイルや感じ方は人それぞれ。ぜひ自分に“刺さる”作品との出逢いを楽しんでくださいね!
1. 「しまをまとう」 石垣昭子 from 紅露工房
体育館のステージを飾るのは、西表島をベースに活動する染織家・石垣昭子さんの展示作品「しまをまとう」。石垣さんは、夫の金星さんとともに染色織物工房「紅露(くうる)工房」を営み、芭蕉の糸を使った織物や昔ながらの天然藍染に取り組みながら、後継者の育成やさまざまな環境保全プロジェクトに参画しているスーパー83歳です。石垣さん夫妻も登場する、西表島の自然と暮らしをテーマにしたドキュメンタリー映画「生生流転」(2021年)も必見。
2. 「歩いて巡る屋外写真展 塩屋湾・ウンガミ」 Uymam Project
旧塩屋小学校を擁する大宜味村塩屋地区の街を丸ごとアート空間にシフトさせた、Uymam Projectの「歩いて巡る屋外写真展 塩屋湾・ウンガミ」。1986年に発行された写真家・平良孝七さんの記録写真集から、400年以上も続くといわれる国指定の重要無形文化財の伝統行事“ウンガミ(海神祭)”の様子や、当時の生活の風景などを撮影した写真を、民家や商店の外壁などにディスプレイ。土地を歩き巡りながら、人々が紡いできた記憶をリアルに感じ、追想できる展示です。
3. 「遠足」 染谷聡 × 矢野洋輔 × 渡辺千明
漆(うるし)を通じて今日における装飾の役割や機能を考察する活動に勤しむ染谷聡さんら、3人のアーティストによる合同展示「遠足」で見られるのは、村のシーサーや霊石の風習をモダナイズした作品。浜に漂流していた発泡スチロール(土に還らないといわれるゴミの代表格なのだそうな)を染谷さんが自ら拾ってきて石に見立て、それらを飾るための漆の器を制作し、現代のシーサーに仕立てたそう。ユーモラスな形に込められたシュールな視点に思わず「うむむ」と唸ります。
4. 「Time For Children」 永井英男
彫刻家の永井英男さんによる展示「Time For Children」では、多くの子どもたちで賑わっていたかつての小学校の記憶・記録や気配をユーモアたっぷりに表現した彫刻作品が楽しめます。図書室だった本棚を活用し、旧塩屋小学校同様に廃校となった近隣の小学校から集めた図書や古本を、子ども型ブックエンドで支えたインスターレーションは必見。昨年2022年に沖縄県が本土復帰50周年を迎えた点に着目し、「少年マガジン」は1972年5月の返還当時に、「少年ジャンプ」は50年後の2022年5月に、発行されたものを一生懸命探したそうです。
5. 「NOREN」 Keeenue
普段はペインターとして活動しているというKeeenue(キーニュ)さんは、カラフルな作品群「NOREN」を携えて参加。生活空間を仕切るレイヤーとして、人間の行動や置かれた環境によってサラサラと揺れたり、音を立てたり、形を変化させる暖簾の特徴に着目し、自分と他人のちょうどいい関係や距離感のバランスを探るきっかけをつかんでほしいそう。また、作品に用いられている無数のビーズのように、自分の行動や考え方も、時にはバラバラに分解して新たな形を再構築する必要性にも気づかせてくれます。
6. 「Star & Dust (OKINAWA)」 CMTK
「Star & Dust (OKINAWA)」は、アーティストの森 千裕さんと金氏徹平さんによるユニット・CMTKの作品。一枚の写真で複数の画像が入れ替わる“レンチキュラー”と呼ばれる印刷技法を駆使し、森さんが沖縄で撮影した風景や路上などの写真と、時代を彩った往年の人気アイドル(=スター)たちの写真を金氏さんがコラージュしたもの。鑑賞する人が視線や見る体勢をちょっと変えるだけでまったく異なる風景が目の前に広がる、不思議なインスタレーションです。
やんばるエリアに点在するほかの会場、おすすめスポット3
YAFの会場は沖縄北部に点在しており、旧塩屋小学校を含めて全部で8カ所あります。公式オリジナルマップを相棒に、ぜひとも全制覇していただきたいのですが、エディター沖島が特におすすめのスポット3カ所をご紹介!
1. 六田原展望台
旧塩屋小学校から車で10分ほど急勾配を登った高台にある六田原展望台。かつての大型リゾートホテルの廃墟には、SIDE-CORE × KOM-I × 新美太基 × KINJOによる作品「Spool of Time」が展示されています。半屋外のような空間が、差し込む光や吹き抜ける風を感じながら、テーマである“記憶の断層”を探る体験へと誘います。
住所/沖縄県国頭郡大宜味村 田港
開館日時/金・土・日・祝日の11時~17時
音楽ユニット・水曜日のカンパネラの初代ボーカルで、現在は声と身体を用いた表現活動をおこなっているKOM-Iさんの作品。大宜味村の喜如嘉(きじょか)の重要無形文化財・芭蕉布の制作過程のうち、切れやすい繊維を小さく結んで1本の糸に仕立てる苧績み(うーうみ)とよばれるプロセスに着目。結び目を思わせるガッチリと手を繋ぐ写真や、喜如嘉芭蕉布の第1人者・平良敏子さんが苧績みした糸などを展示し、異なる価値観をつなぎ継承していくことや、環境の変化を読み取り順応していくことの大切さなどを訴えています。
2. やんばる酒造
地域の人たちの出資により、1950年に創業した沖縄本島最北端の泡盛酒造所。倉庫の壁面いっぱいに、伊藤彩さん・許芝瑜さんのユニットが手がけた大型アート壁画「The myth from the bottom of the sea」が登場しています。やんばるの大自然を満喫し、泡盛まで楽しんでいるヤンバルクイナたちの生き生きとした姿にほっこり。酒造所近くの山から汲み上げる天然の中硬水を、麹造り・仕込み水・割り水などに使用し、ていねいに仕込んだという泡盛「まるた」をぜひお土産に。
住所/沖縄県国頭郡大宜味村田嘉里417
3. オクマ プライベートビーチ&リゾート
天然の白砂ビーチが目の前に広がる、やんばるエリア随一の老舗リゾート・オクマ プライベートビーチ&リゾートには、YAF総合ディレクターを務める
仲程長治さん自身の作品「すでる、榕(あこう)とむすぶ」があります。“すでる”とは、“生まれ変わる・変態する”を意味する琉球の古語。ホテル敷地内のシンボルツリーであるガジュマル(榕)の中腹に巨大な繭のようなオブジェを出現させ、約3日間かけて、その周囲にひたすらロープを結んだそう。異種・異類なものであっても、結び溶けあうことで新しい何かが生まれることや、原点に立ち返り今いちど結び直す必要性などを説いています。
やんばるアート旅の宿泊はぜひこちらで!
住所/沖縄県国頭郡国頭村字奥間913-1
公式サイト/
https://okumaresort.com/
『やんばるアートフェスティバル 2022-2023』開催概要
期間/開催中〜2023年4月9日(日)
開館時間/金・土・日・祝日の11時〜17時
会場/大宜味村立旧塩屋小学校(大宜味ユーティティーセンター)、六田原展望台、やんばる酒造、オクマ プライベートビーチ & リゾート、辺土名商店街、オリエンタルホテル 沖縄リゾート&スパ、カヌチャリゾート、名護市民会館前アグー像
入場/無料
主催/やんばるアートフェスティバル実行委員会
共催/大宜味村、島ぜんぶでおーきな祭
写真協力/やんばるアートフェスティバル 実行委員会 取材・文/沖島麻美 ※掲載されている情報は2023年1月14日時点でのもので、個人の見解も含まれます。最新の情報は公式サイトおよび現地にてご確認ください。